きゅうりの葉に、小さな黄褐色の斑点が点々と出ている。数日後には1cmほどに広がり、中心が灰色がかってきた。

べと病かと思って調べると、どうも形が違う。これは褐斑病かもしれません。

この記事では、埼玉県の病害虫診断資料をもとに、べと病との見分け方と、なぜ早期の対応が要るのかをまとめます。

どういう病気か

埼玉県の資料は、この病気をこう位置づけています。

キュウリ褐斑病は、糸状菌(カビ)に起因し、近年増加傾向にある難防除病害で、抵抗性の弱い品種やブルームレス台木の普及が本病多発の主要因と考えられています

「難防除」と明記されている点が、この病気の性格を表しています。

病原菌は高温多湿を好み、メロン、スイカ、カボチャなどウリ科作物全般に病原性を示しますが、キュウリ以外には自然条件での多発事例はありません。

きゅうりに集中して出る病気だと考えてください。

近年増えている背景として、資料は抵抗性の弱い品種とブルームレス台木の普及を挙げています。ブルームレスとは、果実の表面に出る白い粉を抑えた品種のことで、見た目のよさから広く使われるようになりました。市販の苗の多くがこの系統にあたるため、家庭菜園でも無縁ではありません。

A cucumber plant in a home garden with several lower leaves showing scattered brown spots, healthy u

病斑の見え方

埼玉県の資料は、症状の進み方を段階で示しています。

葉では初め黄褐色の円形小斑点を生じ、のち径1cm内外、ときには径2〜3cmに拡大し、類円形あるいは不整形で淡褐色ないし灰褐色、同心円紋を有する大型病斑になります

最初は小さな黄褐色の円。 これが1cm前後、大きいものでは2〜3cmまで広がり、中心に同心円状の模様が出ます。

進み方にも特徴があります。

発病は下葉から起こり、順次上位葉へ伝染しますが、とくに栽培後期に病勢が急速に進展し、早期枯れ上がりによって著しい減収を招きます

下から上へ。 そして後半で一気に進むのが、この病気の怖いところです。

序盤の斑点はごく小さく、葉に数個あるだけでは気づきません。収穫が始まって株に意識が向かなくなる頃に、下葉で静かに進んでいます。気づいたときには中段まで上がっている、という経過をたどりがちです。

葉だけでなく、多発時には茎、葉柄に紡錘形、淡褐色の病斑を形成したり、幼果が花弁を通じて感染し、黄変としなびを起こすこともあります。

べと病との見分け方

ここがいちばん間違えやすい点です。

褐斑病 べと病
病斑の形 類円形〜不整形。丸みがある 葉脈で区切られ、角ばる
広がり方 葉脈を越えて広がる 葉脈で止まる
模様 同心円紋が出る 出ない
葉裏 多湿時に黒褐色のかび かびが生える
大きさ 1cm前後、大きいと2〜3cm 比較的小さいまま並ぶ

「角ばっているか、丸いか」で8割は判断できます。 べと病は葉脈という壁に区切られるので、タイルを並べたような形になります。褐斑病は壁を越えて広がるので、丸く不定形です。

埼玉県の資料も、類似する病害としてべと病、灰色かび病、つる枯病、斑点細菌病を挙げ、病斑の形状、色調および標徴(カビ、小黒点、細菌粘液の溢出など)により識別できますとしています。

ただし注意点があります。露地栽培では炭そ病と発生時期や病徴が酷似するため、病原菌の確認が必要とされています。

べと病についてはべと病の対策に、炭そ病は炭疽病の対策にまとめています。葉の異変全般の見分けは葉の異変サイン10種を参照してください。

Side by side comparison of two cucumber leaves, one with angular lesions bounded by veins and one wi

増える条件

埼玉県の資料が挙げる発生条件は具体的です。

  • 発病には25〜28℃の高温と多湿条件が適しています
  • 高温期に換気不良、灌水過多などで湿度を高める管理をしたり、曇雨天が続いた場合にまん延しやすくなります
  • 収穫中〜後期、株の過繁茂が引き金になって病勢が急速に進展する場合が少なくありません
  • 窒素偏重の施肥条件、または生育後半に肥切れを起こしているほ場で被害が激化する傾向にあります

窒素が多すぎても、切れても悪い。 ここが扱いの難しいところです。

肥料が多ければ葉が茂って風が通らなくなり、切れれば株が弱って抵抗できなくなる。どちらにも振れないように管理するのが要点です。

家庭菜園では、肥切れのほうが起こりやすいと思います。収穫が続くほど株は養分を使うので、実を採っている間ずっと追肥が要ります。葉の色が薄くなってきたら、それが合図です。

品種によって病気への強さが違います。種袋に耐病性の記載があるものを選ぶと、翌年の負担が減ります。

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追肥の組み立ては夏野菜の追肥タイミングにまとめています。

露地栽培では梅雨後期からの発生が一般的とされているので、梅雨明け前後が注意の時期になります。

家庭菜園での対策

埼玉県の資料が挙げる耕種的防除から、家庭菜園で実行できるものを抜き出します。

1. 資材を使い回さない 発病が認められたほ場の資材は十分に水洗するか、消毒してから使用します。支柱、ネット、クリップが対象です。

2. 株を茂らせすぎない 老化葉は早めに摘除して通風を図ります。また初発生期の病斑は生育に支障のない範囲で速やかに取り除きます。

3. 肥料を切らさず、効かせすぎない 窒素過多を控えるとともに、肥切れを起こさないような肥培管理が大切とされています。

4. 残さを畑に残さない 栽培終了後の被害茎葉残さは必ずほ場外に持ち出して処分します。

プランター栽培なら、土も替えてしまうのが確実です。菌が残った土を翌年そのまま使うと、同じことが繰り返されます。

支柱やネット、クリップを使い回すなら、洗浄か消毒をしてからにしてください。器具に使える薬剤かをラベルで確認します。

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病原菌は被害茎葉や病原菌の付着した各種農業資材などが第一次伝染源で、前年の発生ほ場では再び発病をみる確率が高くなります。

A gardener removing yellowing lower leaves from a cucumber plant with scissors and placing them into
Cucumber plants trained up a net with good spacing between them, lower leaves cleared for airflow, b

出てからでは遅い

薬剤についても、埼玉県の資料ははっきり書いています。

本病は高温多湿下での病勢進展が早く、発生が目立ってからでは手がつけられなくなり、いずれの薬剤も十分な効果が期待できません

前作において発病がみられたほ場では、発病前からの予防散布を原則とします。

散布の実際についても目安が示されています。散布間隔はおよそ10日、散布量は10アール当たり200リットル程度を標準とし、発病しはじめたら散布間隔を短縮するとともに散布量も多めに設定します。

そして、薬剤の散布むらは効果低減の大きな要因なので、葉の表裏全体によくかかるように散布するとされています。

家庭菜園では、去年出た畑かどうかで構えが変わります。 出た年の翌年は、梅雨に入る前から見回りを始めてください。

見回るのは下葉です。株の上から眺めていても分かりません。しゃがんで、地面に近い葉の表と裏を見る。この習慣があるかどうかで、気づく時期が2週間は変わります。

よくある質問

Q. べと病と褐斑病はどう見分けますか?

病斑の形です。べと病は葉脈で区切られて角ばりますが、褐斑病は葉脈を越えて丸く広がり、同心円状の模様が出ます。大きさも1cm前後から2〜3cmまで拡大します。

Q. どんな条件で増えますか?

25〜28℃の高温と多湿条件が適しています。換気不良、灌水過多、曇雨天が続いた場合にまん延しやすく、収穫中〜後期に株が茂りすぎると急速に進みます。

Q. 肥料は多めと少なめ、どちらがいいですか?

どちらも避けてください。窒素偏重の施肥でも、生育後半の肥切れでも被害が激化する傾向にあるとされています。切らさず、効かせすぎない管理が求められます。

Q. 出てから薬をまけば治りますか?

難しいとされています。高温多湿下での病勢進展が早く、発生が目立ってからではいずれの薬剤も十分な効果が期待できません。前年に出た畑では、発病前からの予防が原則です。

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まとめ

  • 糸状菌による難防除病害。きゅうりに集中して出る
  • 病斑は黄褐色の円形小斑点→1cm前後、大きいと2〜3cm、同心円紋
  • 下葉から始まり、栽培後期に急速に進む
  • べと病との違いは角ばるか、丸いか
  • 25〜28℃の高温多湿で増える。曇雨天が続くとまん延
  • 窒素過多でも肥切れでも悪化する
  • 資材を使い回さない。残さを畑に残さない
  • 出てからでは効かない。 前年に出た畑は予防から

下葉に小さな丸い斑点を見つけた時点が、唯一の分かれ目です。


参考