同じ畝で何年も野菜を作っていると、だんだん育ちが悪くなる。堆肥も肥料も入れているのに、去年より小さい。

土の「層」が原因かもしれません。 上だけを毎年耕していると、その下に固い層ができ、上の層には病原菌や有害なセンチュウが溜まっていきます。

天地返しは、上の土と下の土を入れ替えてしまう作業です。この記事では、寒起こしとの違い、深さと時期、そしてやったあとに必要になることをまとめます。

天地返しとは何か

JAさいたまの解説では、天地返しを次のように説明しています。

表面から30cm程度の上層土とその下60cm程度までの下層土を入れ替える土壌改良法

なぜ入れ替えるのか。同じ解説はこう述べています。

  • 上層土には養分が蓄積し、下層土は固く根が入りにくくなっていく
  • 上層土には土壌病原菌や有害センチュウが増えてくる
  • こうした畑では連作障害が発生し、野菜の生育が悪くなる

上と下を入れ替えれば、この状態がまとめて解消します。 溜まった菌は深く埋められ、固まった層は掘り崩されます。

何が起きるか

変化 効果
上層の菌・センチュウが深く埋まる 表層の密度が下がる
下層の土が空気にさらされる 好気性微生物が活性化し、有機物の分解が進む
耕盤を崩す 根が深く入れるようになる
深層の害虫・雑草の根が寒気にさらされる 冬に行えば死滅が期待できる

土の中で越冬する虫の話はコガネムシ幼虫の対策でも触れています。

Cross section diagram style view of a garden bed with dark topsoil layer above a pale compacted subs

寒起こしとの違い

冬の土づくりには「寒起こし」もあります。混同されがちですが、別の作業です。

寒起こし 天地返し
やること 粗く掘り起こして塊のまま寒気にさらす 上層土と下層土を入れ替える
深さ 20〜30cm 上層30cm/下層60cmまで
時期 厳寒期の1、2月 作業の少ない冬のうち
ねらい 土塊を崩し、害虫を凍らせる 層の入れ替え・連作障害対策
手間 半日〜1日 数日がかり

JAさいたまは寒起こしを「菜園を20〜30cm粗く掘り起こし、土の塊を寒気にさらす作業」と説明し、その効果をこう述べています。

土塊に含まれる水が夜間には寒さで凍結し、日中には溶けて乾燥します。この繰り返しで土塊が次第に崩れてふかふかの土になります

土中の害虫が寒さで死滅する効果も期待できるとされています。

毎年やるのは寒起こし。天地返しは数年に一度。 この使い分けが現実的です。

やり方

区画を細長く区切り、端から順に送っていきます。

手順

  1. 溝を1本掘る|幅40〜50cm、深さ30cm程度。掘った土は区画の外に山にして置く
  2. 溝の底をさらに掘る|下層の土を、隣に掘る予定の位置へ移す
  3. 隣の区画を掘る|上層土を、いま空いた溝の底へ落とす
  4. 下層土を上に戻す|手順2で出した土を上に載せる
  5. これを端まで繰り返す|最後の溝には、最初に外へ出した土を入れる

上下が入れ替わりながら、区画全体が1本ずつ送られていきます。

作業量は、見た目よりずっと多くなります。深さ60cmまで掘るということは、1平方メートルあたり0.6立方メートル近い土を動かす計算です。土は水を含むと1立方メートルで1トンを超えます。家庭菜園の2〜3平方メートルでも、体感としては一日仕事。無理をせず、区画を区切って何日かに分けてください。掘った土を仮置きする場所も先に決めておかないと、途中で行き場がなくなります。

そもそも自分の畑に固い層があるのかどうかは、掘る前に確かめられます。支柱や細い鉄棒を垂直に押し込み、急に抵抗が強くなる深さを何か所かで測ってください。どこも同じ深さで止まるなら、そこが耕盤です。20〜25cmあたりで一様に止まるようなら、天地返しを検討する価値があります。

時期

冬です。 作業する人が動きやすく、畑が空いている時期であること、そして下から上がってきた土を寒気にさらせることが理由です。

冬の畑仕事の服装は冬の畑仕事の服装にまとめました。

A person digging a trench across a bare winter vegetable plot with soil piled to one side, breath vi

終わったあとに必要なこと

ここが抜けると失敗します。

上に出てきた下層土は、長く光にも空気にも触れていなかった土です。有機物が少なく、野菜を育てるには痩せています。

やること 理由
堆肥をたっぷり入れる 上に来た土に有機物がない
すぐ植えない なじむまで時間が要る
必要なら石灰で酸度を調整 下層土は酸度が違うことがある

JAやヤンマーの解説でも、天地返しの効果として有機物が下層にすき込まれて分解が促進されること、下層の土が上層に上がって空気にさらされ、好気性微生物が活性化することが挙げられています。微生物が働くには、材料である有機物が要ります。

冬に天地返し、春の作付けまでに堆肥を入れてならす。 この間隔を空けられるのも、冬に行う理由です。

入れる堆肥の量は、通常の土づくりより多めに見積もってください。上に来た土には、これまで積み重ねてきた有機物がまったく含まれていません。ゼロからつくり直すつもりで、完熟した堆肥をしっかり入れます。未熟なものを大量に入れると、分解の過程で根が傷むため、そこは急がないでください。

土づくりの基本は家庭菜園の土づくり入門を、春の準備は春の畑の土起こしと畝立て準備を参照してください。

毎年やる必要はあるか

ありません。 むしろ、毎年やるべきではない作業です。

  • 重労働。家庭菜園の規模でも数日かかる
  • 痩せた土が上に来るため、回復に手間と資材が要る
  • 根が深く入る層まで崩すと、構造が落ち着くのに時間がかかる

「天地返しはしなくてよい」とする考え方も園芸の現場にはあります。毎年の土づくりは堆肥と輪作で足り、天地返しは行き詰まったときの手段という位置づけです。

やるかどうかの判断

状況 判断
同じ科を何年も同じ畝で作った 検討する価値あり
根が浅くしか張らない、水がたまる 耕盤の可能性。検討する
土壌病害が出た 有効な手のひとつ
毎年ふつうに収穫できている 不要
プランター・鉢 不要。土を替えるほうが早い

まずは輪作で回避できないかを考えてください。 作付けの回し方は連作障害を避ける畝のローテーションにまとめています。

A well established home vegetable garden in early spring with dark crumbly soil freshly raked into l
Close up of two handfuls of soil held side by side, one dark and crumbly with organic matter, the ot

よくある質問

Q. 寒起こしと天地返しは同じものですか?

違います。寒起こしは20〜30cm粗く掘り起こして土塊を寒気にさらす作業で、厳寒期の1、2月に行います。天地返しは上層土と下層土を入れ替える作業で、規模も手間も別物です。

深く掘る作業では、先の尖った剣先タイプが土に入ります。柄の長さが体格に合っているかを確かめてから選んでください。

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Q. どのくらいの深さを入れ替えるのですか?

JAさいたまの解説では、表面から30cm程度の上層土と、その下60cm程度までの下層土を入れ替えるとされています。家庭菜園では上層30cmと、その下30cmほどを入れ替える規模が現実的です。

Q. やったあとすぐ野菜を植えてもいいですか?

避けてください。上に来た下層土は有機物が少なく痩せています。堆肥をたっぷり入れ、なじむまで時間を置いてから植え付けてください。冬に行い、春の作付けに合わせるのが定番です。

未熟なものを大量に入れると根を傷めます。完熟と明記されたものを選び、面積から必要量を計算して購入してください。

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Q. プランターでもやったほうがいいですか?

必要ありません。容量が限られている鉢やプランターは、土を入れ替えるか再生するほうが早く確実です。

▼ 有機液体肥料で野菜をもっと元気に
土の力を引き出す、菌根菌のチカラ【生きてる肥料】

まとめ

  • 天地返しは上層土と下層土を入れ替える土壌改良
  • ねらいは表層に溜まった病原菌・センチュウを埋め、耕盤を崩すこと
  • 寒起こし(20〜30cm・1〜2月)とは別の作業。 毎年やるのは寒起こし
  • 時期は冬。 下から出た土を寒気にさらせる
  • 終わったら堆肥をたっぷり。 上に来た土は痩せている
  • 毎年やる作業ではない。 まず輪作で回避できないか考える

普通に収穫できているなら、やらなくていい作業です。 行き詰まったときの切り札として覚えておいてください。


参考