家庭菜園も農薬取締法の対象です。

「自分で食べるだけだから」「プランター数個だから」は理由になりません。農薬を使うすべての人に、同じ基準が適用されます。

守るべき内容は、すべて容器のラベルに書かれています。この記事では、その読み方を解説します。

農薬を使わずに済ませる方法は農薬を使わない家庭菜園の害虫対策、家にあるもので作るスプレーは家庭で作れる無農薬スプレーにまとめています。

家庭菜園も法律の対象

2002年(平成14年)の農薬取締法改正で、農薬使用者が守るべき基準が定められました。この基準は、農家か家庭菜園かを区別しません。

食用作物で守らなければならないのは、次の4つです。

  1. 適用作物以外に使わない
  2. 定められた使用量・濃度を超えない
  3. 定められた使用時期(収穫前日数)を守る
  4. 定められた総使用回数を超えない

これらに違反した場合、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(併科あり)の対象になります。法人の場合は1億円以下の罰金です。

※2025年6月1日施行の刑法改正により、「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。

実際に家庭菜園で摘発された例はほとんどありません。 しかし「自分と家族が食べるものの安全」という点で、守る意味があります。

ラベルで確認する5項目

1|登録番号

「農林水産省登録第○○○○○号」という記載があるか確認してください。

これがない製品は、農薬として登録されていません。登録番号のないものを農薬として使うと、それ自体が違反になります。

「農薬」と書かれていない園芸用品や、個人が輸入したものには注意が必要です。

2|適用作物

「使ってよい作物」が具体的に書かれています。

表記 意味
きゅうり きゅうりにのみ使える
なす なすにのみ使える
野菜類 幅広い野菜に使える(範囲は製品で異なる)
未成熟いんげん さやごと食べる状態のいんげん
花き類・観葉植物 食用作物には使えない

書かれていない作物には使えません。 「トマトに使えるならミニトマトも」と考えがちですが、表記が分かれている製品もあります。ラベルどおりに読んでください。

3|希釈倍数(使用量)

「1000倍」「2000倍」といった薄め方です。

  • 濃くしても効果は上がりません
  • 濃度が高いと薬害(葉が枯れる・変色する)が出ます
  • 残留量が基準を超えるおそれがあります

「1000倍」は、水1Lに対して薬剤1mlです。計量スプーンかスポイトを使ってください。目分量では倍以上ずれます。

「〇〇倍〜〇〇倍」と幅がある場合は、薄いほうから試してください。

4|使用時期(収穫前日数)

「収穫7日前まで」「収穫前日まで」といった記載です。

これは「散布からこの日数が経てば、残留量が基準値以内に収まる」という意味です。安全を確認したうえで設定されています。

表記 意味
収穫前日まで 収穫の1日前まで使える
収穫7日前まで 収穫の7日前までに散布を終える
収穫30日前まで 収穫の30日前までに終える
発芽前 発芽してからは使えない

「7日前まで」の農薬を散布したら、7日間は収穫できません。 家庭菜園では毎日少しずつ収穫することが多いので、ここでの計画が要ります。

散布した日をメモしておいてください。 記録の付け方は菜園ノートの書き方にまとめています。

5|総使用回数

「本剤の総使用回数:3回以内」といった記載です。

種まき・植え付けから収穫までの間に使える回数を指します。栽培期間全体での上限です。

さらに注意が必要なのが、同じ有効成分を含む別の製品も回数に合算されることです。

ラベルには次の2つが書かれています。

  • 本剤の総使用回数|その製品を使える回数
  • 有効成分〇〇を含む農薬の総使用回数同じ成分の農薬すべての合計

製品名が違っても、有効成分が同じなら合算されます。 複数の薬剤を使うなら、成分名で確認してください。

Close up of a Japanese pesticide product label showing registration number, applicable crops, diluti

使う前の準備

適用のある製品を選ぶ

病害虫を特定してから買ってください。 何に効く薬剤かはラベルに書かれています。

  • 殺虫剤|虫を殺す
  • 殺菌剤|病気(カビ・細菌)を防ぐ
  • 殺虫殺菌剤|両方
  • 除草剤|野菜にかけてはいけない

害虫の見分け方は家庭菜園の害虫図鑑、病気は葉の異変サイン10種を参照してください。

服装

  • 長袖・長ズボン
  • 手袋(薬剤用)
  • マスク
  • ゴーグルまたはメガネ
  • 帽子

素手で扱わないでください。 皮膚から吸収される成分があります。

天候と時間帯

条件 判断
風が強い 中止(周囲に飛散する)
雨が降りそう 中止(流れて効かない)
気温30度以上 避ける(薬害が出やすい)
早朝・夕方 最適
日中の直射日光下 避ける

近隣への飛散に最も注意してください。 ベランダや住宅地では、隣家の洗濯物や庭にかかるおそれがあります。

A measuring spoon and syringe beside a watering can, showing accurate dilution of garden chemicals,

散布のしかた

  1. 必要な量だけ薄める(作り置きしない)
  2. 葉の裏側にもかける(害虫は裏にいる)
  3. 葉から滴り落ちる手前で止める
  4. 使い終わったら噴霧器を水で洗う
  5. 手と顔を洗う

余った希釈液は保管しないでください。 効果が落ち、成分が分解して別の物質になることがあります。

排水口に流さないでください。 どうしても余ったら、土に少量ずつまいて分解させます。

保管と処分

保管

条件 理由
鍵のかかる場所 子どもとペットが触れない
直射日光を避ける 成分が分解する
高温を避ける 同上
食品と分けて保管 誤飲を防ぐ
元の容器のまま 移し替えは絶対に不可

別の容器(特にペットボトル)に移し替えるのは、誤飲事故の原因として最も危険です。 絶対にやめてください。

使用期限

未開封で3年程度が目安ですが、製品によって異なります。ラベルまたは容器に記載があります。

期限を過ぎたものは効果が落ち、成分が変化していることもあります。

処分

空容器は、自治体の指示に従って処分してください。 分別区分は地域で異なります。

中身が残っている場合は、購入した販売店か自治体に相談してください。 排水口や側溝に流してはいけません。

A locked storage box in a shed holding garden chemical bottles upright and separated from other supp
Fine insect netting stretched over vegetable planters on a balcony as a chemical free pest barrier,

農薬を減らすという選択

そもそも使わずに済むなら、それが最も簡単です。

方法 効果
防虫ネット 物理的に入れない。最も確実
輪作 土壌病害を減らす
適切な株間 風通しがよく病気が出にくい
早期発見・捕殺 数が少ないうちに手で取る
コンパニオンプランツ 忌避効果

防虫ネットは、農薬を使わずに済ませるための最有力手段です。 張り方は防虫ネットの使い方、輪作は連作障害を避ける畝のローテーションと作付け計画にまとめています。

「使うか使わないか」ではなく、「使わずに済む状況を作り、必要なときだけ正しく使う」という考え方が現実的です。

よくある質問

Q. 家庭菜園でも農薬取締法は適用されますか?

適用されます。農薬を使うすべての人が対象で、農家か家庭菜園かは区別されません。適用作物・使用量・使用時期・総使用回数の4つを守る義務があり、違反には罰則が定められています。

Q. 「収穫7日前まで」とはどういう意味ですか?

散布から7日が経てば、農薬の残留量が基準値以内に収まるという意味です。逆に言えば、散布した日から7日間は収穫できません。散布日を記録しておいてください。

噴霧器は使用後に水で洗い、薬剤を残さないことが前提の道具です。容量1〜2Lの蓄圧式なら、プランター数個ぶんを一度に散布できます。

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Q. 薄めすぎ・濃すぎ、どちらが問題ですか?

濃すぎるほうが問題です。効果が上がらないうえに薬害が出やすく、残留量が基準を超えるおそれもあります。薄すぎる場合は効果が落ちるだけなので、幅があるときは薄いほうから試してください。

Q. 別の製品でも成分が同じなら回数は合算されますか?

合算されます。ラベルには「本剤の総使用回数」とは別に「有効成分〇〇を含む農薬の総使用回数」が書かれています。製品名ではなく成分名で確認してください。

Q. 余った希釈液はどうすればいいですか?

保管せず、その日のうちに使い切るのが原則です。作るときに必要な量だけ計算してください。どうしても余った場合は、排水口には流さず、土に少量ずつまいて分解させます。

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まとめ

農薬ラベルの読み方を整理します。

家庭菜園も農薬取締法の対象です。 適用作物・使用量/濃度・使用時期・総使用回数の4つが遵守事項で、違反には罰則があります。

ラベルで確認する5項目

  1. 登録番号(農林水産省登録第○号)があるか
  2. 適用作物に、育てている野菜が書かれているか
  3. 希釈倍数(濃くしない。1000倍=水1Lに1ml)
  4. 使用時期(収穫前日数。散布日を記録する)
  5. 総使用回数同じ成分の別製品も合算される

安全のための3点

  • 長袖・手袋・マスクで、風のない早朝か夕方
  • 元の容器のまま、鍵のかかる場所に保管(ペットボトルへの移し替えは厳禁)
  • 余った希釈液は作り置きせず、排水口に流さない

そして、最も確実なのは使わずに済ませることです。 防虫ネットと輪作で防げる被害は多く、農薬は「必要なときだけ、正しく」に絞れます。


参考