石灰窒素は、肥料でありながら農薬としても登録されているという、ほかにあまりない資材です。窒素を補いながら、雑草の芽や一部の病害虫を抑える働きを持ちます。
ただし、扱いに決まりごとがあります。 まいた当日は酒を飲まないこと、そしてまいてすぐには種をまけないこと。この2つを知らずに使うと、体調を崩したり、せっかくまいた種を傷めたりします。
この記事では、日本石灰窒素工業会の案内をもとに、安全に使うための手順をまとめます。
どういう資材か
主成分はカルシウムシアナミドです。土に入ると水分と反応して段階的に分解し、最終的に石灰分と窒素分になります。
途中の分解過程で生じる物質に、雑草の発芽を抑えたり、土の中の病害虫を減らしたりする働きがあります。 肥料としての効きめが現れるのは、この分解が進んだあとです。
つまり、同じ資材が、時間の経過とともに「農薬的な働き」から「肥料」へ変わっていく。 使い方の決まりごとは、ほとんどがこの性質から来ています。
ふつうの石灰資材とは別物なので、混同しないでください。苦土石灰や消石灰との違いは苦土石灰vs消石灰vs有機石灰にまとめています。

まいたら待つ
いちばん重要なのがここです。
分解の途中では、種や根を傷める働きが残っています。散布してすぐに種をまいたり苗を植えたりすると、発芽しなかったり、根が傷んだりします。
待つ日数は気温で変わります。分解は温度が高いほど早く進むため、夏は短く、春と秋は長くとる必要があります。寒い時期ほど余裕をみてください。
工業会の資料では、散布から播種・植付けまでに夏は数日、春秋は10日前後を空ける目安が示されています。土の温度が低い時期は、さらに長めにとるほうが安全です。
袋の裏に書かれた日数が最終的な基準です。 製品によって粒の形や分解速度が違うため、そこを優先してください。
粒状とその他の剤型でも扱いが変わります。粉状のものは風で飛びやすく、散布時の防護がより重要になります。家庭菜園で使うなら、飛散の少ない粒状のほうが扱いやすくなります。
粉が舞う作業なので、簡易なものではなく粉じん用を選んでください。眼鏡をかけたまま使えるか確かめておくと作業が楽になります。
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待つあいだにやること
散布したら、すぐに土とよく混ぜてください。 表面に置いたままでは分解が進まず、風で飛んだり、人や動物が触れたりする危険も残ります。
混ぜたあとは軽く水をやると、分解が始まりやすくなります。乾ききった土では反応が進みません。
逆に、水をやりすぎて畝がぬかるむほどにする必要はありません。雨の前日にまいておく、という進め方でも十分です。待機中は何もせず、そのまま置いておきます。
散布するときの防護
工業会は、散布時の装備を具体的に挙げています。
保護眼鏡、防護マスク、不浸透性手袋、ゴム長靴、不浸透性防除衣等を着用すること。
家庭菜園でここまで揃えるのは現実的でないかもしれませんが、最低でもマスク・手袋・長袖は必要です。
注意点は次のとおりです。
- 吸い込まない。 風上に立ち、風の強い日は避ける
- 皮膚に付けない。 手足が濡れていたり汗をかいたままだと付着しやすく、かぶれの原因になる
- 飛び散らせない。 周囲にも注意する
- 眼に強い刺激性がある。 入ったら直ちに十分に水洗し、眼科医の手当てを受ける
- 付着したら直ちに石けんでよく洗い落とす
作業が終わったら、直ちに身体を洗い流し、洗眼・うがいをして、衣服を交換します。 作業着は他の衣類と分けて洗濯してください。
かぶれやすい体質の人は作業に従事しないことも、あわせて示されています。

散布後24時間は飲酒しない
これが、この資材いちばんの特徴的な注意点です。
工業会は「散布後24時間以内は飲酒しないこと」と明記しています。散布した日や、顔・手足が石灰窒素で汚れた日も飲酒は避けます。
理由は、石灰窒素を吸い込むと酒類への耐性が弱くなるためです。シアナミドが体内でのアルコール分解を妨げるため、ふだんなら平気な量でも、顔が赤くなったり動悸がしたりします。
「少しだけだから」が通用しません。 散布の予定を立てるときは、その日の夜の予定も一緒に考えてください。
この反応には個人差があります。もともと酒に強い人でも、散布した日は普段と違う出方をすることがあります。自分は大丈夫だと決めつけず、24時間という目安を守ってください。体調に異変を感じたら、医療機関にかかるときに石灰窒素を扱ったことを伝えると判断が早くなります。
使う量の目安
工業会のQ&Aでは、目的別に次の量が示されています。
- センチュウ類|50〜100kg/10アール
- 根こぶ病|100〜200kg/10アール
- 一年生雑草|50〜70kg/10アール
10アールは1,000平方メートルなので、1平方メートルあたりに直すと5〜20gという幅になります。家庭菜園の畝1本であれば、ごく少量です。
多ければ効くというものではありません。 入れすぎれば待つ日数も伸び、窒素過多にもつながります。
家庭菜園の畝は数平方メートルという単位です。計量せずに「ひとつかみ」でまくと、簡単に数倍の量になります。はかりで量るか、少なめに見積もるほうが失敗しません。
グラム単位で量れるものがあると、少量の資材を扱うときに迷いません。1g単位で表示されるものを選んでください。
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根こぶ病そのものの対策は根こぶ病の見分け方と対策に、連作の考え方は連作障害を避ける畝のローテーションにまとめています。
保管
吸湿性があります。 湿気を吸うと固まり、袋の中で分解が始まってしまいます。
工業会は、雨漏れ、浸水等の恐れのない場所に保管すること、そして小児の手の届かないところに置くことを示しています。
使い残したら口をしっかり閉じ、乾いた場所に置いてください。肥料や培養土の保管は培養土と肥料の保管方法も参考になります。


家庭菜園で使うべきか
無理に使う必要はない資材です。
| 向く場面 | 連作障害や雑草に困っていて、作付けまで日数がある |
| 向かない場面 | すぐ植えたい、小さな区画、子どもやペットが入る場所 |
| 代わりになるもの | 太陽熱消毒、輪作、堆肥による土づくり |
待てる時期にしか使えません。 秋に畑を空けるとき、冬のあいだに準備するときなど、時間に余裕がある場面向けです。
薬剤を使わない土の手当ては家庭菜園の土づくり入門にまとめています。
よくある質問
Q. まいてすぐ種をまけますか?
まけません。分解の途中では種や根を傷める働きが残っています。夏は数日、春秋は10日前後を空けるのが目安で、気温が低い時期はさらに長めにとってください。最終的な日数は製品の表示に従います。
Q. なぜ散布後にお酒を飲んではいけないのですか?
石灰窒素を吸い込むと酒類への耐性が弱くなるためです。日本石灰窒素工業会は、散布後24時間以内は飲酒しないことと明記しています。散布した日や、顔・手足が汚れた日も避けてください。
Q. 苦土石灰と同じように使えますか?
別物です。苦土石灰は酸度を上げる石灰資材ですが、石灰窒素は分解の過程で農薬的な働きを持ち、待機期間が必要です。混ぜて同時に使うことも避けてください。
Q. どのくらいの量をまけばいいですか?
目的によって変わります。工業会の目安は、センチュウ類で10アール当たり50〜100kg、根こぶ病で100〜200kg、一年生雑草で50〜70kgです。1平方メートルあたりでは5〜20g程度にあたります。
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まとめ
- 主成分はカルシウムシアナミド。分解とともに農薬的な働きから肥料へ変わる
- まいたらすぐ植えない。 夏は数日、春秋は10日前後。寒いほど長く
- 散布したらすぐ土とよく混ぜる
- マスク・手袋・長袖は最低限。 眼に強い刺激性がある
- 散布後24時間以内は飲酒しない
- 量は1平方メートルあたり5〜20g程度。入れすぎない
- 吸湿性がある。 雨漏れや浸水のない場所に保管する
時間に余裕があるときだけ使う資材です。 急いでいるなら、別の手段を選んでください。
参考