朝、畑に出ると苗が1本倒れている。 拾い上げると、根元でばっさり切られている。葉はまだ青いまま。
ネキリムシの仕業です。 土の中に潜んだ蛾の幼虫が、夜のうちに株元をかみ切っていきました。
この記事では、どこを掘れば見つかるかと、翌年の発生を減らすために作業の順番をどう変えるかを、県の病害虫防除室の資料からまとめます。
ネキリムシとは何か
石川県病害虫防除室の資料は、こう定義しています。
多くの野菜類、豆類、花き類の茎を切断する蛾の幼虫の総称です。典型的な広食性害虫で100種以上の食草が知られています。
1種類の虫の名前ではありません。 チョウ目ヤガ科に属し、国内にはタマナヤガ、カブラヤガ、オオカブラヤガ、センモンヤガ、シロモンヤガ等が確認されています。
家庭菜園でよく当たるのは、タマナヤガとカブラヤガです。両者は類似した発生生態で、全国的に混発します。
2種の見分け
| タマナヤガ | カブラヤガ | |
|---|---|---|
| 幼虫(終齢) | 40〜45mm | 40mm前後 |
| 体色 | 暗灰褐色 | 暗灰色または暗緑色 |
| 体表面 | サメ肌状。 大小の顆粒が疎に(老齢) | 滑らかで弱い光沢。 微小な顆粒が非常に密に(老齢) |
| 休眠性 | なし | あり |
| 越冬 | 中〜老齢幼虫、蛹や成虫の場合も | 中〜老齢幼虫、蛹の場合も |
手に取ったときのざらつきが、いちばん分かりやすい違いです。
ただし、家庭菜園でどちらかを特定する必要はほとんどありません。生態がよく似ているため、対策も同じになります。種名を調べるより、被害の出方と居場所を押さえるほうが実用的です。
成虫はどちらも地味な褐色の蛾で、夜に飛びます。見かけても害虫だとは気づきにくく、昼間に姿を見ることもまずありません。
なお同資料は、タマナヤガは寒冷地では越冬できないため、春に温暖地から飛来した成虫がその年の発生源になるとしています。

被害が急に出る理由
石川県の資料は、幼虫の育ち方をこう説明しています。
幼虫は若齢~中齢期は地際部に生息し食害しますが、摂食量が少ないため被害は目立ちません。中齢期以降は、昼は土中に潜み夜間に株の根元をかみ切ったり、生長点を食害し、発生量の割に被害が大きくなります。
前半はほとんど気づかれません。 そして大きくなった頃に、1匹が1晩で1本を倒していきます。
| 時期 | 何が起きるか |
|---|---|
| 若齢〜中齢 | 地際で少しずつ食べる。被害は目立たない |
| 中齢以降 | 昼は土中、夜に株元をかみ切る |
| 結果 | 発生量の割に被害が大きい |
山口県の資料も、発芽したダイズ、ハクサイやキャベツ等の野菜類を根元で切る被害として挙げています。
発生の時期
成虫は4〜5月頃に発生し、夜間に下葉や地際に1〜複数個を分散して産卵します。発生は年3回程度で、被害は春〜初夏、秋に多くなります。
苗を植えたばかりの春と、秋まきの時期。 どちらも家庭菜園がいちばん忙しい頃と重なります。
石川県がフェロモントラップで調べた記録では、越冬世代が春に羽化・飛来し、秋まで3回程度発生するという消長が確認されています。被害が出る時期は、この羽化のタイミングからおよそ読めます。
見つけ方
夜に探す必要はありません。 昼は土中にいるので、そこを狙います。
石川県の資料には、簡潔な手順が書かれています。
被害株付近を浅く掘ると捕殺が可能です。
手順は次のとおりです。
- 倒された株を見つける
- その株のまわり半径5〜10cmを、深さ数cmだけ浅く掘る
- 丸まった灰褐色の幼虫を探す
- 見つけたら取り除く
深く掘る必要はありません。 同資料も、ネキリムシ類は土中の浅い所に潜むとしています。
倒れた株を見つけた朝のうちに掘るのがコツです。 虫はまだ近くにいます。
見つからないときは、範囲を少し広げて、株から離れる方向へ探してください。前の晩に食べ終えた虫が、すぐ隣まで移動していることがあります。また、土が乾いて固いと潜りにくいため、水やりの跡が残っているやわらかい場所に集まる傾向もあります。
浅く掘って探す作業に使うので、幅の狭いものが向きます。目盛り付きなら植え付けの深さも測れます。
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発生そのものを減らす
ここがいちばん効く対策です。石川県の資料は、次のように述べています。
ほ場内や周辺の雑草が発生源になるので除草を励行し、播種、定植作業は除草後10日以上空けて行います。
「除草してから10日以上空ける」 という点が肝心です。
草を刈った直後に苗を植えると、食べ物を失った幼虫が、植えたばかりの苗に集中します。 間を空ければ、その間に幼虫は餓死するか移動します。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 除草する |
| 2 | 10日以上空ける |
| 3 | 播種・定植する |
慌てて同じ日にやらない。 これだけで被害はかなり減ります。畑の草の扱いは家庭菜園の雑草対策にまとめました。
冬の耕うん
同資料は、冬季の雑草地耕耘は越冬幼虫、蛹の駆除に有効としています。
使っていない区画も、冬に一度起こしておく。 土の中で越冬している個体を表に出し、寒気と鳥にさらす作業です。
雑草を生やしたまま冬を越した区画ほど、翌春の発生源になります。
冬の耕うんに使うなら、刃が土に入りやすい形のものを選んでください。柄の長さが身長に合っていると腰への負担が減ります。
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薬剤を使う場合
粒剤を使うときの注意も具体的です。
ネキリムシ類は土中の浅い所に潜むので、粒剤(殺虫剤)を土壌混和する際に深く混和しないようにし、殺虫効果を高める
深く混ぜると、虫のいる層から薬が外れます。 表層に留めるのが正解です。
鳥取県のニンジンでの試験では、処理による被害株率(27日後)に次の差が出ています。
| 区 | 被害株率 |
|---|---|
| 無処理 | 38.5% |
| ダイアジノン粒剤5(6kg/10a 全面土壌混和) | 17.5% |
| フォース粒剤(4kg/10a 全面土壌混和) | 7.0% |


苗を物理的に守る
薬を使わないなら、株元に囲いを立てる方法があります。
- トイレットペーパーの芯を縦に切って苗に巻く
- ヨーグルトの容器の底を抜いてかぶせる
- アルミホイルを株元に巻く
土に数cm埋め込み、地上にも数cm出すのがコツです。地際を通れなくするのが目的なので、土との境目に隙間を作らないでください。
苗の選び方と植え付けは苗の選び方と植え付けの基本に、植え付け時期の予防は春の害虫初期防除にまとめています。
守る本数が少ないなら、これがいちばん確実です。 植え付け直後の2〜3週間を越えれば、茎が太くなって切られにくくなります。
土の中の虫としてはコガネムシ幼虫の対策も参考になりますが、こちらは根を食べる虫で、被害の出方が違います。
よくある質問
Q. 犯人はどこにいますか?
昼は土中の浅い所にいます。倒された株のまわりを、深さ数cmだけ浅く掘ってください。丸まった灰褐色の幼虫が見つかります。夜に探す必要はありません。
Q. なぜ急に被害が出るのですか?
若齢から中齢期までは摂食量が少なく、被害が目立ちません。中齢期以降になると夜間に株の根元をかみ切るようになり、発生量の割に被害が大きくなります。
Q. 草刈りの直後に植えてはいけないのですか?
避けてください。石川県の資料では、播種・定植は除草後10日以上空けて行うとされています。餌を失った幼虫が、植えたばかりの苗に集中するためです。
Q. 1匹見つけたら終わりですか?
限りません。成虫は夜間に下葉や地際へ1〜複数個を分散して産卵します。1本倒れたら、周囲の株も翌朝に確認してください。
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まとめ
- ネキリムシは総称。 タマナヤガ・カブラヤガなどヤガ科の幼虫
- 100種以上の食草を持つ広食性害虫
- 中齢以降は昼は土中、夜に株元をかみ切る
- 成虫は4〜5月に発生、年3回程度。被害は春〜初夏と秋
- 見つけるなら倒れた株のまわりを浅く掘る
- 除草後10日以上空けてから播種・定植する
- 冬季の耕うんが越冬幼虫・蛹の駆除に有効
草を刈った日に植えない。 覚えておくのは、まずここです。
参考