キャベツや小松菜の葉を裏返すと、白くかすれた部分が点々と残っている。 穴は開いていないのに、光にかざすと薄い膜だけになっている。

これはコナガの幼虫が、葉の裏側から表皮を残して食べた跡です。体長1cmほどの緑色の幼虫が、葉裏に張りついています。

この記事では、食べ跡の見分け方、増える時期、そして防虫ネットの目合いで被害がどこまで変わるかを、県の試験場と農研機構の試験結果からまとめます。

葉に残るかすり跡の見分け方

被害の特徴は、穴が開かないことです。

見え方 何が起きているか
葉が白くかすれる 裏から食べ、表皮を残している
光にかざすと透ける 薄皮だけになった部分
進むと穴になる 残った表皮が乾いて破れる
葉裏に細い緑の幼虫 体長1cm前後。触ると激しく動く

モンシロチョウの幼虫(アオムシ)は葉を丸ごと食べて大きな穴を開けます。かすり状に白く抜けるのは別の虫だと考えてください。

幼虫は驚くと糸を吐いて葉からぶら下がります。 葉を軽くゆすったとき、細い糸で垂れ下がる虫がいれば、ほぼこれです。

Underside of a green cabbage leaf showing pale translucent feeding scars where only the upper epider

いつ増えるのか

和歌山県農業試験場の井口雅裕氏による報告(2021年)は、この虫を「古くからアブラナ科野菜の重要害虫」と位置づけたうえで、発生のしかたをこう説明しています。

暖地では一般的に春から初夏にかけて発生のピークがみられ、夏季に著しく減少し、秋季は少発生で経過する。若しくは秋季にも多発して春と秋の二山型消長を示す

実際に和歌山市でフェロモントラップを使って調べた結果でも、7〜8月は少なく経過し、9月以降または10月以降に再び増加しています。

つまり、真夏よりも春と秋のほうが危ないということです。秋まきの葉物を育てる家庭菜園では、9月の播種直後がいちばん気を抜けない時期になります。

発生源は身近な畑にある

同じ報告では、5月下旬の春ダイコン栽培ほ場を調べたところ、5ほ場合計100株で幼虫と蛹が計163頭(平均1.63株あたり) 見つかっています。

収穫が終わって放置されたアブラナ科の株は、次の作を襲う虫の供給源になります。 抜き取りを先延ばしにせず、株ごと畑の外へ出してください。

残った株は、地際で切るだけでは足りません。切り株から出てくるわき芽にも幼虫は移り、そこで世代を重ねます。収穫が終わった畝は、根ごと引き抜いて片づけるところまでを一区切りと考えてください。近所の畑や家庭菜園で同じ科の野菜が作られていれば、そちらからも成虫は飛んできます。自分の畑だけを完璧にしても発生はゼロにならない、という前提で対策を組み立てるほうが現実的です。

防虫ネットの目合いで被害はどう変わるか

同じ和歌山県の報告には、目合いを変えて比べた試験があります。家庭菜園にそのまま応用できる数字なので、順に見ていきます。

室内実験|成虫は2mmの網を通り抜ける

ネットを張った容器から成虫が脱出するかを調べた結果です。

目合い 供試 脱出 脱出率
1mm 30頭 0頭 0%
2mm 30頭 5頭 16.7%

2mmでは、6頭に1頭が通り抜けています。 一方、1mmなら1頭も出ませんでした。

ほ場での被害株率

施設の開口部にネットを張り、コマツナの被害を10月28日に調べた結果です。

区 被害株率
無処理 32.1%
2mmネット 8.5%
1mmネット 0%

1mmを張った区は、収穫直前の11月20日まで被害株率0%のままでした。フェロモントラップの誘殺数でも、2mm区は毎回1〜32頭が捕れたのに対し、1mm区はまったく誘殺されていません。

目合いを1mm以下にする。 家庭菜園で効かせるなら、まずここです。ネットの張り方は防虫ネットの使い方にまとめています。

A row of komatsuna seedlings covered by a fine mesh insect net stretched over hoops with the edges b

さらに細かい0.6mmだとどうなるか

農研機構が中山間地域の無農薬栽培向けに、0.6mm目合いのネットでコマツナを覆って調べた結果もあります。侵入率は虫によってはっきり分かれました。

侵入の程度 虫
完全に阻止 モンシロチョウ、ハイマダラノメイガ、ダイコンハムシ成虫、ナガメ、ウワバ類、ハモグリバエ類、カブラハバチ類
1%以下 キスジノミハムシ、ダイコンハムシ幼虫
1〜5% アブラムシ類、この虫の幼虫
10%以上 ヨトウ類幼虫
阻止できない アザミウマ類、ハダニ類

0.6mmでも、ごくわずかに入ります。 そして同じ資料は、次の2点を注意点として挙げています。

  • 「防虫ネットに作物が接するようになると、キスジノミハムシやコナガの侵入が増え」る
  • 「わずかに侵入した害虫が内部で増殖あるいは成長し、大きな被害を及ぼすことがある」

ネットは張って終わりではありません。 葉が育って内側から網に触れはじめたら、支柱を足して持ち上げてください。葉物の食害はキスジノミハムシの対策でも同じ注意が要ります。

薬剤が効きにくくなる理由

この虫は、薬が効かなくなりやすいことで知られています。

和歌山県の報告は「薬剤抵抗性が極めて発達しやすい害虫」と明記し、実際に2013年頃からジアミド剤に対する感受性が低下した個体群が日本各地で見つかっていたと記しています。研究開始時点の和歌山市でも、基幹防除薬剤を散布しても防除できない事例が認められていました。

対策として示されているのは次の考え方です。

作用機構が異なる数種の薬剤のローテーション使用を基本とし、そのうえで、他の複数の防除技術や方法を組み合わせることが有効

同じ薬を続けて使わない。そして薬だけに頼らない。 家庭菜園なら、ネットと手取りを主役にして、薬は補助に回すほうが結果的にうまくいきます。無農薬でできる工夫は農薬を使わない家庭菜園の害虫対策にまとめました。

家庭菜園でやること

優先順位をつけると、こうなります。

順位 やること 理由
1 播種・定植と同時に1mm以下のネット 産卵させない。0%まで落ちた
2 葉が網に触れたら支柱を足す 接触すると侵入が増える
3 収穫後の株をすぐ抜く 次の作の発生源になる
4 葉裏を見て手で取る 糸を吐いて垂れ下がる
5 薬は系統を替えて使う 同一系統の連用で効かなくなる

いちばん効くのは、虫が来る前にネットをかけることです。 芽が出てから慌ててかけても、すでに卵が産まれています。

葉物の栽培そのものは小松菜をプランターで育てる方法やキャベツのプランター栽培を参考にしてください。

Hands lifting an insect net to check komatsuna leaves in a home vegetable garden, additional support
Comparison of two small komatsuna plots side by side, one with damaged pale leaves and one with clea

よくある質問

Q. 穴が開いていないのに白くかすれるのはなぜですか?

幼虫が葉の裏側から食べ、表側の薄い表皮を残すためです。残った表皮が乾いて破れると、あとから穴になります。かすり状の白い抜けを見つけた時点で、葉裏を確認してください。

Q. 防虫ネットは何mmを選べばいいですか?

和歌山県の試験では、目合い1mmのネットで成虫の脱出率0%、ほ場の被害株率も0%でした。2mmでは脱出率16.7%、被害株率8.5%です。1mm以下を選んでください。

目合いは商品ページに必ず記載があります。1mm以下のものを選び、畝の長さより余裕のある幅を用意してください。

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Q. 0.6mmならもっと安全ですか?

農研機構の試験では0.6mmでも幼虫が1〜5%侵入しています。アザミウマ類やハダニ類は阻止できません。また目合いが細かいほど風通しが落ちるため、夏場は内部の温度に注意が要ります。

葉がネットに触れると侵入が増えるため、支柱を足して持ち上げられるようにしておくと安心です。トンネル用の曲がる支柱が扱いやすくなります。

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Q. 市販の薬を使えば解決しますか?

この虫は薬剤抵抗性が極めて発達しやすく、2013年頃からジアミド剤への感受性低下が各地で確認されています。作用機構の異なる薬をローテーションし、ネットや手取りと組み合わせてください。

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まとめ

  • 被害は穴ではなく、白いかすり跡。葉裏に緑の幼虫が張りつく
  • 暖地では春から初夏がピーク、秋にも増える二山型。真夏は減る
  • 目合い1mmのネットで被害株率0%(無処理32.1%、2mm 8.5%)
  • 0.6mmでも幼虫は1〜5%入る。葉がネットに触れると侵入が増える
  • 薬剤抵抗性が極めて発達しやすい。 系統を替え、薬だけに頼らない

種をまく日にネットをかける。 これだけで、ほとんどの被害は起きません。


参考