鉢植えの枝に、白い粒がびっしり貼りついている。 指で押しても動かない。はがすと、下の樹皮が変色している。
カイガラムシです。 そして、市販の殺虫剤をかけても、たいてい効きません。
この記事では、なぜ薬が効かないのかと、唯一効く時期がいつかを、日本植物防疫協会と県の病害虫防除所の資料からまとめます。
薬が効かない理由
日本植物防疫協会の解説は、防除が難しい理由をはっきり挙げています。
ロウ物質と介殻による保護です。これが農薬の浸透を妨げます。
虫の上に、防水の屋根がかかっている状態だと考えてください。薬液は表面で弾かれ、虫体まで届きません。
見た目で虫だと気づきにくいのも、この性質から来ています。白い粉を吹いたもの、茶色い半球、貝殻のような平たいもの。どれも植物の一部か、樹皮の病変のように見えます。指でこすって動くか、下に虫体があるかを確かめてはじめて判別がつきます。
いつロウをまとうのか
島根県病害虫防除所のカツラマルカイガラムシの記述が、その経過を具体的に示しています。
ふ化幼虫は橙黄色で枝上を歩行する
そして、適当な場所に定着した幼虫は、背中に白いろう物質をだし介殻をつくります。
| 段階 | 状態 | 薬の効き |
|---|---|---|
| ふ化直後 | 橙黄色で枝上を歩き回る。裸 | 効く |
| 定着後 | 背中にロウ物質を出し、介殻をつくる | 効きにくい |
| 成虫 | 介殻の下で固定。動かない | ほぼ効かない |
裸でいる期間は短く、そこだけが薬の通る窓です。
島根県の資料によれば、この虫の幼虫は2令まであり、発育期間はそれぞれ約15日とされています。歩き回る期間はさらに短く、見逃しやすい長さです。

防除適期はふ化幼虫期
日本植物防疫協会も、もっとも効果的な時期をふ化幼虫期としています。この段階では虫体が柔軟で、薬剤が浸透しやすくなるためです。
つまり「見つけたときに散布する」では遅い。 介殻ができてからかけても、薬は届きません。
発生の回数と時期
種によって違いますが、島根県のカツラマルカイガラムシでは、6月中下旬と8月下旬〜9月上旬の2回とされています。越冬は第2世代の2令幼虫で行われ、幼虫は2令まであり、発育期間はそれぞれ約15日です。
初夏と晩夏。 家庭の鉢植えでも、この前後に幼虫の歩き回る時期が来ると考えて見回ってください。
枝の上を小さなオレンジ色の粒が動いていたら、それが適期の合図です。
被害は吸汁によって進みます。島根県の資料は、多発生時には寄生した枝を枯らすばかりでなく、1〜2年で樹が枯れることも多いとしています。落葉が早まり、翌年の芽立ちが悪くなるという経過もたどります。鉢植えは土の量が限られているぶん、地植えより早く影響が出ます。
薬以外で落とす
家庭の鉢植えなら、物理的に落とすほうが確実です。日本植物防疫協会も物理的防除として次を挙げています。
| 方法 | やり方 |
|---|---|
| こすり落とす | 指またはタワシで直接除去 |
| 剪定 | 被害枝を切除する |
こすり落とすときのコツ
- 古い歯ブラシが扱いやすい
- 枝に沿って一方向にこする
- 樹皮を傷つけない力加減で
- 落としたものは拾って捨てる(下に新聞紙を敷く)
- 葉の裏と枝の分かれ目を重点的に
落とした虫をそのまま鉢土に残さないでください。 幼虫なら歩いて戻ります。
数が少ないうちなら、この作業だけで収まります。放っておいて枝全体に広がると、こすり落とす手間のほうが剪定より大きくなります。見つけた日に手を動かすのがいちばん安上がりです。
樹皮を傷めない程度の硬さのものを選んでください。柄が細いと枝の分かれ目まで届きます。
(PR)「園芸 ブラシ」をAmazonで探す / 楽天で探す
剪定で減らす
込み合った枝の内側ほど増えます。 風通しと日当たりが悪い場所が定着しやすいためです。
枝を透かすと、発生そのものが減ります。鉢植え果樹の剪定はイチジクの鉢植えやブルーベリーの鉢植え栽培を参考にしてください。
室内に置いている鉢は特に注意が要ります。雨も風も当たらず、天敵も入ってこないため、いったん持ち込まれると増え続けます。新しく買った鉢は、しばらく他の鉢から離して様子を見てから並べると安心です。
被害枝を切り落とすときに使います。枝の太さに合う刃渡りのものを選び、切ったあとは刃を拭いてから次の株に移ってください。
(PR)「剪定ばさみ」をAmazonで探す / 楽天で探す

冬のうちに減らす
落葉する樹なら、葉がない時期がいちばん作業しやすい時期です。
- 枝が見通せるので、取り残しが出ない
- 粗い樹皮を削ると、隙間に隠れた個体を減らせる
- マシン油乳剤は落葉している休眠期(12〜2月)に使われる
マシン油乳剤は、油分が虫の体を覆って窒息させるという物理的な効き方をします。殺虫成分で殺すのではないため、ロウ物質に覆われた相手にも通る理屈です。
使う場合は、必ず製品の適用作物と希釈倍率を確認してください。 同じ「マシン油乳剤」でも、対象と使用時期は製品ごとに違います。
常緑樹や観葉植物では、休眠期という考え方が当てはまりません。葉のある時期に油で覆うと薬害が出ることがあるため、こちらは物理的に落とす方法を軸にしてください。
すす病との関係
葉が黒くなっているなら、原因はこの虫かもしれません。
カイガラムシの排泄物は糖分を含み、そこにカビが繁殖して葉を黒く覆います。これがすす病です。
| 原因 | 虫の排泄物に生えたカビ |
| 直す方法 | 虫を減らす。 黒い部分を拭いても再発する |
| 放置すると | 光合成が妨げられ、株が弱る |
すす病の薬をかけても解決しません。 虫を断つのが筋道です。見分け方と対処はすす病の対策にまとめています。
黒い膜は、虫を減らしたあとに新しく伸びた葉から順にきれいになります。古い葉の黒さが消えないことを失敗と考えないでください。
同じ理屈でアブラムシもすす病を招きます。こちらはアブラムシ対策を参照してください。


天敵を残す
日本植物防疫協会は、天敵利用は有効としています。寄生蜂などが挙げられています。
広く効く薬をまくと、天敵も一緒に減ります。 効きにくい相手に効かない薬をかけて、効いていた天敵だけを失う、という結果になりかねません。
家庭の鉢植えなら、こすり落とす・剪定する・冬に処理するの3つで足ります。益虫を活かす考え方は益虫を呼ぶ家庭菜園にまとめました。
屋外に置いた鉢では、寄生蜂やテントウムシの仲間が自然に働いています。被害が一部の枝に留まっているなら、全体に薬をまくより、その枝だけを切るほうが結果として早く収まります。
よくある質問
Q. 殺虫剤をかけたのに死にません。
ロウ物質と介殻に覆われているため、薬剤が虫体まで浸透しないためです。薬が効くのはふ化直後の幼虫期だけで、介殻ができてからの散布はほとんど効果がありません。
Q. 薬が効く時期はいつですか?
ふ化幼虫期です。この段階では虫体が柔軟で薬剤が浸透します。島根県のカツラマルカイガラムシでは6月中下旬と8月下旬〜9月上旬の2回発生とされています。枝の上を小さな粒が歩いていたら、その時期です。
Q. こすり落として大丈夫ですか?
問題ありません。指やタワシ、古い歯ブラシで落とせます。枝に沿って一方向にこすり、樹皮を傷つけない力加減にしてください。落としたものは拾って処分します。
Q. 葉が黒いのも同じ虫のせいですか?
その可能性があります。排泄物に生えたカビがすす病で、葉を黒く覆います。黒い部分を拭いても虫が残っていれば再発するため、虫を減らすことが対処になります。
広い畑で本格的に野菜を育ててみたい方には、サポート付きで初心者でも安心の「シェア畑」がおすすめです。道具や苗も揃っているので、手ぶらで通えます。
手ぶらで行けるサポート付き貸し農園【シェア畑】![]()
まとめ
- ロウ物質と介殻に守られているため、薬剤が浸透しない
- 効くのはふ化幼虫期だけ。 裸で枝を歩いている時期
- 種により年2回(例:6月中下旬と8月下旬〜9月上旬)
- 家庭ではこすり落とす・被害枝を剪定するが確実
- 落葉樹は休眠期(12〜2月)が作業しやすい
- 葉が黒いのはすす病。 虫を断たないと再発する
- 天敵を残す。 広く効く薬は天敵も減らす
枝をオレンジ色の粒が歩いていたら、そこが年に2度の好機です。
参考