長芋が曲がる、途中で分かれる、平たくなる。どれも地上部では分かりません。 掘り上げて初めて結果が出ます。
形を決めているのは、植える前の土の状態です。 伸びる先に硬い層や空洞があれば、芋はそこで向きを変えます。
この記事では、農林水産省の「根菜類 野菜栽培技術指針」をもとに、植える前にやることと、形が崩れる仕組みをまとめます。
植え溝が結果を決める
指針が示す植え付け溝の作り方は、規模の大きさに驚きます。
植え付け7〜10日前に畝幅110〜120cmの中央に、深さ100cmになるようにトレンチャー耕を行う
深さ1メートル。 芋が伸びる先をあらかじめ耕しておく、という考え方です。
そして、掘ったあとすぐには植えません。
降雨などで植え溝の土が陥没し、根の切断による生育遅延や岐根の発生を防ぐため、数日間放置し、土が落ち着いてから植え付ける
掘って、落ち着かせて、それから植える。 急ぐと、沈んだ土が芋の伸びを妨げます。
家庭菜園で1mを掘るのは現実的ではありません。 そこで、波板やパイプを斜めに埋めて芋の進路をつくる方法が使われます。深い耕起の代わりに、障害物のない道を人工的に用意するという発想です。
波板を使う場合は、30度ほどの傾斜をつけて埋め、その上に種いもを置きます。芋は板に沿って横へ伸びるので、掘るときも上の土をどければ済みます。深さ1mを掘って1mを埋め戻す労力を考えれば、家庭菜園ではこちらが現実的です。
深さのある容器を使う方法もあります。考え方は里芋のプランター栽培と同じで、土の量と深さをどう確保するかという問題になります。

植え付け
指針の数値を整理します。
時期|4月下旬〜5月上旬(平均気温で10℃の頃) に行います。遅くなると減収するとされています。
株間|30cm。植溝は深さ6〜7cmとし、底を平らにします。
向き|芽が上を向くように斜めにし、溝の中央に植え付ける。
覆土|植溝が埋まる程度(10cm) とします。
溝の中央に植えるという指示には理由があります。端に寄ると、深耕した壁面に沿って芋が育ち、平たくなるためです。
種いもは、ひとつを切り分けて使うこともできます。切り口は乾かしてから植えてください。湿ったまま埋めると腐る原因になります。
むかごを1〜2年育てて種いもにする方法もあります。秋に出回るので、植え付けの前年から始める人向けです。
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芽かきと支柱
芽かき
1株から芽が数本出た場合は、分岐を防ぐため、早めに太い芽1本を残して弱い芽は掻き取る
1本に絞る。 複数残すと、そのぶん芋も分かれます。
作業は早いほどよく、芽が伸びきってから掻くと残した芽まで傷めます。土の表面に芽が複数出ていることに気づいた日が、手を入れる日です。
支柱
萌芽し始めたら畝の中央に3m間隔で、高さ2mの支柱を立て、ネットを張る
萌芽し始めたらというタイミングが肝心です。つるが伸びてからでは作業しにくく、茎を傷めます。
つるが伸びてきたら早めに、ネットに絡ませるとされています。放っておくと地面を這い、むかごばかりついて芋が太りません。
支柱の立て方は支柱と誘引ひもの選び方やキュウリネットの立て方が参考になります。

敷きわらと水
指針は、長芋の根の性質を説明しています。
ナガイモの吸収根は土壌の浅い層に分布しているため乾燥に弱い。土壌水分の不足は生育不良につながる
芋は深いのに、水を吸う根は浅い。 ここがこの作物の特徴です。
対策として敷きわらが挙げられています。干ばつの起きやすい畑では、特に厚く敷く。
時期にも注意があります。敷きわらは5月下旬頃に畑全面に行う(早すぎると地温の上昇を妨げる)。
早く敷きすぎると、土が温まらず生育が遅れます。 株が立ち上がってからで十分です。
敷きわらには、雑草を抑え、雨で土が跳ねるのを防ぐ働きもあります。わらが手に入らなければ、刈った草を乾かしたものでもかまいません。
つるを絡ませるネットは、支柱の高さ2mに合う丈のものを選んでください。目が細かすぎると絡みを外しにくくなります。
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追肥は8月20日まで
ここが、この作物でいちばん独特な決まりです。
指針は追肥の時期を3回に分けて示しています。
- 1回目|種いもの養分が消耗し、新根の養分吸収に移行する6月中旬頃
- 2回目|7月中旬頃(1回目から25〜30日後)
- 3回目|8月20日までには終える
そして、理由が明記されています。
遅い追肥は茎葉が過繁茂になり、平いもが発生しやすく、「アク」も出やすくなる
遅れると、形も味も落ちる。 「まだ葉が元気だから」と9月に追肥すると、裏目に出ます。
ただし例外もあります。8月中〜下旬に生育不足の場合は、茎葉確保のために液肥を1週間おきに散布するという葉面散布が挙げられています。土に入れるのではなく、葉にかける。葉面散布の効果とやり方で扱っている方法です。
収穫
茎葉が90%黄変枯死したら早めに片付け、ほ場外に除去する
掘る時期にも指示があります。
早掘りすると「アク」の発生が多くなるので、10月下旬から収穫する
急がない。 10月下旬まで待ちます。
掘る日の選び方もあります。収穫は、貯蔵中の腐敗を防ぐため晴天が続いた日に行い、雨天時は避ける。 掘ったあとは直射日光や風に当たらないように注意し、速やかに直射日光の当たらない場所に運び、乾燥させて、細かい土を落とすとされています。


形が崩れる仕組み
指針は、生理障害として岐根と平いもを挙げています。
岐根(タコ足)
形状はいろいろあるが、生長点が障害を受けて、伸長を停止し、2〜数本に分岐していわゆるタコ足状を示す
原因は複数です。肥料の濃度障害、下層土のしまり、土層中の空隙、高地下水位、センチュウ類の寄生など。
対策として、植溝の深耕、低湿地を避け、排水対策を行う。また土壌センチュウを防除する。植溝の深耕部分の土を落ち着かせてから植え付けることが示されています。
センチュウの被害はネコブセンチュウの対策も参考になります。
平いも
胴部から尻にかけて扁平になる。壌土、埴壌土地帯で、深耕された壁面に沿って生長した場合、特に多肥で粗糙の場合に程度が大きくなる
深く掘った溝の壁にぶつかって、そこに沿って平たく育つ。 対策は植溝の中心に種いもを植えること、そして栽植密度、施肥量の適正化です。
どちらも、植える前と植える位置で決まります。 育ってからできることは、ほとんどありません。
よくある質問
Q. 植え付けはいつですか?
4月下旬〜5月上旬、平均気温で10℃の頃が目安です。遅くなると減収するとされています。植え溝は7〜10日前に作り、土を落ち着かせてから植えます。
Q. 芋が分かれてしまうのはなぜですか?
岐根といい、生長点が障害を受けて伸長を停止し、分岐する現象です。肥料の濃度障害、下層土のしまり、土層中の空隙、高地下水位、センチュウ類の寄生などが原因になります。
Q. 追肥はいつまでできますか?
8月20日までには終えます。遅い追肥は茎葉が過繁茂になり、平いもが発生しやすく、アクも出やすくなるとされています。生育不足のときは葉面散布で補います。
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Q. 収穫はいつですか?
茎葉が90%黄変枯死してから、10月下旬以降です。早掘りするとアクの発生が多くなります。貯蔵中の腐敗を防ぐため、晴天が続いた日に掘ってください。
まとめ
- 植え溝は深さ100cm。 掘ってから数日置き、土を落ち着かせる
- 植え付けは4月下旬〜5月上旬(平均気温10℃の頃)。 遅れると減収
- 株間30cm、植溝の中央に、芽を上に向けて斜めに
- 芽は太い1本だけ残す。 複数残すと芋も分かれる
- 支柱は萌芽し始めたら、3m間隔で高さ2m
- 吸収根は浅い。 敷きわらは5月下旬頃に
- 追肥は8月20日まで。 遅れると平いもとアクの原因
- 収穫は10月下旬から。晴天が続いた日に
掘る深さと、植える位置。 この2つで形はほぼ決まります。
参考