実の先やヘタのあたりが茶色くふやけ、灰色のフワフワしたカビが密生する。 これが灰色かび病です。病原菌の名前から「ボトリチス」とも呼ばれます。
この病気の厄介なところは、健康な葉にいきなり出るのではなく、咲き終わった花弁や傷んだ部分から入ってくる点です。つまり、花が終わったあとの始末が、実を守るかどうかを決めます。
うどんこ病・べと病との見分け方は梅雨期の葉カビ病3種にまとめています。この記事では灰色かび病だけを取り上げ、野菜別の症状、菌核病との違い、花弁除去を中心とした対策を解説します。
灰色かび病とは
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 病原菌 | Botrytis cinerea(ボトリチス) |
| 発病適温 | 20℃。 比較的低温で発生する |
| 湿度 | 温度よりも湿度の影響が大きい |
| 範囲 | 野菜・花き・果樹など多くの作物を侵す多犯性の病害 |
| 出る場所 | 葉・茎・花・実。花や実の被害が目立つ |
高知県は、トマト・ナスの灰色かび病について「発病適温は20℃で比較的低温であるが、温度よりも湿度の影響が大きく」と説明しています。茨城県も「20℃前後の温度で湿度が高く、日照が少ないときに発生しやすくなる」としています。
発生しやすい時期
施設栽培では、茨城県によると2〜3月に発生し始め、暖冬や曇雨天が多い年は平年より早まる傾向があります。高知県は3〜4月の発生が多いとしています。
つまり、真夏ではなく、気温が上がりきらない時期の長雨が危ない条件です。家庭菜園なら、春の長雨、梅雨、秋の長雨が当てはまります。囲われて風が通らない場所は湿度が上がりやすいので、ベランダや雨除けの中も油断できません。
被害を受ける野菜
茨城県は、施設野菜で被害を受ける作物としてトマト・ミニトマト・ナス・ピーマン・キュウリ・カボチャ・スイカ・メロン・イチゴ・ネギ・ニラ・タマネギ・レタス・サヤインゲン・サヤエンドウを挙げています。
家庭菜園でよく育てる野菜のほとんどが対象ということになります。いちごの育て方はいちごをプランターで育てる方法にまとめています。
どこから入ってくるか
灰色かび病は、侵入口がはっきりしている病気です。ここを塞ぐのが対策の中心になります。
咲き終わった花弁
高知県は、トマトについて「開花後の花弁が足がかりとなって発生」すると説明しています。
ナスではさらに具体的で、「花弁を足がかりとして発病するので花弁の除去(花抜き)に努める」とされています。花弁が残りやすい萼(へた)付近から腐敗が始まることが多いとも書かれています。
咲き終わった花びらが実にくっついたまま残っている状態が、いちばん危ないということです。
前の年の残りかす
高知県によると、第一次伝染源は「残存した罹病茎葉の菌糸や分生子、菌核」です。発病したあとは「病斑上に形成された多数の分生子によって次々と伝染」します。
去年の枯れた茎葉を畑の隅に置いたままにしていると、そこが翌年の出発点になります。

野菜別に出る症状
| 野菜 | 症状 |
|---|---|
| トマト | 葉は先端の葉縁に褐色病斑、多湿時は表面にかび。茎は暗褐色水浸状の円形病斑で、進むと上部が枯死。実は褐色水浸状の小斑点から拡大し、表面に灰色のかび |
| ナス | 萼付近から腐敗が始まり、褐色の水浸状小斑点が拡大。腐敗が進むと灰色のかびが密生し、ほこりをかぶったように見える |
| いちご・レタス・豆類など | 花や実、結球部、地際など傷んだ組織から腐敗する |
トマトの「ゴーストスポット」
高知県のページには、トマトの果実に直径1〜2mmの「中心点のある白色円形小斑点」(ゴーストスポット)が出ることも記載されています。
実が腐っていないのに、白い小さな輪のような点が散っている場合、これに当たることがあります。胞子が付いたものの、感染が進まずに跡だけ残った状態です。見つけたら、周りの湿度と花弁の残りを確認する合図と考えてください。
ナスの「水泡症」
ナスでは、指の先ほど以上に育った実の表面に、直径2〜3mmの円形ないし紡錘形の水ほう状の小突起(水泡症)が出ることがあると記載されています。
菌核病との見分け方
灰色かび病とよく間違われるのが菌核病です。どちらも多湿を好み、発病適温は20℃前後、春先と晩秋に多いため、時期や気温では区別できません。
見分けるポイントはカビの色と、黒い粒があるかどうかです。
| 灰色かび病 | 菌核病 | |
|---|---|---|
| カビの色 | 灰色のかびが密生する | 白い綿状の菌糸が現れる |
| 黒い粒 | できない | ネズミの糞に似た黒い菌核ができる |
| 見た目の印象 | ほこりをかぶったよう | 綿を貼り付けたよう |
島根県は、キュウリの菌核病について「表面に白い綿状の菌糸が現れ、やがてネズミの糞に似た黒い菌核ができる」と説明しています。
白いカビの上に黒い粒が見えたら菌核病です。菌核病の菌核は地表や土中で生き残るため、対処の仕方も変わります。迷ったら、黒い粒を探してください。

見つけたときの手順
灰色かび病は、発病後は病斑の上にできた大量の分生子で次々に伝染します。 見つけた時点で、まず広げないことを優先します。
- 罹病部を早めに取り除く(高知県も「罹病部の早期除去」を挙げています)
- 袋に入れて密閉し、畑やベランダの外へ持ち出す(茨城県は「被害部位を徹底して取り除いてハウス外に持ち出す」としています)
- 触った手と道具を洗う・消毒する
- 周りの株の花弁の残りと湿気を点検する
カビの部分を乱暴に払わないでください。 胞子が周囲に散ります。袋を病斑にかぶせるようにして、そのまま切り取るのが確実です。
道具の消毒方法は家庭菜園の道具消毒にまとめています。
整枝や摘葉に使うはさみは、刃先が細く切り口の小さいものが向きます。株ごとに拭き取りながら使えるよう、2本用意しておくと作業が止まりません。
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発生を抑える管理
湿度を下げる
茨城県は「換気、送風、暖房等による除湿」を挙げています。家庭菜園に置き換えると次のようになります。
| やること | 具体的に |
|---|---|
| 風を通す | 株を詰めて植えない。雨除けの裾を開ける |
| 葉を濡らさない | 水は株元にやる。上から葉にかけない |
| 地面からの湿気を抑える | マルチや敷きわらで土の表面を覆う |
| 雨に当てない | 雨除けを使う。ただし中の風通しを確保する |
高知県も防除方法として、換気・地中かん水・マルチ・敷きわらの使用を挙げています。雨除けの作り方は雨除けトンネル・ビニールトンネルDIYにまとめています。
敷きわらは土の跳ね返りを抑え、地面からの湿気もやわらげます。畝の長さに対して必要な量を計算してから購入してください。
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花弁を取る(花抜き)
この病気に特有の、効果がはっきりした作業です。
- 咲き終わって茶色くなった花弁を、実に残さないよう指で取る
- とくにナスは萼のまわりを見る
- トマトは房の付け根に花弁が残りやすい
高知県は、ナスについて「交配に蜂を用いると花弁が果実に残りにくいため、発病が少なくなる傾向がある」とも記載しています。家庭では蜂は使えませんが、花弁が残らない状態が良いという点は同じです。
整枝・摘葉と残りかすの処分
- 適切な整枝・摘葉で株の中の風通しを良くする(高知県も防除方法に挙げています)
- 切り口は晴れた日の午前に作る(傷が乾きやすい状態にする)
- 前作の枯れた茎葉を畑に残さない(第一次伝染源になります)
薬剤を使うときの注意
高知県は、薬剤について「同一系統の薬剤の連用は避ける」と明記しています。灰色かび病は、同じ薬を繰り返し使うと効かなくなることが知られているためです。
家庭菜園では、まず湿度・花弁・残りかすの3点を押さえるのが基本です。薬剤を使う場合は、育てている野菜に登録のあるものを選び、ラベルの回数と時期を守ってください。ラベルの読み方は農薬ラベルの読み方にまとめています。

よくある質問
Q. 灰色かび病になった実は食べられますか?
カビが生えて腐敗した部分は食べないでください。灰色かび病は組織を腐らせる病気なので、被害を受けた実は取り除いて処分します。同じ株の健康な実は、腐敗がなければ収穫できます。
Q. 気温が高い夏でも発生しますか?
発病適温は20℃で比較的低温です。高知県も茨城県も、発生が多い時期として春先の曇雨天期を挙げています。真夏より、春の長雨・梅雨・秋の長雨のほうが注意が必要です。
Q. 白いカビが生えていますが、灰色かび病ですか?
白い綿のような菌糸で、その上にネズミの糞に似た黒い粒ができる場合は菌核病です。灰色かび病は灰色のかびが密生し、ほこりをかぶったように見えます。黒い粒があるかどうかで見分けてください。
Q. 花びらは必ず取ったほうがいいですか?
取ってください。灰色かび病は咲き終わった花弁を足がかりに発病するため、高知県はナスについて花弁の除去(花抜き)に努めるよう記載しています。実に張り付いた茶色い花弁が、そのまま侵入口になります。

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まとめ
灰色かび病の要点です。
病気の性質
- 病原菌はBotrytis cinerea。多くの作物を侵す
- 発病適温20℃。温度より湿度の影響が大きい
- 真夏より春の長雨・梅雨・秋の長雨が危ない
侵入口は2つ
- 咲き終わった花弁(ナスは萼付近、トマトは房の付け根)
- 前作の枯れた茎葉(第一次伝染源)
見分け方
- 灰色のかび=灰色かび病
- 白い菌糸+ネズミの糞に似た黒い粒=菌核病
対策
- 花弁を取る(花抜き)
- 風を通し、株元に水をやる。マルチで土を覆う
- 罹病部は袋に密閉して外へ
- 薬剤は同一系統の連用を避ける
花が終わったら花びらを見る。 この習慣ひとつで、実の被害はかなり減ります。
参考