アブラムシ対策で最も重要なのは、増える前に見つけることです。
アブラムシはメスだけで子を産み(単為生殖)、生まれた幼虫は約10日で親になってまた産みます。1匹を放置すると、2週間後には数十匹、1か月後には手に負えない数になります。
この記事では、発生しやすい条件、見回りの方法、そして数に応じた段階別の対処を解説します。害虫対策全般の考え方は農薬を使わない家庭菜園の害虫対策にまとめています。
アブラムシの被害は3つある
吸汁による直接被害だけではありません。
被害1|汁を吸われて生育が止まる
新芽や若い葉に群がり、養分を吸います。成長点をやられると、その後の伸びが止まります。
若い苗ほど影響が大きく、植え付け直後に発生すると株そのものがだめになることがあります。
被害2|すす病を誘発する
アブラムシは吸った汁の余分な糖分を排泄します。これが葉に付着すると、そこにカビが繁殖して葉が黒くなります。これがすす病です。
黒くなった葉は光合成できず、株が弱ります。
被害3|ウイルス病を媒介する
これが最も深刻です。アブラムシは口針でウイルスを株から株へ運びます。
モザイク病に代表されるウイルス病は治療法がなく、感染した株は抜き取るしかありません。アブラムシを防ぐことは、ウイルス病を防ぐことでもあります。
発生しやすい条件
アブラムシが増える条件は、はっきりしています。逆に言えば、この条件を外せば発生を減らせます。
条件1|窒素肥料が多い
最も見落とされている原因です。
窒素が多いと植物の体内でアミノ酸が増え、アブラムシにとって栄養価の高い餌になります。「肥料をたっぷりあげたのに虫だらけ」というのは偶然ではありません。
葉の色が濃い緑になりすぎている株は、窒素過多のサインです。肥料の与え方は家庭菜園の肥料の種類と選び方を参照してください。
条件2|春と秋の気温
20度前後で最も繁殖が活発になります。4〜6月と9〜10月が発生のピークです。
真夏の高温期は一時的に減りますが、涼しくなると再び増えます。
条件3|風通しが悪い
株が密集していると、羽のないアブラムシが歩いて広がりやすくなります。
株間を適正に取ることが予防になります。目安は株間の取り方にまとめています。
条件4|近くに発生源がある
雑草、特にハコベやナズナはアブラムシの越冬場所になります。畑やベランダの周囲の雑草を放置しないでください。
雑草管理は家庭菜園の雑草対策を参照してください。

見回りのしかた
早期発見がすべてです。1日30秒で済みます。
見る場所は3か所
- 新芽の先端:最も柔らかく、真っ先に狙われます
- 葉の裏:表からは見えません。必ずめくって確認
- 茎と葉の付け根:わき芽の出る部分に隠れています
見るタイミング
朝の水やりのついでが習慣化しやすいタイミングです。
週2〜3回でも十分ですが、春と秋の発生期は毎日見てください。
見つけるべきサイン
アブラムシ本体が見えなくても、次のサインで気づけます。
- 葉がべたつく(排泄物)
- 葉が縮れる、内側に巻く
- アリが株を上り下りしている
- 白いカスのようなものが落ちている(脱皮殻)
アリはアブラムシの排泄物を目当てに来ます。 アリが野菜を上り下りしていたら、その先にアブラムシがいると考えてください。アリはアブラムシを天敵から守る役割まで果たすため、駆除の妨げにもなります。
葉の異変全般の見分け方は葉の異変サイン10種にまとめています。
数に応じた駆除の手順
数匹〜十数匹|手で取る
最も確実で、株への負担もありません。
- 指でつぶす:手袋をすれば抵抗も少ないです
- 粘着テープで取る:セロハンテープを軽く押し当てて剥がす。新芽を傷めない強さで
この段階で対処できれば、それ以上広がりません。
数十匹〜葉に群がる|水で飛ばす
アブラムシは足の力が弱く、水圧で落とせます。落ちた個体は自力で株に戻れません。
やり方
- ホースの水を「シャワー」か「ジェット」に設定
- 葉の裏側から吹き上げる
- 新芽は勢いを弱めて、葉が傷まない程度に
朝に行い、日中に乾かすようにしてください。夕方にやると濡れたまま夜を迎え、病気の原因になります。
株全体に広がった|スプレーを使う
家庭で使える対処です。
| スプレー | 作り方 | 仕組み |
|---|---|---|
| 牛乳 | 牛乳を原液のまま | 乾くと膜になり窒息させる |
| 石けん水 | 水500mlに液体石けん数滴 | 体表の油分を溶かす |
| 片栗粉 | 水100mlに片栗粉小さじ1 | 乾いて固まり動けなくする |
| 木酢液 | 500〜1000倍に希釈 | 忌避効果 |
牛乳スプレーの注意点:乾いたあと必ず水で洗い流してください。放置すると腐敗して臭いが出て、逆にカビの原因になります。晴れた日の午前中に散布し、夕方までに流すのが基本です。
作り方の詳細は家庭で作れる無農薬スプレーにまとめています。
手に負えない|株ごと処分する
ウイルス病の症状(葉のモザイク模様、萎縮、奇形)が出ている株は、駆除しても回復しません。
他の株への感染源になるため、抜き取って処分してください。畑に放置せず、袋に入れて捨てます。

予防が8割
発生してから対処するより、発生させないほうが圧倒的に楽です。
防虫ネットをかける
物理的に入れないのが最も確実です。植え付けと同時にかけてください。発生してからでは、中に閉じ込めることになります。
アブラムシは体長1〜4mmと小さいので、目合い0.8mm以下のネットを選びます。一般的な防虫ネット(1mm)では入られることがあります。
裾に隙間があると意味がありません。土に埋めるか、ピンで固定してください。
アブラムシを防ぐには目合い0.8mm以下が必要です。一般的な1mmのネットでは通り抜けられるので、数値を確認して選んでください。
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シルバーマルチを敷く
アブラムシは光を反射する面を嫌います。銀色のマルチシートを株元に敷くと、飛来が減ります。
シルバーマルチはロールで買うと1平方メートルあたりの単価が下がります。必要な畝の長さを測ってから選んでください。
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マルチの張り方はマルチシートの張り方と効果を参照してください。アルミホイルでも代用できます。
窒素肥料を控える
前述のとおり、窒素過多はアブラムシを呼びます。
葉の色が濃すぎる、茎が太く柔らかい、といった状態なら追肥を止めてください。

天敵を活かす
テントウムシ1匹は、幼虫期だけで数百匹のアブラムシを食べます。
殺虫剤を使うと天敵も一緒にいなくなり、結果的にアブラムシが増えやすい環境になります。無農薬で管理するメリットはここにあります。
テントウムシ、ヒラタアブ、クサカゲロウ、寄生バチが主な天敵です。呼び込む方法は益虫を呼ぶ家庭菜園にまとめています。
テントウムシの幼虫を殺さないでください。 黒地にオレンジの斑点がある、細長い姿をしています。害虫と間違えて駆除してしまう例が多いのですが、成虫より食べる量が多い益虫です。
コンパニオンプランツを植える
香りの強い植物がアブラムシを遠ざけます。
- マリーゴールド:定番。土壌線虫にも効く
- ネギ・ニラ:ウリ科・ナス科の隣に
- ミント・バジル:香りで忌避(繁殖力が強いので容器栽培推奨)
組み合わせはコンパニオンプランツ入門を参照してください。
アリを断つ
アリはアブラムシを守り、別の株へ運ぶことさえあります。アリの行列を見つけたら、その経路を断つとアブラムシの拡散が抑えられます。

被害を受けやすい野菜
| 野菜 | 発生しやすい時期 | 注意点 |
|---|---|---|
| ソラマメ | 4〜5月 | 先端に真っ黒に群がる。摘芯で対処 |
| キャベツ・白菜 | 春・秋 | 結球内部に入ると取れない |
| ナス | 5〜7月 | ウイルス病の媒介に注意 |
| ピーマン | 5〜7月 | 新芽が集中的に狙われる |
| きゅうり | 5〜7月 | 葉裏に多発 |
| レタス | 春・秋 | 収穫時に混入しやすい |
| 大葉・シソ | 6〜9月 | 柔らかい新芽に |
ソラマメは特に注意です。4〜5月に先端が真っ黒になるほど群がります。摘芯を兼ねて先端を切り落とすのが最も効率的な対処になります。
よくある質問
Q. アブラムシは人体に害がありますか?
ありません。付いたまま食べても健康被害はありません。ただし見た目と食感の問題があるので、収穫後は流水でよく洗ってください。レタスやキャベツは葉を1枚ずつ剥がして洗います。
Q. 一度駆除したのにまた発生します。
発生源が残っているか、条件が変わっていません。周囲の雑草を確認し、窒素肥料を控えてください。羽のある個体が飛来している場合は、防虫ネットかシルバーマルチで飛来自体を減らす必要があります。
Q. 牛乳スプレーは何回まで使えますか?
同じ株に何度でも使えますが、必ず毎回水で洗い流してください。洗い流さないと腐敗します。連用するより、防虫ネットなど予防策と組み合わせるほうが効果的です。
Q. テントウムシを買ってきて放してもいいですか?
市販の天敵製剤もありますが、家庭菜園の規模では定着しにくく、飛んで行ってしまうことが多いです。それより殺虫剤を使わず、マリーゴールドなど天敵が集まる植物を植えるほうが現実的です。
Q. 室内で育てている野菜にもつきますか?
つきます。窓を開けたときに飛来したり、購入した苗に付着していたりします。室内は天敵がいないぶん増えやすいので、苗を買ってきたときは葉裏を確認してから室内に入れてください。
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まとめ
アブラムシ対策の要点を整理します。
なぜ早期発見が重要か
1匹が10日で親になり、また産みます。2週間放置すると数十匹、1か月で手に負えなくなります。
見回りは1日30秒
新芽の先端・葉の裏・茎と葉の付け根の3か所。アリが上り下りしていたら、その先にアブラムシがいます。
数に応じた対処
- 数匹 → 手かテープで取る
- 数十匹 → 葉裏から水で飛ばす(朝に行う)
- 株全体 → 牛乳・石けん水スプレー(必ず洗い流す)
- ウイルス病の症状 → 株ごと処分
予防が8割
- 防虫ネットは目合い0.8mm以下、植え付けと同時に
- シルバーマルチで飛来を減らす
- 窒素肥料を控える(濃い緑の葉は要注意)
- テントウムシの幼虫を殺さない
まずは明日の朝、水やりのついでに新芽と葉裏を見てみてください。見る習慣さえつけば、アブラムシは怖い害虫ではありません。