葉に、輪のような模様のある円形の斑点ができる。茎や実には、押したようにへこんだ病斑が現れる。そして雨の日が続くと、そのへこみにオレンジがかった粘り気のあるものがにじみ出す。
これが炭疽病(たんそびょう)です。「へこむ」と「鮭肉色のねばり」が、ほかの病気と見分ける手がかりになります。
この記事では、高知県の資料をもとに、症状の見分け方・広がり方・家庭菜園でできる対策をまとめます。葉の異変全体の見分け方は葉の異変サイン10種を参照してください。
炭疽病とは
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 病原菌 | Colletotrichum orbiculare(きゅうりの場合) |
| 出る場所 | 葉・茎・果実 |
| 特徴 | へこんだ病斑と、高湿度時の鮭肉色の粘質物 |
| 広がり方 | 水滴の飛沫で飛散する |
| 時期 | 露地では6月から秋期にかけて多い |
名前の「炭疽」は、黒く焦げたように見えることに由来します。 ただし実際の見た目は黒一色ではなく、へこんだ病斑と、そこに現れる色が手がかりです。
症状の見分け方
高知県は、きゅうりの炭疽病の症状を部位ごとに説明しています。
| 部位 | 症状 |
|---|---|
| 葉 | 最初は小さな黄色の丸い病斑。拡大して円形になり、周縁は褐色、内側は白っぽく退色して破れやすくなる。同心輪紋を生じることもある |
| 茎 | 黄褐色で縦に長いへこんだ病斑。高湿度条件では鮭肉色で粘質の分生胞子堆が形成される |
| 果実 | 最初は黄色の斑点、後に褐色のへこんだ病斑。同じく鮭肉色の粘質分生胞子堆ができる |
決め手は「鮭肉色のねばり」
湿った日に、へこんだ病斑をよく見てください。
サーモンピンクのような色の、粘り気のあるものがにじんでいれば、炭疽病とみてほぼ間違いありません。これは分生胞子堆といって、胞子のかたまりです。
乾いているときは見えないことがあります。 雨上がりの朝がいちばん確認しやすいタイミングです。
同心輪紋という模様
葉の病斑に、的のような輪が重なって見えることがあります。これを同心輪紋といいます。
輪紋が見えたら、炭疽病のほかに輪紋病なども候補になりますが、茎や実にへこみがあるかどうかで切り分けられます。

どうやって広がるか
高知県は、伝染のしくみをこう説明しています。
「被害植物の組織中の菌糸、病斑上の分生子が土中や支柱などの資材に付着して次作の伝染源となる」
そして、「病斑上に形成された分生子は水滴の飛沫とともに周囲に飛散」します。
| 経路 | 内容 |
|---|---|
| 水滴の飛沫 | 雨や水やりのしぶきで飛ぶ |
| 前作の残り | 組織中の菌糸が次作の伝染源になる |
| 資材への付着 | 支柱などに分生子が付く |
注目すべきは「支柱などの資材」です。 土の中だけでなく、使い回す支柱やネットにも菌が残るということです。片付けのときに洗わずしまうと、翌年そこから始まります。
発生しやすい条件
高知県は、「一般に露地栽培では6月から秋期にかけて発生が多く、また、窒素肥料の過用も本病の発生を助長する」としています。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 時期 | 6月から秋期 |
| 湿度 | 高湿度で分生胞子堆ができる |
| 肥料 | 窒素肥料の過用が発生を助長する |
肥料のやりすぎが条件に入っているのは、べと病と同じ構造です。ただしべと病は「肥切れ」で出やすく、炭疽病は「窒素過多」で助長されます。どちらも、施肥が適正でないと弱るということです。
べと病との見分けはべと病の対策にまとめています。
ほかの病気との見分け
葉に斑点が出る病気は多く、見分けの軸を持っておくと迷いません。
| 病気 | 決め手 |
|---|---|
| 炭疽病 | 病斑がへこむ。高湿度で鮭肉色の粘質物 |
| うどんこ病 | 白い粉が表面に広がる。擦ると取れる |
| べと病 | 葉脈で区切られた角形。葉裏に灰色のかび |
| 灰色かび病 | 灰色のかびが密生。花や実が中心 |
| 斑点性の細菌病 | 病斑が水浸状。へこみは目立たない |
「へこんでいるか」を最初に見てください。 表面に何かが乗っているように見えるのがうどんこ病や灰色かび病、組織そのものが落ち込んでいるのが炭疽病です。
指で軽くなぞると違いが分かります。粉なら取れ、かびなら払え、へこみは変わりません。

対策
高知県が挙げている防除方法は、次の2点です。
- 「ほ場は低湿地を避け、ポリマルチ等によって地表からの雨滴のはね上がりを防ぐ」
- 「肥培管理を適正にし、とくに窒素肥料の多用を避ける」
跳ね上がりを止める
水滴の飛沫で広がる病気なので、土からの跳ね返りを止めるのが最優先です。
| 方法 | 効果 |
|---|---|
| マルチを張る | 土の表面を覆い、跳ね上がりを防ぐ |
| 敷きわらを敷く | 同上。分解して土にも還る |
| 雨除けをする | 葉を濡らす時間そのものを減らす |
| 株元に水をやる | 上から葉にかけない |
雨除けの作り方は雨除けトンネル・ビニールトンネルDIYにまとめています。
マルチは土の表面を覆い、雨滴の跳ね上がりを防ぎます。畝の幅に合わせた寸法を選び、端を押さえる余裕を見てください。
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窒素を効かせすぎない
「もっと育てたい」と追肥を重ねると、かえって病気を招きます。 葉の色が濃く、茎が太くなりすぎているときは、窒素が効きすぎているサインです。
早い段階で気づく
葉の1枚目の病斑を見つけられるかどうかで、その後が変わります。
- 下葉から先に出やすい(土に近く、跳ね返りを受ける)
- 雨が続いたあとに見回る
- 葉の表だけでなく、茎の地際も見る
梅雨と秋の長雨の直後が、点検のタイミングです。晴れが続いている間は進みにくく、雨のあとにまとめて広がります。
見つけたらすること
- 発病した葉・茎・実を取り除く
- 袋に入れて畑の外へ持ち出す
- 濡れている日に作業しない(胞子が飛びやすい)
- 触ったハサミを消毒する
道具の消毒方法は家庭菜園の道具消毒にまとめています。
発病部を切る作業では、株ごとに拭けるはさみがあると安心です。分解して洗える構造だと消毒が楽になります。
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片付けと翌年
炭疽病対策は、収穫後の片付けまでが本番です。
- 被害株を畑に残さない
- 支柱やネットを洗ってから収納する
- プランターなら土を入れ替える
- 同じ場所で続けてウリ科を作らない
きゅうりの育て方はきゅうりをプランターで育てる方法にまとめています。
よくある質問
Q. 炭疽病になった実は食べられますか?
病斑の部分は腐敗が進むため食用には向きません。へこんだ病斑のある実は取り除いて処分してください。同じ株の健全な実は、病斑がなければ収穫できます。
Q. うどんこ病や灰色かび病とどう違いますか?
うどんこ病は白い粉が表面に広がり、灰色かび病は灰色のかびが密生します。炭疽病は病斑が「へこむ」点と、高湿度時に鮭肉色の粘質物が出る点で見分けられます。
Q. 支柱は使い回しても大丈夫ですか?
洗ってから使ってください。高知県の資料では、病斑上の分生子が土中や支柱などの資材に付着して次作の伝染源になるとされています。使い回す前に洗浄し、よく乾かしてください。
Q. 肥料を減らせば防げますか?
窒素肥料の過用は発生を助長するとされていますが、それだけで防げるわけではありません。マルチや雨除けで雨滴の跳ね上がりを防ぐことと合わせて対策してください。

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まとめ
炭疽病の要点です。
見分け方
- 葉は円形病斑と同心輪紋、茎と実はへこんだ病斑
- 高湿度時に鮭肉色の粘質物(分生胞子堆)が出る
広がり方
- 水滴の飛沫で飛散
- 前作の残りと、支柱などの資材が次作の伝染源
条件
- 露地では6月から秋期に多い
- 窒素肥料の過用が発生を助長する
対策
- マルチや敷きわらで雨滴の跳ね上がりを防ぐ
- 窒素を効かせすぎない
- 発病部は袋で持ち出す。支柱も洗って片付ける
この病気は、環境を変えないと止まりません。 発病部を取り続けても、土から跳ね返る水が同じ条件を作り続けるからです。マルチを1枚敷くほうが、葉を100枚取るより効きます。
そして、この病気は毎年同じ場所で繰り返します。 前作の菌糸と、支柱に付いた分生子が残っているからです。片付けを済ませた畑は、翌年の発生がはっきり減ります。
雨上がりの朝、へこんだ病斑を見てください。 鮭肉色のねばりが見えたら、それが答えです。
参考