根こぶ病はアブラナ科の野菜だけに発生する土の病気です。キャベツ、白菜、ブロッコリー、大根、カブ、小松菜が対象になります。
「日中だけしおれて、夕方には戻る」という症状が数日続いたら、この病気を疑ってください。地上部だけを見ていると水不足と区別がつかず、水をやり続けて手遅れになる例が多くあります。
この記事では、見分け方から予防、発生後の立て直しまでを解説します。連作の考え方は連作障害を避ける畝のローテーションにまとめています。
根こぶ病とは
プラスモディオフォラというカビの仲間(正確には原生生物)が根に寄生する病気です。
寄生された根は異常に肥大し、こぶ状にふくれます。こぶが水と養分の通り道をふさぐため、地上部が水を吸い上げられなくなります。
最も厄介な性質
休眠胞子が土の中で7〜8年生き残ります。
一度発生した場所は、長期間その菌を抱え続けます。だから「発生させないこと」が対策の中心になります。薬剤で完全に消すことはできません。
感染する野菜・しない野菜
| 感染する(アブラナ科) | 感染しない |
|---|---|
| キャベツ | トマト・ナス・ピーマン(ナス科) |
| 白菜 | きゅうり・かぼちゃ(ウリ科) |
| ブロッコリー | ねぎ・玉ねぎ(ヒガンバナ科) |
| カリフラワー | ほうれん草(ヒユ科) |
| 大根・カブ | レタス・春菊(キク科) |
| 小松菜・水菜・チンゲンサイ | 枝豆・いんげん(マメ科) |
| ルッコラ・からし菜 | にんじん・パセリ(セリ科) |
ナズナやイヌガラシなどアブラナ科の雑草も感染源になります。 畑の周囲に生やしたままにしないでください。

見分け方
症状1|日中だけしおれ、夕方に回復する
最も特徴的なサインです。
こぶが水の通り道をふさぐため、蒸散が盛んな日中に水が足りなくなります。気温が下がる夕方には需要が減るので、見かけ上は回復します。
これが数日続いたら根こぶ病を疑ってください。 水不足なら水をやれば数時間で戻り、翌日も同じことは繰り返しません。
症状2|下葉から黄色くなる
進行すると、下の葉から順に黄変して枯れ上がります。
症状3|株の生育が周囲より明らかに遅い
同じ日に植えたのに、1株だけ小さいままという場合も疑わしいです。
確定診断|抜いて根を見る
症状だけでは断定できません。必ず抜いて確認してください。
疑わしい株を1本抜き、根を水で洗います。
- こぶがある → 根こぶ病
- こぶがなく、根が茶色くぬめる → 根腐れ(水のやりすぎ)
- 根が白くて健康 → 別の原因
こぶの大きさは、米粒大から握りこぶし大までさまざまです。大根やカブでは、可食部そのものが変形することもあります。
根腐れとの見分けは水やりは朝?夕方?も参考になります。
発生しやすい条件
菌がいても、条件が揃わなければ発病しません。ここが対策の入り口です。
条件1|土が酸性(pH6.0以下)
最大の要因です。 根こぶ病菌は酸性土で活発になり、pH7.2以上ではほとんど活動できません。
日本の土壌は雨が多いため、放っておくと酸性に傾きます。
条件2|土が多湿
菌は水中を泳いで根にたどり着きます。水はけが悪い畑ほど発生しやすくなります。
条件3|地温が高い(18〜25度)
春の植え付け後と、秋の残暑期が危険な時期です。
条件4|アブラナ科の連作
同じ場所でアブラナ科を続けると、菌の密度が上がります。
予防策
対策1|pHを6.5〜7.0に上げる
最も効果が高い対策です。
植え付けの2〜3週間前に苦土石灰を施し、よく混ぜます。
苦土石灰は粒状タイプが飛散しにくく扱いやすいです。1平方メートルあたり100〜300gが目安なので、畑の広さから必要量を計算して選んでください。
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| 現在のpH | 苦土石灰の量(1平方メートル) |
|---|---|
| 5.5前後 | 200〜300g |
| 6.0前後 | 100〜150g |
| 6.5以上 | 不要 |
pHは必ず測ってください。 勘で入れると入れすぎになり、今度は微量要素の吸収が悪くなります。土壌酸度計は1,000〜2,000円で買えます。
土壌酸度計は電池不要で土に挿すだけのタイプが手軽です。根こぶ病対策では毎シーズン測ることになるので、1本持っておくと安心です。
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石灰の種類による違いは苦土石灰vs消石灰vs有機石灰にまとめています。
注意:石灰と肥料を同時に入れないでください。化学反応で窒素が抜けます。石灰を入れて2週間置いてから、元肥を入れます。
対策2|輪作する(アブラナ科は7年空ける)
休眠胞子が7〜8年生きるため、理想は7年です。
家庭菜園でそこまで空けるのは難しいので、現実的には次のように考えます。
- 発生歴がない畑:3〜4年でも実用上は問題が出にくい
- 発生した畑:最低5年、できれば7年
畝ごとに何を植えたか記録しておくと管理できます。菜園ノートの書き方が参考になります。
対策3|水はけを良くする
高畝にするのが最も直接的です。畝を20〜30cm高くすると、根の周りに水が滞りません。
畝の作り方は畝の種類と作り方を参照してください。
粘土質の畑では、腐葉土や堆肥をすき込んで団粒構造を作ります。土づくりの基本は家庭菜園の土づくり入門にまとめています。
対策4|抵抗性品種を選ぶ
「CR」と表示された品種は根こぶ病抵抗性があります(CR = Club Root resistant)。
- CR白菜
- CRキャベツ
- CRブロッコリー
完全に防げるわけではありません。 菌の系統によっては発病します。あくまで他の対策と組み合わせる位置づけです。
対策5|おとり作物を使う
葉大根やえん麦(ハイブリッドソルゴー等)を植えると、菌が根に侵入しますが増殖できずに減少します。
シーズンの合間に育てて、花が咲く前にすき込みます。時間はかかりますが、菌の密度を下げられる数少ない方法です。
対策6|道具と靴で持ち込まない
菌は土と一緒に移動します。
- 発生した区画で使った移植ごて・長靴は、他の区画に入る前に洗う
- 発生した株を引き抜いたら、その土を他所に移さない
- 苗は信頼できる店で買う(感染した育苗土から持ち込まれることがある)
道具の手入れは家庭菜園の道具消毒を参照してください。

発生してしまったときの対処
治療はできない
発病した株は回復しません。 薬剤も家庭菜園で使えるものは予防的なものに限られます。
手順1|株を抜いて処分する
こぶを土に残すと、そこから休眠胞子が大量に放出されます。
根ごと丁寧に掘り上げ、こぶが土中に残らないようにしてください。抜いた株は畑に放置せず、袋に入れて処分します。堆肥にもしないでください。

手順2|その区画のアブラナ科をやめる
同じシーズンに植え直しても同じ結果になります。
その区画は、ナス科・ウリ科・マメ科など、感染しない科の野菜に切り替えてください。
手順3|土のpHを上げる
収穫後の空いた時期に苦土石灰を施し、pHを7.0付近まで上げておきます。
手順4|記録して輪作計画に反映する
「いつ・どの区画で発生したか」を記録してください。7年の輪作は、記録がないと管理できません。

プランター栽培の場合
プランターは畑より対処が簡単です。土を入れ替えればリセットできます。
発生したら、その土は再生せずに処分してください。休眠胞子が残っているため、太陽熱消毒でも完全には死滅しません。
処分方法は使い終わった培養土の処分方法にまとめています。
プランターを洗って乾かし、新しい培養土で植え直せば問題ありません。市販の培養土はpHが調整済みなので、通常は石灰も不要です。
よくある質問
Q. 根こぶ病の野菜は食べられますか?
こぶができているのは根の部分で、キャベツや白菜の葉は食べられます。人体に害はありません。ただし株が弱っているため、味や品質は落ちます。大根やカブは可食部そのものが変形するので、食用には向きません。
Q. 一度発生した畑では、もうアブラナ科を作れませんか?
作れます。ただし7年程度空けるのが原則です。それより早く作りたい場合は、pHを7.0まで上げる、高畝にする、CR品種を選ぶ、おとり作物を挟む、という対策を重ねてリスクを下げます。
Q. 石灰を入れすぎるとどうなりますか?
pHが7.5を超えると、鉄・マンガン・ホウ素などの微量要素が吸収されにくくなり、葉が黄色くなる欠乏症が出ます。根こぶ病を防ごうとして別の問題を招くので、必ず測ってから入れてください。
Q. 連作していないのに発生しました。なぜですか?
苗に付いて持ち込まれたか、道具や靴で運ばれたか、前の耕作者の時代から菌がいた可能性があります。休眠胞子は7〜8年生きるため、自分が作っていなくても土にいることがあります。
Q. 太陽熱消毒で根こぶ病菌は死にますか?
減らせますが、完全にはなくなりません。真夏に土を湿らせて透明マルチで覆い、1か月置く方法で密度を下げられます。他の対策と組み合わせて使ってください。
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まとめ
根こぶ病の要点を整理します。
見分け方
- 日中だけしおれ、夕方に回復する状態が数日続く
- 疑わしい株を抜き、根を洗ってこぶを確認する
- こぶがなく根が茶色くぬめるなら根腐れ(別の病気)
発生条件
- 酸性土(pH6.0以下)← 最大の要因
- 多湿
- 地温18〜25度
- アブラナ科の連作
予防
- pHを6.5〜7.0に上げる(測ってから石灰を入れる)
- アブラナ科は7年空ける(最低でも5年)
- 高畝にして水はけを確保する
- CR品種を選ぶ
- 道具と靴で菌を持ち込まない
発生したら
治療はできません。根ごと抜いて処分し、その区画はアブラナ科以外に切り替えます。プランターなら土を入れ替えればリセットできます。
まずは土壌酸度計を1本用意して、アブラナ科を植える前にpHを測る習慣をつけてください。この病気は、ほぼpH管理で防げます。