掘り上げたじゃがいもの表面に、かさぶたのようなざらついた斑点が広がっている。皮をむけば中は無事で、食べられないわけではない。

それでも、次の年もまた出ます。 しかも、よかれと思ってやったことが原因かもしれません。

この記事では、北海道の馬鈴しょそうか病研究班の資料をもとに、なぜ石灰のまきすぎが裏目に出るのかを解説します。

どんな病気か

研究班の資料は、この病気をこう定義しています。

ジャガイモそうか病は、ストレプトミセス(Streptomyces)属放線菌によって起こるばれいしょ塊茎(いも)の病害である

被害の出方も明確です。

塊茎表面にあばた状の病斑を多数生じるので、食用あるいは加工用ばれいしょとしての商品価値を著しく損なう

さらに、発病程度が高まるにつれて塊茎内のでんぷん価が減少するとされています。

見た目だけの問題ではありません。 中身の質も落ちます。

原因はカビでも細菌でもない

病原 放線菌(Streptomyces属)
侵す場所 いもの表面だけ。 葉や茎には出ない
食べられるか 皮を厚くむけば可食。ただし味と質は落ちる
伝染 土の中に残る。 種いもからも持ち込まれる

地上部を見ていても分かりません。 掘るまで気づけないのが、この病気の厄介なところです。

病斑の形にはいくつか型があります。表面が盛り上がる隆起型、くぼむ陥没型、網目状に広がる網目型。どれも同じ病気で、土の条件や菌の種類によって出方が変わります。見た目が違っても対策は同じだと考えてください。

石灰を入れすぎてはいけない

ここがいちばん重要な点です。

多くの野菜は、酸性に傾いた土を石灰で中和してから植えます。じゃがいもでそれをやると、そうか病が増えます。

研究班の資料が示す対策は、まったく逆方向です。

土壌酸度調整資材を全面施用し、深さ10cmまで土壌混和して、土壌をpH5.0に保つと、本病の発病を抑制することができる

pH5.0。 これは明確な酸性です。

作業 そうか病への影響
苦土石灰・消石灰をまく pHが上がり、発病が増える
酸性のまま植える 発病が抑えられる
草木灰を入れる アルカリ性なので同じく不利

じゃがいもを植える畝には、石灰を入れない。 これだけで変わります。

この性質は、ほかの野菜と逆になります。多くの作物は酸性に弱く、植え付け前の石灰が欠かせません。じゃがいもだけは例外だと覚えておくと、畝ごとの作業を分けやすくなります。同じ畑のなかで、石灰を入れる畝と入れない畝をつくることになります。

畝ごとに酸度が違うことを確かめるには、測る道具が要ります。差し込むだけの簡易型でも傾向はつかめます。

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石灰資材の性質は苦土石灰vs消石灰vs有機石灰に、酸度の測り方は土壌pHの測り方と調整にまとめています。

前の作の石灰も効いている

その年にまかなくても、前年の石灰は残っています。 石灰を入れた直後の畝にじゃがいもを植えると、同じことが起きます。

輪作の順番で、石灰を入れる作物の次にじゃがいもを置かない。 作付けの回し方は連作障害を避ける畝のローテーションを参照してください。

水やりで抑える

もうひとつ、効果が確かめられている方法があります。

研究班の資料によれば、酸度調整とかん水を併用すると、それぞれの単独より安定した高い防除効果が得られるとされています。具体的な指針も示されています。

  • 萌芽期に一度は25mm以上の多量かん水を行うことが有効
  • かん水期間は7月末までで十分

新しいいもができる時期に、土を乾かさない。 これが要点です。

家庭菜園なら、芽が出そろった頃から、いもが太る時期にかけて水を切らさないこと。 プランター栽培の管理はプランターでじゃがいも栽培にまとめています。

乾湿の差が大きいほど発病しやすくなる、という関係もあります。雨が降ったあと一気に乾かすより、ある程度の湿り気を保つほうが安定します。マルチを張って水分の変動を抑えるのも、同じ方向の手当てです。

堆肥の入れすぎにも注意

意外な指摘があります。研究班の資料は、有機物施用についてこう述べています。

強塩基性を示すピートモスは例外として、通常の腐熟過程を経て製造される堆肥等は、含まれる腐植酸が土壌中のアルミニウムと結合することで、発病を助長する可能性があると考えられる、としています。

「よい土にしよう」として堆肥を厚く入れると、裏目に出ることがあるということです。

入れるもの じゃがいもの畝での扱い
石灰資材 入れない
完熟堆肥 控えめに。 入れすぎない
未熟な有機物 避ける
化成肥料 規定量で

堆肥は「多ければよい」ものではない、という点はこの病気がよく示しています。

天地返しは効かなかった

同じ資料には、対策として試して効果が出なかった方法も記録されています。

圃場における天地返しは、下層土のy1が極めて小さく、また耕起深よりさらに10cmほど下まで発病に十分な病原菌密度を有することから、発病軽減効果を得ることができなかった

病原菌は、耕した深さよりさらに下まで十分な密度でいる。 だから上下を入れ替えても減りません。

深く掘る労力に見合わない、ということです。

天地返しそのものは別の目的には有効で、やり方は天地返しのやり方にまとめていますが、この病気の対策としては期待できないということです。

家庭菜園でやること

優先順位をつけるとこうなります。

順位 やること
1 じゃがいもの畝に石灰を入れない
2 種いもは市販の検定済みのものを使う(自家採種のいもを使わない)
3 いもが太る時期に水を切らさない
4 堆肥を入れすぎない
5 連作を避け、豆類を挟む

研究班の資料でも、輪作体系の中に豆類を用いると被害が少ないこと、エン麦などの緑肥作物の鋤込みで発病が軽減できた事例が挙げられています。

台所のじゃがいもを種いもにしない。 芽が出たからと植えると、病原菌ごと畑に持ち込むことになります。

食用として売られているいもは、病害虫の検定を受けていません。見た目がきれいでも、表面に菌がついている可能性があります。種いもとして流通しているものは検定を通っているので、毎年そちらを買い直すのが確実です。

植え付け用として売られているものを選んでください。品種名と検定の表示があるものが確実です。

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よくある質問

Q. そうか病のじゃがいもは食べられますか?

病斑はいもの表面に出るもので、皮を厚くむけば食べられます。ただし発病程度が高まるにつれて塊茎内のでんぷん価が減少するとされ、味と質は落ちます。

Q. なぜ石灰を入れてはいけないのですか?

この病気は土が中性に近いほど発生しやすくなるためです。研究班の資料では、土壌をpH5.0に保つと発病を抑制できるとされています。石灰資材はpHを上げる方向に働くので逆効果になります。

Q. 水やりで防げるのですか?

酸度調整と組み合わせると、単独より安定した効果が得られるとされています。萌芽期に一度は25mm以上の多量かん水を行うことが有効で、かん水期間は7月末までで十分とされています。

Q. 天地返しをすれば減りますか?

研究では発病軽減効果が得られませんでした。病原菌が耕起深よりさらに10cmほど下まで十分な密度で存在するためです。土を入れ替えても菌の層が入れ替わるだけになります。

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まとめ

  • 原因は放線菌。いもの表面にあばた状の病斑が出る
  • でんぷん価も下がる。 見た目だけの問題ではない
  • 土が中性に近いほど増える。 石灰を入れないこと
  • 研究ではpH5.0に保つと発病を抑制できるとされる
  • 萌芽期に25mm以上の多量かん水が有効。かん水期間は7月末まで
  • 堆肥の入れすぎも発病を助長する可能性がある
  • 天地返しでは減らない
  • 種いもは検定済みのものを使う

じゃがいもの畝だけは、石灰を入れない。 まずここを変えてください。


参考