白菜の外葉が、いつのまにか白茶けて枯れている。株元をのぞくと、葉の付け根がどろどろに溶けて、鼻をつく臭いがする。

これは軟腐病です。カビではなく細菌が起こす病気で、いったん広がると株ごと倒れます。

この記事では、症状の見分け方と、細菌が入り込む「傷」をどう減らすかを、県の病害虫防除所と専門資料からまとめます。

症状の見分け方

島根県病害虫防除所は、この病気の症状をこう説明しています。

地面に接する葉に水浸状の小斑点ができ、これがしだいに広がり外葉は白茶けて枯れる

さらに進むと、株全体が軟化腐敗してどろどろになり、悪臭がするとされています。

全国農村教育協会の資料も同様に、「組織が水浸状になり、ついで褐変する。さらに症状が進むと、軟化、腐敗し、特有の悪臭を放つ」と記しています。

他の病気と区別する

特徴 この病気 カビによる病気
臭い 強い悪臭がする ふつう臭わない
質感 どろどろに溶ける 乾いて枯れる、粉をふく
表面 かびは生えない 白・灰色などのかびが出る
始まる場所 地面に接する葉、株元 葉の上部や全体

臭いがいちばん分かりやすい目印です。 溶けた部分に鼻を近づけて強く臭うなら、まずこれだと考えてください。

進み方の速さも手がかりになります。カビによる病気は、斑点が広がるまでに何日もかかるのがふつうです。この病気は、前日まで何ともなかった株が翌朝には外葉ごと倒れていることがあります。朝と夕方で見え方が変わるほど進むなら、細菌を疑ってください。

発生する場所にも傾向があります。島根県の説明にあるとおり、地面に接する葉から始まることが多く、株の上のほうから先に傷むことはまれです。白菜やキャベツなら外葉の付け根、大根なら地際の首の部分。かがんで株元をのぞく習慣がないと、気づいたときには結球部まで進んでいます。

葉の異変全般の見分け方は葉の異変サイン10種にまとめています。

Close up of the outer leaves of a napa cabbage at soil level showing translucent water soaked spots

なぜ起きるのか

原因はPectobacterium carotovorum という細菌です。カビとは性質が違うため、対策の考え方も変わります。

菌はどこにいるか

島根県の資料は、この細菌が主に寄生植物の根の周辺に生存し、降雨などによって土とともに葉上に運ばれ、傷口などから侵入すると説明しています。

全国農村教育協会の資料も、「土壌中で生存し、主に傷口から風雨や潅水等の土壌の跳ね上がり等により侵入する」としています。

つまり経路はこうです。

  1. 菌は土の中にいる
  2. 雨や水やりの跳ね返りで泥が葉に飛ぶ
  3. 葉の傷口から入り込む
  4. 組織を溶かしながら増える
  5. 被害株で増殖した細菌は風雨などにより飛散し、二次伝染する

健全な葉にそのまま乗っただけでは、ほとんど発病しません。 鍵になるのは「傷」と「泥はね」です。

発生が多くなる条件

島根県の資料は、秋季温暖多雨、排水不良、窒素過多のときなどに発生が多いと明記しています。さらに、台風などで傷が着いたり、害虫の食害を受けた場合にも多発生するとしています。

台風のあとに一気に出るのは、風で葉がこすれて傷ができ、同時に泥が跳ね上がるためです。

窒素過多が効いてくる理由も同じ線でつながっています。窒素をよく効かせた株は、葉が大きく柔らかく育ちます。細胞壁が薄いぶん、風で揺れたときに傷がつきやすく、細菌が入ってからも組織が早く崩れます。「よく育っている株ほど倒れる」ことがあるのは、このためです。追肥は規定量を守り、生育が旺盛なときにさらに足すことは避けてください。

傷をつくらない・泥を上げない

対策の中心は、薬ではなく栽培のしかたです。

対策 何を断つか
畝を高くする 水たまりと泥はね
株元に敷きわら・マルチ 雨の跳ね返り
害虫の食害を防ぐ 虫があけた傷
下葉かきは晴れた日に 切り口が乾く時間を作る
窒素を控えめに 軟弱に育つと侵入されやすい

敷きわらとマルチ

泥はねを止めるだけで、感染の経路がひとつ消えます。 株元を敷きわらやマルチで覆い、土が直接見えない状態にしてください。

敷きわらは、雨が強い時期の前に厚めに入れておきます。薄く散らした程度では、雨粒が地面まで届いて泥を跳ね上げます。指で押して地面が見えないくらいが目安です。

厚く敷くほど泥はねを止められます。1株あたりの必要量を見積もって、途中で足りなくならない量をまとめて用意してください。

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雨の多い時期の備えは梅雨入り前の家庭菜園準備にまとめています。

害虫を減らすことが病気対策になる

食害の跡は、そのまま細菌の入り口です。虫の対策が、そのまま病気の対策になります。

大根や白菜に穴をあける虫についてはキスジノミハムシの対策を参照してください。

A raised vegetable bed with straw mulch spread thickly around the base of cabbage plants so no bare

見つけたらどうするか

全国農村教育協会の資料が挙げる防除の柱は次の3つです。

発病する作物の連作を避ける。圃場の排水をよくする。窒素過多を避ける

これに加えて、発病株の早期抜き取り処分と害虫防除の徹底が示されています。

抜き取るときの手順

  1. 晴れた日に作業する
  2. 株ごと根から抜く
  3. その場で袋に入れて持ち出す
  4. 畑に埋めない。堆肥にもしない
  5. 手と道具を洗う

引きずって運ぶと、溶けた汁が畝に落ちます。 袋を株のそばまで持っていってください。

残った穴にも手当てが要ります。抜いたあとの土には菌が残っているため、そこへすぐ別の株を植え直すと同じことが起きます。少なくともその作の間は空けておき、次の作付けまでに天地を返すか、周囲の土と混ぜて薄めてください。畝全体に広がっているようなら、その年は収穫をあきらめて早めに片づけるほうが、翌年の被害を小さくできます。

道具を介した持ち込みを避ける方法は家庭菜園の道具消毒にまとめました。

連作を避ける組み合わせ

この細菌は寄主の範囲が広く、アブラナ科のほか、ナスやジャガイモなどナス科、ネギなどユリ科、レタスなどキク科にも感染します。

ただし、イネ科とマメ科には寄生しません。

区分 例
寄生する 白菜、キャベツ、大根、ブロッコリー、ナス、ジャガイモ、ネギ、レタス
寄生しない イネ科(トウモロコシなど)、マメ科(枝豆、インゲンなど)

畝を休ませるとき、間にトウモロコシや豆類を挟むと、菌の密度を上げずに済みます。作付けの回し方は連作障害を避ける畝のローテーションを参考にしてください。

A vegetable garden with alternating rows of leafy brassicas and tall sweet corn on raised beds, wide
Gloved hands lifting a collapsed diseased cabbage plant directly into an open waste bag held beside

よくある質問

Q. カビの病気と何が違うのですか?

原因が細菌である点です。患部にかびが生えず、組織が溶けて強い悪臭を放ちます。カビの病気のように葉の表面に粉や斑点状のかびが見えることはありません。

Q. 腐った部分を切れば残りは食べられますか?

腐敗部の周囲にも細菌が広がっているうえ、悪臭が全体に移ります。発病株は畑の外へ持ち出して処分し、収穫には回さないでください。

発病部を切るときは、そのつど刃を拭ける道具があると安心です。ステンレス刃のものは水洗いしても錆びにくくなります。

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Q. 台風のあとに増えるのはなぜですか?

風で葉がこすれて傷ができ、同時に強い雨で土が跳ね上がるためです。島根県の資料も、台風などで傷がついた場合や害虫の食害を受けた場合に多発生するとしています。

Q. 次の年、同じ場所に何を植えればいいですか?

この細菌はイネ科とマメ科には寄生しません。トウモロコシや豆類を挟むと密度が上がりにくくなります。アブラナ科・ナス科・ユリ科・キク科は避けてください。

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まとめ

  • どろどろに溶けて強い悪臭。 かびは生えない
  • 原因は細菌。土の中にいて、泥はね+傷口から入る
  • 秋季温暖多雨、排水不良、窒素過多で増える。台風のあとは要注意
  • 対策は高畝・敷きわら・害虫防除・窒素控えめ
  • 発病株は晴れた日に株ごと抜いて袋で持ち出す。 畑に埋めない
  • イネ科とマメ科には寄生しない。 輪作に使える

泥を葉に上げない。葉に傷をつくらない。 薬より先に、この2つです。


参考