イチジクは、鉢植えで育てやすい果樹のひとつです。

苗木を選べば植えた翌年から実がつくことも多く、ベランダでも収穫できます。完熟した実はほとんど店に出回らないので、自分で育てる価値が大きい果物です。

ただし、剪定の仕方を間違えると実がつきません。 イチジクには「夏果」と「秋果」があり、どちらを採りたいかで切る場所が変わるためです。また、白い樹液で肌がかぶれることがあります。

この記事では、鉢植えでイチジクを実らせるための手順と、見落としやすい注意点をまとめます。春に植える果樹全般は春植え果樹の鉢植え栽培にまとめています。

イチジクが鉢植えに向く理由

項目 内容
科 クワ科
植え付け 11〜3月(落葉期。関東以西の目安)
収穫 夏果6〜7月/秋果8〜10月(品種による)
日照 日当たりと風通しのよい場所
土 水はけのよい、弱酸性〜中性の土
実がなるまで 苗から2〜3年(2〜3年生苗なら1年ほど)
難易度 ★★☆☆☆

鉢植えに向く理由は3つあります。

  • 受粉が要らない(日本で育てる一般的な品種は、1本で実がつく)
  • 樹高を抑えやすい(剪定と鉢の大きさで調整できる)
  • 挿し木で増やせる

早く収穫したいなら「2〜3年生苗」

苗から育てると、実がつくまで2〜3年かかります。すでに育った2年生苗・3年生苗を買えば、1年ほどで収穫できることが多くなります。

A young fig tree seedling in a pot next to an older two year old fig plant with thicker trunk, nurse

品種の選び方

夏果と秋果

イチジクの実には2種類あります。

種類 実がつく枝 収穫時期
夏果(なつか) 前年に伸びた枝 6〜7月
秋果(あきか) その年に伸びた枝 8〜10月

実がつく枝が違うことが、剪定の仕方に直結します(後述)。

家庭向きの品種

品種 特徴 収穫
桝井ドーフィン 日本でもっとも広く栽培されている。 果実が大きく、収量が多い 夏果6〜7月・秋果8〜10月
バナーネ 果皮が黄緑色、果肉が赤い。夏果と秋果の両方を採れる 夏秋兼用

初めてなら桝井ドーフィンが扱いやすく、苗も手に入りやすい品種です。

鉢と土と植え付け

鉢の大きさ

イチジクは根をしっかり張る果樹です。

苗・目的 鉢の大きさ
3年生苗の植え付け 7〜8号
一般的な鉢植え 8〜10号(直径24〜30cm)
樹高1.5〜2mで長く育てる 最終的に直径45〜60cm

いきなり大きな鉢に植えないでください。 土が乾きにくく、根腐れの原因になります。苗の大きさに合った鉢から始め、植え替えのたびに一回り大きくしていきます。

鉢の号数とサイズの関係はベランダ菜園のプランター選びにまとめています。

土

  • 水はけのよい土を使う(果樹用の培養土が手軽)
  • 弱酸性〜中性が理想

植え付けの手順

  1. 11〜3月の落葉期に植える
  2. 鉢底石を入れ、培養土を半分ほど入れる
  3. 苗を置き、根を軽くほぐして広げる
  4. 土を足して、接ぎ木苗なら接ぎ口を埋めない
  5. 鉢底から流れ出るまでたっぷり水をやる
  6. 風で倒れないよう支柱を1本添える

植え替え

植え替えは3月が目安です。根が鉢いっぱいに回ったら、一回り大きい鉢に移します。根詰まりのサインと手順はプランターの根詰まり対処を参照してください。

水やりと肥料

水やり

表土が乾いたら、鉢底から水が出るまでたっぷり与えます。

時期 目安
春・秋 表土が乾いたら
夏 朝夕2回になることも(葉が大きく水を消費する)
冬(落葉期) 土が乾いてから数日後。控えめに

夏の水切れは実の落下や品質低下につながります。 真夏はとくに注意してください。

肥料

春と収穫後に、緩効性肥料を与えるのが基本です。

窒素を与えすぎると、枝葉ばかり伸びて実がつきにくくなります。 規定量を守ってください。

Watering a potted fig tree thoroughly until water drains from the bottom of the pot on a summer morn

剪定|夏果と秋果で切り方が違う

イチジクで実がつかない原因として多いのが、剪定の間違いです。

夏果を採りたい場合|間引き剪定

夏果は前年に伸びた枝の先端に実がつきます。

枝先を切り詰めると、夏果の実がつく部分ごと落としてしまいます。 混み合った枝を付け根から間引くだけにとどめてください。

A dormant potted fig tree in winter with branches cut back leaving two or three buds on each shoot,

秋果を採りたい場合|切り戻し剪定

秋果はその年に新しく伸びた枝に実がつきます。

冬の落葉期に、前年の枝を枝元から2〜3芽残して切り戻すと、春に新しい枝が伸びて秋果がつきます。

採りたい実 剪定の方法 切り方
夏果 間引き剪定 混んだ枝を付け根から抜く。枝先は残す
秋果 切り戻し剪定 前年枝を2〜3芽残して短く切る

鉢植えでは、秋果を中心に採る切り戻し剪定のほうが樹高を抑えやすく、扱いやすくなります。

剪定バサミは、枝ごとに刃を拭くようにしてください。道具のケアは家庭菜園の道具消毒にまとめています。

樹液とカミキリムシに注意

白い樹液でかぶれる

枝や葉、実の軸を切ると、白い乳液(樹液)が出ます。

成分 起こりうること
フィシン(樹液に含まれるタンパク質分解酵素) 皮膚や口の刺激、かぶれ
フロクマリン(葉などに含まれる) 日光に当たると皮膚炎(光毒性) を起こすことがある

光毒性の皮膚炎は、体質に関係なく誰にでも起こりえます。 症状は赤み・はれ・水ぶくれなどで、重い日焼けに似ています。

作業のときは次を守ってください。

  • 薄手のゴム手袋と長袖を着る
  • 樹液が肌についたら、すぐに洗い流す
  • 樹液がついた肌を日光に当てない
  • 目をこすらない

剪定や収穫を晴れた日中にするときほど注意が必要です。 症状がひどい場合は皮膚科を受診してください。

カミキリムシ

イチジクの最大の害虫です。 幼虫が幹の内部に入り込んで食い進むため、放置すると木ごと枯れることが多いとされています。

早期発見のサイン

  • 幹に小さな穴が開いている
  • 株元に木くず(おがくずのようなもの)が落ちている

見つけたら、カミキリムシ用の殺虫剤スプレーを穴に吹きつけるのが効果的です。使うときはラベルの適用作物と使い方を確認してください。読み方は農薬ラベルの読み方にまとめています。

鉢植えは幹が目に入りやすいので、株元を週に1回見るだけで発見が早くなります。

Close up of a fig tree trunk base in a pot showing a small bore hole and fine sawdust frass on the s

収穫と保存

収穫の目安

  • 実全体が色づき、指で触ると柔らかい
  • 実の先端(お尻)が少し割れてくる
  • 実の付け根が曲がって、下を向く

木の上で熟したものが一番おいしいので、早採りせず見極めてください。鳥にねらわれやすいので、実が色づき始めたら防鳥ネットをかけると安心です。

収穫のときも実の軸から樹液が出るので、手袋をしてください。

保存

イチジクは日持ちしません。 冷蔵でも数日が限度です。

  • すぐ食べない分は冷凍する
  • 採れすぎたらジャムやコンポートにする

保存方法の使い分けは採れすぎ野菜の保存術を参照してください。

よくある質問

Q. 鉢植えのイチジクに実がつきません。

原因として多いのは、①苗がまだ若い、②剪定で実のつく枝を切ってしまった、③日当たり不足、④肥料(窒素)の与えすぎ、の4つです。夏果は前年枝の先端につくため、枝先を切り詰めると実がつきません。まず剪定の方法を見直してください。

Q. 何号の鉢に植えればいいですか?

一般的には8〜10号(直径24〜30cm)が目安です。3年生苗なら7〜8号から始めます。長く育てて樹高1.5〜2mを保つ場合は、植え替えを重ねて最終的に直径45〜60cmの鉢が必要になります。いきなり大きな鉢に植えると根腐れしやすくなります。

Q. 植え付けの時期はいつですか?

落葉期の11〜3月が適期です(関東地方以西の目安)。植え替えは3月ごろ、一回り大きい鉢に移します。

Q. 樹液が手についたら危険ですか?

樹液に含まれるフィシンで皮膚が刺激されることがあり、葉などに含まれるフロクマリンは日光に当たると皮膚炎を起こすことがあります。すぐに洗い流し、その部分を日光に当てないでください。作業時はゴム手袋と長袖を着用すると防げます。

剪定や収穫では、薄手のゴム手袋が指先の作業性を保ちながら樹液から肌を守ります。長袖と合わせて使ってください。

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Q. 幹に穴が開いて木くずが出ています。

カミキリムシの幼虫が入っている可能性が高いサインです。放置すると枯れることが多いので、カミキリムシ用の殺虫剤スプレーを穴に吹きつけてください。使用前にラベルで適用作物を確認します。

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まとめ

イチジクを鉢植えで実らせる要点です。

始め方

  • 植え付けは11〜3月の落葉期
  • 早く採りたいなら2〜3年生苗(1年ほどで収穫できることが多い)
  • 鉢は8〜10号が目安。植え替えのたびに一回り大きく

実をつけるための剪定

  • 夏果は前年枝の先端につく → 間引き剪定(枝先を残す)
  • 秋果はその年の枝につく → 切り戻し剪定(2〜3芽残す)
  • 鉢植えは秋果中心の切り戻しが扱いやすい

安全と害虫

  • 白い樹液でかぶれる。手袋と長袖、ついたら洗って日光に当てない
  • 幹の穴と木くずはカミキリムシのサイン。すぐ対処する

完熟したイチジクは、自分で育てた人だけが味わえる果物です。まずは2年生苗を1本、8号鉢から始めてみてください。

イチジクの苗は、小さな1年生苗より2〜3年生の苗のほうが早く実がつきます。購入時は品種名と苗の年数を確認してください。

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参考