朝は元気なのに昼になるとしおれる。水をやっても翌日また同じ。肥料の問題でも水切れでもないのに、株だけが弱っていく。
思い切って抜いてみると、根に小さなこぶが数珠のように並んでいます。 これはセンチュウ(線虫)の一種、ネコブセンチュウの被害です。
この記事では、根のこぶの見分け方と、農薬を使わずに密度を下げる方法を、県の資料と農研機構の知見からまとめます。
根にできるこぶを見分ける
奈良県の資料は、この虫の被害をこう説明しています。
- 根に無数のコブが現れ、数珠のようにコブが膨れる
- 地上部はしおれ、収量低下や枯死も生じる
- 根菜類は奇形や枝分かれが発生する
地上部だけを見ていても分かりません。 生育が悪い株を1本抜いて、根を洗って確かめるのがいちばん確実です。
根こぶ病との違い
アブラナ科に出る根こぶ病も根がふくらみますが、原因も対象作物もまったく違います。
| ネコブセンチュウ | 根こぶ病 | |
|---|---|---|
| 原因 | 線虫(動物) | カビの仲間(原生生物) |
| こぶの形 | 細い根に小さなこぶが数珠状 | 主根が大きく不定形にふくらむ |
| かかる野菜 | 500種以上。ナス科・ウリ科で特に大きい | アブラナ科のみ |
| 効く対策 | 対抗植物・輪作・土の加熱 | pH矯正・排水・抵抗性品種 |
アブラナ科でこぶが出たなら根こぶ病の見分け方と対策を、トマトやきゅうりで出たならこの記事を見てください。

被害が出やすい野菜
奈良県の資料によれば、この虫は500種以上の植物に寄生します。そのうえで、被害が大きいのは次の作物です。
| 科 | 野菜 |
|---|---|
| ナス科 | ナス、トマト、ピーマン |
| ウリ科 | キュウリ、メロン、スイカ |
家庭菜園の主力がそのまま並びます。 しかも、これらは同じ場所で作りやすい野菜でもあります。
同じ畝で同じ科を繰り返すほど、土の中の密度は上がります。 作付けの回し方は連作障害を避ける畝のローテーションにまとめました。
被害がはっきり分かるのは、株が大きくなって水を必要とする夏です。根の一部がこぶになっていても、苗のうちは吸い上げが足りているため気づきません。実がつきはじめ、一日に必要な水の量が増えたところで、吸い上げが追いつかなくなって昼にしおれる。この時間差があるため、原因を水やりや暑さだと思い込んでしまいがちです。しおれが出る前に、生育の遅れている株を一本抜いて根を確かめる習慣をつけておくと、次の作の対策に間に合います。買ってきた苗に付いてくることもあるので、植え付け前にポットから抜いて根鉢の表面を見ておくと安心です。
土にいるかどうかを確かめる
奈良県の資料には、ホウセンカを使った簡単な検定法が示されています。
- 調べたい場所にホウセンカを植える
- 約30〜40日後に根を掘り出す
- こぶの付き具合を調べる
畑を休ませる前に一度やっておくと、対策が要るかどうかを判断できます。 何もいなければ、輪作だけで十分です。
対抗植物で密度を下げる
奈良県の資料は、「栽培することによってセンチュウの密度を減らす」対抗植物として次を挙げています。
| 科 | 植物 |
|---|---|
| キク科 | マリーゴールド |
| マメ科 | クロタラリア |
| イネ科 | ギニアグラス |
栽培時期については6月〜10月に栽培すると効果的とされています。クロタラリアはすき込むことで緑肥としての効果も期待できます。
家庭菜園ならマリーゴールドが扱いやすいでしょう。株間が空く場所に植えておけば、見た目も損ないません。
ただし、植えるだけで即座に効くわけではありません。 一定期間しっかり育て、密度が下がるのを待つ作業です。夏に畝を1本空けられるなら、そこに集中して植えるのが現実的です。

太陽熱で土を消毒する
もうひとつが、夏の日射で土を加熱する方法です。農研機構の知見をもとに、家庭菜園向けに整理します。
効果が出る条件
農研機構によれば、必要な地中温度は55〜60度以上。 この温度に達すれば、ネコブセンチュウや根腐れセンチュウのほか、ナス半身萎凋病、ウリ類つる割れ病、イチゴ萎黄病、根こぶ病などにも効果があります。
処理期間は標準で3週間程度。適期は梅雨明けの7月中・下旬から9月上旬です。
手順
| 順 | やること | 要点 |
|---|---|---|
| 1 | 耕起して畝を立てる | 土づくりは先に済ませておく |
| 2 | たっぷり灌水する | 圃場容水量以上。畝が沈む程度 |
| 3 | 透明フィルムで覆う | 端を土に埋めて密閉。破れ目はふさぐ |
| 4 | 3週間そのまま置く | 途中で開けない |
透明であることが重要です。 黒やシルバーのマルチは光を通さないため、地温が上がりません。
石灰窒素を10アールあたり100kg(1㎡あたり100g) 施用すると、1〜2℃の地温上昇が期待できるとされています。
効く深さと、処理後の注意
太陽熱が届くのは浅い層です。農研機構の資料では深さ5cm程度までの雑草の種を殺すとされ、トマト青枯病のように地中35cmにいる病原菌には効果が弱いと説明されています。
そして、処理後の耕し方に落とし穴があります。 農研機構の伊藤陽子上級研究員は次のように指摘しています。
あまり深く掘り起こしてしまうと、太陽熱消毒で温度が十分に上昇しなかった中・深層で生き残った雑草の種や病原菌を作土層へ持ち上げてしまう
せっかく処理した表層に、下から生きた病原菌を混ぜ返してしまうわけです。処理後は「できるだけ浅めに耕転するように」と助言されています。
深く耕すのは処理の前。処理のあとは浅く。 ここを逆にしないでください。

プランターの場合
鉢やプランターなら、土を替えてしまうのがいちばん早い方法です。
被害が出た土を再利用するなら、夏に黒いポリ袋へ入れて湿らせ、日なたに置いて加熱するやり方があります。量が少ないぶん温度は上がりやすくなります。
再生の手順はプランターの土は再利用できる?にまとめました。
やってはいけないこと
| やりがち | なぜ良くないか |
|---|---|
| 被害株を畑に埋める | 根のこぶに次世代がいる。畑の外へ |
| 同じ場所でナス科を繰り返す | 密度が上がり続ける |
| 黒マルチで太陽熱処理 | 光を通さず地温が上がらない |
| 処理後に深く耕す | 下層の病原菌を表層へ戻す |
抜いた株の処分がいちばん見落とされます。 根ごと回収して、畑の外で処分してください。

よくある質問
Q. 根のこぶは根粒菌とは違うのですか?
違います。マメ科の根につく根粒は丸い粒が根の側面につきますが、この虫のこぶは根そのものが数珠状にふくらみます。マメ科以外の野菜で根がふくらんでいれば、根粒ではありません。
Q. マリーゴールドを植えるだけで直りますか?
対抗植物は密度を下げる手段で、即効性のある駆除ではありません。6月〜10月にしっかり栽培期間をとることが前提です。輪作や太陽熱処理と組み合わせてください。
対抗植物として使うならフレンチマリーゴールドが一般的です。空いた畝にまとめてまく前提なら、粒数の多い袋のほうが割安になります。
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Q. 太陽熱消毒は何度必要ですか?
農研機構の資料では、必要な地中温度は55〜60度以上とされています。透明フィルムを隙間なく密閉し、標準で3週間程度置きます。梅雨明けの7月中・下旬から9月上旬が適期です。
地温を上げる目的なので、黒やシルバーではなく透明を選んでください。畝幅より広いものを買い、端を土に埋められるようにします。
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Q. 効果がある深さはどれくらいですか?
太陽熱が十分に届くのは浅い層です。雑草の種では深さ5cm程度までとされ、地中35cmにいるトマト青枯病の菌には効果が弱いとされています。処理後は浅く耕してください。
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まとめ
- 根に数珠状の小さなこぶ。抜いて根を見るまで分からない
- 500種以上に寄生。 ナス科・ウリ科で被害が大きい
- ホウセンカを30〜40日育てて根を見ると、いるかどうかが分かる
- 対抗植物(マリーゴールド・クロタラリア・ギニアグラス)を6〜10月に栽培
- 太陽熱処理は地中55〜60度以上を3週間。 透明フィルムで密閉
- 処理後は浅く耕す。 深く耕すと下層の病原菌を戻してしまう
抜いた株を畑に残さない。 これがいちばん手軽で、いちばん効く一手です。
参考