大根や小松菜の葉が、ごま粒ほどの小さな穴だらけになっている。近づくと、黒い小さな虫がノミのように跳ねて逃げる。
キスジノミハムシです。体長2mmほどの小さな虫ですが、本当の被害は地上ではなく地下にあります。幼虫が大根の根をかじり、収穫してみると表面に傷が走っているのです。
この記事では、岐阜県の資料をもとに、生態・被害の出方・秋まきでの守り方をまとめます。害虫全体の見分け方は家庭菜園の害虫図鑑を参照してください。
キスジノミハムシとは
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | コウチュウ目。アブラナ科のみに寄生する |
| 成虫の大きさ | 体長約2mm |
| 色・模様 | 黒色で、左右の上翅に黄色縦長の斑紋 |
| 動き | 後脚が発達し、ノミのように鋭く跳ねる |
| 加害する野菜 | 大根、白菜、キャベツ、小松菜などアブラナ科 |
岐阜県の資料は、「アブラナ科のみに寄生する」と明記しています。ナス科やウリ科には来ません。 逆に言えば、アブラナ科を作る限り、ほぼ必ず出会う虫です。
名前の「キスジ」は、黒い体に入る黄色いすじのことです。跳ねる前によく見ると、背中に2本の線が見えます。
被害は地上と地下の2か所
成虫|葉に小さな穴
同資料によると、成虫は葉を食害し、「1mm以下の円形ゴマ状の痕」を残します。
穴が小さく、数が多いのが特徴です。アオムシのように大きく食べるのではなく、ごまを振りまいたような跡になります。
とくに危ないのは発芽直後です。本葉が数枚しかない時期に葉を食われると、そのまま育たなくなります。
幼虫|大根の表面に網目状の傷
本当の問題はこちらです。
資料は、幼虫がアブラナ科植物の根部を食害し、「その痕は網目状に残り、いわゆる『なめり』状になる」と説明しています。さらに、「激しく食害されると、奇形となり肥大が抑制される」とし、「根部の食痕がわずかであっても商品価値を低下させる」としています。
| 被害 | 見え方 |
|---|---|
| 軽い | 大根の表面に茶色い線状の傷 |
| 中程度 | 網目状に傷が広がる |
| 激しい | 奇形になり、太らない |
抜いてみるまで分からないのが、この虫の厄介なところです。葉がきれいでも、地下では傷がついていることがあります。

似た食害との見分け
葉に穴があく害虫はほかにもいます。穴の大きさと形で切り分けます。
| 犯人 | 穴の特徴 | ほかの手がかり |
|---|---|---|
| キスジノミハムシ | 1mm以下の円形が多数 | 跳ねて逃げる小さな黒い虫 |
| アオムシ | 葉の縁から大きく食べる | 緑色の糞が残る |
| コナガ | 表皮を残してかすり状 | 細い幼虫が葉裏に |
| ダンゴムシ | 地際のやわらかい部分 | 落ち葉の下にいる |
「ごまを振ったような細かい穴」なら、まずこの虫を疑ってください。 穴が小さくて数が多いという組み合わせは、ほかの害虫では起きにくい見え方です。

発生の流れ
| 時期 | 状態 |
|---|---|
| 冬 | 成虫のまま越冬(土壌表面付近、雑草の株元、作物残渣) |
| 3月ごろ | 越冬世代の成虫が現れる(平坦地。高冷地は4月ごろ) |
| 春〜秋 | 年3〜5回発生。世代が混ざる |
| 産卵 | 根に近い土壌表面に長めの白い卵 |
数字も押さえておきます。
- 成虫の寿命は1〜4か月と長い
- 生涯産卵数は平均150〜200個。多い個体では600個以上
- 卵は3〜5日で孵化
- 幼虫期間は10〜20日、3齢を経て地表近くで蛹になる
- 蛹期間は3〜15日
成虫の寿命が長く、世代が混ざるため、資料は「発生消長は不明瞭になる」としています。「この時期だけ気をつければよい」という虫ではないということです。
条件
- 高温乾燥が続くと発生が多くなる
- 暖冬の場合、越冬成虫の生存率が高くなり、翌春の発生量は多くなる
- 畑に作物がないときは、周囲のナズナやキレハイヌガラシ等のアブラナ科雑草に寄生する
雑草が「待機場所」になっている点は、対策に直結します。
防ぎ方
岐阜県の資料が挙げている防除対策は3つです。
1. 除草を徹底する
「圃場周囲のアブラナ科雑草の除草を行う」とされています。
ナズナのようなアブラナ科の雑草が、作物のない時期の住処になります。 畑の周りだけでも刈っておくと、種まき時の飛び込みが減ります。
2. 防虫ネットで覆う
成虫が跳んで入るので、種をまいた直後から覆うのが基本です。
- 播種と同時にかける(発芽後では遅い)
- 裾を土でしっかり押さえる(跳ねて入る)
- 成虫は2mmほどなので、目合いの細かいものを選ぶ
ネットの選び方は防虫ネットの使い方にまとめています。
成虫は体長2mmほどと小さいため、目合いの細かいネットが要ります。数字が明記された製品を選んでください。
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3. シルバーマルチを敷く
資料は、「シルバーマルチの設置により被害を軽減できる」としています。また、「エンバクのすき込みが被害軽減に有効との報告がある」とも記載されています。
シルバーマルチは、アブラムシ対策としても使える資材です。反射資材の効果はモザイク病の原因と対策でも触れています。
シルバーマルチは畝の幅に合わせて選びます。端を土で押さえる余裕を見た幅にすると、風でめくれません。
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秋まきで気をつけること
秋の大根・白菜は、まいた直後が勝負です。
| タイミング | やること |
|---|---|
| 播種前 | 周囲のアブラナ科雑草を刈る |
| 播種と同時 | ネットをかけ、裾を押さえる |
| 発芽後 | 葉の穴を数える。増えていれば裾を点検 |
| 生育中 | ネットを外す作業は最小限に |
| 収穫後 | 残渣を畑に残さない(成虫の越冬場所になる) |
収穫後の片付けが、翌年の発生量に効きます。 資料にあるとおり、この虫は作物残渣で成虫のまま越冬します。抜いた葉をそのまま置いておくと、そこで冬を越されます。
ネットを外す回数も抑えたいところです。 収穫や間引きのたびに開けると、その都度入られます。間引きはまとめて済ませる、収穫は必要な分だけ、と決めておくと開ける回数が減ります。

よくある質問
Q. 葉に小さな穴がたくさんあいています。放置しても大丈夫ですか?
発芽直後の苗では危険です。本葉が数枚の時期に食害されると育たなくなります。また、地上の被害が軽くても、地下で幼虫が根をかじっていることがあります。
Q. 大根の表面の茶色い傷は何ですか?
キスジノミハムシの幼虫による食痕の可能性があります。岐阜県の資料では、痕は網目状に残り「なめり」状になるとされ、食痕がわずかであっても商品価値を低下させるとしています。皮をむけば食べられます。
Q. いつ防虫ネットをかければいいですか?
播種と同時です。発芽してからでは、すでに成虫が入り込んでいることがあります。裾を土でしっかり押さえてください。後脚が発達していて、よく跳ねます。
Q. ほかの野菜にもつきますか?
アブラナ科のみに寄生するとされています。トマトやきゅうりには来ません。ただし畑に作物がないときは、周囲のナズナなどアブラナ科の雑草で生き延びます。
見つけたときにできること
すでに葉に穴があいている場合でも、打てる手はあります。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 発芽直後 | 最優先でネットをかける。 間に合えば挽回できる |
| 本葉が展開後 | 多少の穴は許容。根への被害を抑える段階へ |
| 株元に虫が多い | シルバーマルチを敷き、株元の環境を変える |
| 収穫期 | 抜いて確認する。 傷は皮をむけば食べられる |
成虫を完全に捕まえるのは現実的ではありません。 よく跳ね、小さく、数も多いためです。捕殺より、入れない・寄せないほうに労力を割くのが結局は早く済みます。
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まとめ
キスジノミハムシ対策の要点です。
正体
- 体長約2mm。黒色に黄色の縦すじ。ノミのように跳ねる
- アブラナ科のみに寄生する
被害
- 成虫は葉に1mm以下の円形の穴を多数
- 幼虫は根を食害し、網目状の傷(なめり状)を残す
- わずかな食痕でも商品価値が落ちる
生態
- 年3〜5回発生。成虫のまま越冬(残渣・雑草の株元)
- 成虫の寿命は1〜4か月と長く、発生消長は不明瞭
- 高温乾燥で多発。暖冬の翌春は増える
対策
- 周囲のアブラナ科雑草を除草する
- 播種と同時に防虫ネット。裾を押さえる
- シルバーマルチで被害を軽減
- 収穫後の残渣を残さない
秋まきは、種をまいた日にネットをかけてください。 それが最も効く一手です。
参考