ホームセンターで、いちばん安い袋として積まれているのが鶏糞です。牛糞堆肥より軽くて安く、つい多めに入れたくなります。
ところが鶏糞は、堆肥のつもりで使うと期待外れになる資材です。土をふかふかにする効果は、ほとんど期待できません。
この記事では、山口県農林総合技術センターの「鶏糞の利用促進マニュアル」をもとに、鶏糞の性格・まく時期・量の考え方を整理します。石灰資材との関係は苦土石灰vs消石灰vs有機石灰も参照してください。
鶏糞は「肥料」であって「堆肥」ではない
ここを取り違えると、使い方を間違えます。
山口県の資料は、鶏糞の土づくり効果について次のように説明しています。
「鶏糞は、保肥力などを高める腐植の基となる炭素の量が堆肥に比べると少なく、また、C/N比も低いので分解されやすいため、腐植含量の増加や物理性の改善効果はあまり期待できません」
一方で、副資材(バーク等)を多く加えて長期間堆積した「鶏糞堆肥」なら、腐植含量の増加や物理性の改善効果が期待できるとされています。
| 資材 | 期待できること |
|---|---|
| 鶏糞 | 肥料としての養分供給 |
| 鶏糞堆肥 | 養分+腐植の増加・物理性の改善 |
| 牛糞堆肥など | 土づくり(物理性の改善) |
袋に「鶏糞」とだけ書かれたものは、肥料だと考えてください。 土をやわらかくしたいなら、別に堆肥が必要です。土づくりの基本は家庭菜園の土づくり入門にまとめています。
鶏糞は石灰分が多いため、続けて使うと土の酸度が変わります。差すだけで測れる酸度計があると、石灰を入れる前の判断ができます。
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成分の目安
山口県の資料に掲載された分析値では、鶏糞の成分はおおよそ次の範囲です。
| 成分 | 現物あたりの含有率 |
|---|---|
| 全窒素 | 1.5〜4.2% |
| リン酸 | おおむね4〜7% |
| 加里 | 3〜4.5% |
| 石灰 | 5〜19%程度 |
| 苦土 | 0.6〜1.9% |
注目すべきは石灰(カルシウム)の多さです。 分析値では、石灰が19%を超えるものもあります。
資料は、「石灰の場合は、鶏糞で施用する石灰量の2倍量を炭酸カルシウム相当量と考えます」としています。鶏糞をまくことは、石灰をまくことに近いということです。
成分は養鶏場によって大きく違います。 同じ「鶏糞」でも、肉用鶏か採卵鶏か、発酵期間がどれくらいかで窒素濃度が変わります。袋に成分表示があれば、それを優先してください。
成分が表示された製品を選ぶと、施用量を計算できます。少量から試すなら小袋、畑で使うなら大袋が割安です。
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まく時期
施用後1週間はあける
資料は次のように注意しています。
「鶏糞施用後1週間は窒素の取り込みが起こり、土壌中の窒素の状態が不安定なので、播種・定植まで1週間程度間隔をあけるか、施用量を調整する等注意が必要です」
まいてすぐ植えると、かえって生育が落ちることがあるということです。
早すぎても効かない
一方で、早くまきすぎるのも問題です。
「鶏糞を施用して4週間以上経過するとほとんど窒素が無機化しなくなりますので、播種や定植の1か月以上前に鶏糞を施用する場合は、窒素の肥効はあまり期待できません」
| まく時期 | 結果 |
|---|---|
| 直前 | 土の窒素が不安定。生育に影響することがある |
| 1〜2週間前 | ちょうどよい |
| 1か月以上前 | 窒素の効果はあまり期待できない |
「1〜2週間前」が目安になります。堆肥のように「2か月前に入れておく」使い方は、鶏糞には向きません。
秋は地温が鍵
秋冬野菜では、もうひとつ注意点があります。
資料は、温度が20℃で無機化する窒素の量は、30℃で無機化する量の80%以上だが、それ以下になるとかなり少なくなるとし、「10月になると平均地温が20℃以下になりますので、鶏糞から無機化する窒素を想定どおりに活用するためには、9月中に播種または定植する必要があります」としています。
寒くなってからまいた鶏糞は、計算どおりに効きません。 秋の遅い時期に植えるなら、効き方の早い肥料を選ぶほうが確実です。

量の考え方
資料は、基肥として使う場合の考え方をこう示しています。
「鶏糞の窒素を基肥として利用する場合は、鶏糞からの窒素が無機化する期間が4週間程度と短いので追肥が必要です。各作物の栽培基準で必要な基肥窒素量の半分を鶏糞から供給するように施用量を計算します」
家庭菜園向けに言い換えると、次のようになります。
- 鶏糞だけで最後まで持たせようとしない
- 元肥の半分くらいを鶏糞で、残りは追肥で補う
- 追肥の考え方はプランター追肥のリズムを参照
そして、窒素以外にも注意が必要です。 資料は、リン酸や塩基などの養分を目的に使う場合、「リン酸や石灰の過剰供給にならないように注意します」としています。
毎年たっぷり入れ続けると、リン酸と石灰が溜まります。 土のpHが上がり、他の要素が効きにくくなります。
使うときの注意
| 注意 | 理由 |
|---|---|
| 石灰資材と同時にまかない | 鶏糞自体に石灰が多い。 pHが上がりすぎる |
| 毎年同じ量を入れ続けない | リン酸と石灰が蓄積する |
| 株元に直接置かない | 濃度障害の原因になる |
| 風の強い日にまかない | 乾いた鶏糞は飛散しやすい |
資料によると、飛散は水分と関係が深く、水分25%程度で飛散はかなり抑止されるとされています。乾いてさらさらしたものほど舞いやすいということです。
近隣が近い家庭菜園では、においと飛散が最大の問題になります。まいたらすぐ土に混ぜ込み、表面に残さないでください。肥料の与えすぎによる障害は肥料焼けの症状と対処にまとめています。

種類による違い
袋の表示は「鶏糞」でも、作り方によって性格が変わります。
| 種類 | 作り方 | 性格 |
|---|---|---|
| 乾燥鶏糞 | 乾燥施設で乾かしただけ | 窒素濃度が高め。 においが強い |
| 発酵鶏糞 | 堆積・切り返しで発酵させた | 扱いやすい。家庭菜園で主流 |
| 鶏糞堆肥 | 副資材を加えて長期間堆積 | 土づくり効果が期待できる |
山口県の資料でも、県内で生産される鶏糞は加水せずに堆積・切り返しの発酵処理を行ったものが多く、C/N比は10以下のものが大部分とされ、一部に乾燥させただけの乾燥鶏糞や、多量の副資材(バーク等)を加えて長期間堆積する鶏糞堆肥があると説明されています。
土をやわらかくしたいなら「鶏糞堆肥」、肥料として効かせたいなら「発酵鶏糞」と覚えておくと選び間違えません。
窒素濃度は飼育目的でも変わります。 資料では、肉用鶏と採卵鶏では肉用鶏の鶏糞の窒素濃度が高くなるとされ、採卵鶏では発酵期間が短いと窒素濃度が高く、水分が低いとさらに高くなる傾向があるとされています。

よくある質問
Q. 鶏糞は土をふかふかにしますか?
あまり期待できません。山口県の資料では、鶏糞は腐植の基となる炭素の量が堆肥に比べて少なく、腐植含量の増加や物理性の改善効果はあまり期待できないとされています。土をやわらかくしたい場合は、別に堆肥を入れてください。
Q. まいてすぐ植えても大丈夫ですか?
1週間程度あけてください。施用後1週間は土壌中の窒素の状態が不安定になるとされています。逆に1か月以上前にまくと、窒素の肥効はあまり期待できません。
Q. 石灰と一緒にまいてもいいですか?
避けてください。鶏糞自体に石灰が多く含まれ、資料では鶏糞で施用する石灰量の2倍量を炭酸カルシウム相当量と考えるとされています。同時に入れるとpHが上がりすぎます。
Q. プランターでも使えますか?
使えますが、量の調整が難しい資材です。容量が小さいぶん濃度障害が出やすく、においも気になります。ベランダで使うなら、成分が表示された少量パックを選び、土によく混ぜ込んでください。
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まとめ
鶏糞の使い方の要点です。
性格
- 肥料であって、土づくりの堆肥ではない
- 土の物理性を改善したいなら、別に堆肥が必要
成分の目安
- 全窒素1.5〜4.2%、リン酸4〜7%、加里3〜4.5%
- 石灰が5〜19%と多い。 まくことは石灰をまくことに近い
時期
- 播種・定植の1〜2週間前
- 1か月以上前では窒素は期待できない
- 秋は9月中に植えないと、地温が下がって効きにくい
量
- 元肥窒素の半分を鶏糞から。残りは追肥で
- リン酸と石灰の蓄積に注意する
安いからと多めに入れるのが、いちばんの失敗です。 効く期間が短い肥料だと分かれば、まく時期のほうが大事になります。
参考