葉の色が薄い。新しい葉だけが黄色い。追肥はしたのに、なかなか戻らない。

そんなときに使われるのが葉面散布です。肥料を水で薄めて、葉に直接かける。根を通さないぶん、届くのが早いのが特徴です。

ただし、時間帯と濃さを間違えると、かえって葉を傷めます。 この記事では、その理由と加減をまとめます。

葉面散布とは何か

植物は葉や茎からも養分を吸収します。 その性質を利用して、肥料を薄めた液を葉にかけるのが葉面散布です。

施肥のしかた 経路 効き方
土に施す 根 → 株全体 ゆっくり、長く続く
葉面散布 葉・茎 → 株全体 速いが、量は少ない

あくまで補助です。 葉から入る量は土から吸う量に比べて限られるため、これだけで育てることはできません。

効き目が見えるまでの時間も、土への施肥とは違います。早ければ数日で葉の色が動きますが、その効果が続く期間も短くなります。

向いている場面

  • 根から吸いにくい成分を補いたいとき(マグネシウム、鉄、マンガンなどの微量要素)
  • 土の状態に左右されず届けたいとき(酸度や過湿で根が働いていない)
  • 生育の途中で症状が出て、急いで補いたいとき

逆に、窒素をまとめて効かせたい、株を大きくしたいという目的には向きません。それは土への施肥の仕事です。肥料そのものの選び方は家庭菜園の肥料の種類と選び方にまとめました。

Close up of vegetable leaves covered with a fine even mist of droplets in early morning light, home

朝に撒く理由

時間帯で効きが変わります。

日本植物生理学会の「みんなのひろば」では、朝と夕方を比べてこう説明されています。

朝は、これから気温の上昇にともなって細胞活性が高くなるときです。一方夕方は、気温が下がり細胞活性が低下に向かうときですから朝の散布の方が吸収効率はよいと予想されています

細胞が働き始める時間に合わせるという考え方です。同じ資料では、水の通り道であるアクアポリンや、養分を運ぶトランスポーター類が細胞の生理状態にしたがって機能を調節することにも触れられています。

日中を避ける理由

日中がなぜ良くないかも、同じ資料が説明しています。

散布液の蒸発がおき、散布薬剤の濃度が上がり(中略)水ポテンシャルが低下するので水は細胞から外へ移動

撒いた液が濃くなり、逆に葉から水を奪うということです。これが葉焼けや肥料焼けの正体です。

時間帯 可否
早朝 ◎ もっとも良い
夕方 ○ 次善。ただし葉が長く濡れる
曇りの日 ○
日中の晴天・高温 × 避ける

肥料メーカーの資料でも、ハウスの温度が30度を超えている場合は葉が弱っており散布液が高濃度になるため、薬害が発生する危険性が高くなるとして、高温時の散布を避けるよう注意されています。

肥料焼けの見分け方は肥料焼けの症状と対処にまとめています。

濃さの目安

濃いほど効くわけではありません。

三重興農社の解説では、成分によって希釈倍率が分けられています。

中身 希釈倍率
尿素が入っているもの 300〜500倍
尿素が入っていない微量要素・りん酸・加里 500〜700倍

そのうえで、高温日照の強い日には希釈倍率を若干高くして(養分濃度を低くして) 使うとされています。

市販品は必ずラベルの倍率に従ってください。 上の数字は考え方の目安であり、製品ごとに設計が違います。

薄めすぎたぶんには害はありません。迷ったときは、表示の範囲のうち薄いほうから試してください。

葉面散布に使えるかどうかは、必ずラベルの用途欄を確認してください。希釈倍率も製品ごとに違います。

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展着剤は入れない

よくある誤解です。 住友化学の技術Q&Aでは、液肥の葉面散布に展着剤は不要とされています。理由は、液肥が付着しすぎると肥焼けしやすくなるためです。

農薬の散布とは考え方が逆になります。混同しないでください。

A measuring cup and a bottle of liquid fertiliser beside a garden sprayer on a wooden bench, morning

撒き方

手順

  1. 前日までに水やりを済ませ、株が乾ききっていない状態にする
  2. 朝のうち、気温が上がる前に散布する
  3. 細かい霧で、葉全体がしっとり濡れる程度にかける
  4. したたり落ちるまでかけない
  5. 残った液は持ち越さない

「うっすら濡れる」で止めるのがコツです。 滴が落ちるほどかけると、地面に落ちた分は無駄になり、葉に残った分は濃縮します。

道具は、霧の細かさで選んでください。ジョウロやホースの先から出る粗い水では、葉の上で大きな滴になってすぐ流れ落ちます。蓄圧式の噴霧器か、細かい霧が出るスプレーボトルを使うと、少ない量で葉全体を覆えます。使い終わったら中を水ですすいでおかないと、残った液が乾いてノズルを詰まらせます。

家庭菜園なら1〜2リットルの容量で足ります。ノズルの霧の細かさを調整できるものだと、作物に合わせて使い分けられます。

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頻度は、症状が出ている間だけと考えてください。日常的に繰り返すものではありません。目安としては1週間から10日の間隔をあけ、新しく出てくる葉の色が戻ったら止めます。色が戻らないまま何度も続けるなら、原因が別のところにあります。根が傷んでいる、酸度が合っていない、そもそもその成分が不足していない、といった可能性を先に確かめてください。

葉の裏にもかけるか

見解が分かれる点です。 葉の裏にも散布したほうが望ましいという意見がある一方、葉を必要以上に濡らすことは灰色かびを誘発する原因になるとして、表面だけで十分とする考え方もあります。

雨が続く時期や、風通しの悪い場所では、濡らしすぎないほうが安全です。梅雨期のかび病は梅雨期の葉カビ病3種を参照してください。

土への施肥との使い分け

葉面散布は、追肥の代わりにはなりません。

状況 使うもの
株を大きくしたい、実を増やしたい 土への追肥
生育に合わせた定期的な補給 土への追肥
新しい葉だけが黄色い 葉面散布で微量要素
根が弱っている・過湿で吸えていない 葉面散布でつなぐ
収穫期で根の負担を増やしたくない 葉面散布を併用

症状が出た理由を先に考えてください。 水のやりすぎで根が傷んでいるなら、肥料を葉にかける前に水を控えるほうが先です。

葉の色が薄いという症状ひとつをとっても、原因は窒素不足だけではありません。古い葉から黄色くなるのか、新しい葉から黄色くなるのかで、不足している成分の見当がつきます。植物の中を移動しやすい成分は古い葉から新しい葉へ送られるため、不足すると古い葉に先に症状が出ます。鉄やカルシウムのように移動しにくい成分は、新しい葉のほうから症状が出ます。

追肥の組み立てはプランター追肥のリズムと夏野菜の追肥タイミングにまとめています。

Comparison of two pepper plants in pots, one with pale yellowing young leaves and one with healthy d
Early morning home vegetable garden with a watering sprayer resting on a raised bed, dew on leaves,

よくある質問

Q. 朝と夕方、どちらが良いですか?

朝です。日本植物生理学会の解説では、朝は気温の上昇にともなって細胞活性が高くなる時間であるのに対し、夕方は活性が低下に向かうため、朝の散布のほうが吸収効率は良いと予想されるとされています。

Q. 日中に撒いてはいけないのはなぜですか?

散布液が蒸発して濃度が上がり、水が細胞から外へ移動するためです。葉焼けや薬害の原因になります。ハウス内で30度を超える条件では特に危険とされています。

Q. 展着剤を混ぜたほうが効きますか?

液肥の葉面散布に展着剤は不要とされています。付着しすぎるとかえって肥焼けしやすくなります。農薬散布とは考え方が違う点に注意してください。

Q. 葉面散布だけで育てられますか?

できません。葉から吸収できる量は限られており、あくまで補助です。株をつくる肥料は土に施し、葉面散布は不足した成分を急いで補う手段として使ってください。

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まとめ

  • 葉面散布は根から吸いにくい成分を速く届ける補助手段
  • 朝が最適。 細胞活性が高くなる時間に合わせる
  • 日中は避ける。 液が濃縮し、葉から水を奪う
  • 目安は尿素入り300〜500倍、微量要素など500〜700倍。 ラベル優先
  • 展着剤は不要。 付きすぎると肥焼けする
  • したたるほどかけない。 うっすら濡れる程度で止める

朝に、薄く、うっすら。 この3つを守れば、失敗はほとんど起きません。


参考