雨が続いたあと、トマトの葉に灰緑色の、水がしみたような斑点が出た。翌日には広がって、大きな暗褐色の病斑になっている。
裏返すと、白いかびがうっすら生えている。 これは疫病です。進むのが速く、放っておくと株ごと枯れます。
この記事では、宮城県病害虫防除所の資料をもとに、部位ごとの症状、発病しやすい条件、そして家庭菜園でできる予防をまとめます。
部位ごとの症状
宮城県病害虫防除所の資料は、この病気が葉、葉柄、茎、果実等、すべての部位に発生するとしています。
葉
はじめ灰緑色水浸状の病斑を生じ、拡大して暗褐色の大型病斑となる。多湿時には病斑の表面に白色のかびを生じ、乾燥すると茶褐色になり、破れやすくなる
「大型」がポイントです。 小さな斑点が散らばるのではなく、1枚の葉の広い面積が一気に暗くなります。
茎・葉柄
暗褐色水浸状の病斑を生じ、のちにへこんで暗黒褐色に変わり、多湿時には表面に白色のかびを生じる
さらに、摘芽痕から発病して、病斑が茎をとりまくと、上部は萎凋枯死するとされています。
わき芽をかいた傷から入るわけです。ここは家庭菜園でも必ず通る作業なので、あとで触れます。
果実
未熟果が特に侵されやすく、ややへこんだ暗褐色で不整形の病斑を生じ、腐敗する
緑のうちにやられます。 色づいてから気づくのでは遅い病気です。
収穫できる実が残っていても、株の茎に病斑が回っていれば、そこから上は枯れ込みます。実だけを見て判断せず、茎の状態を先に確かめてください。

他の病気との見分け
トマトの葉には似た症状の病気がいくつもあります。
| 病気 | 病斑の様子 | かびの色 |
|---|---|---|
| 疫病 | 灰緑色の水浸状→暗褐色の大型病斑 | 白色 |
| うどんこ病 | 白い粉が表面に広がる | 白い粉状 |
| 葉かび病 | 葉裏に灰褐色のビロード状 | 灰褐色 |
| 灰色かび病 | 花や果実から灰色に腐る | 灰色 |
「水がしみたように広がる」「病斑が大きい」「白いかび」 の3つがそろえば、疫病の可能性が高くなります。
梅雨期に出る葉のかび病は梅雨期の葉カビ病3種で、葉の異変全般は葉の異変サイン10種で見分けられます。
低温多湿で増える
意外に思われますが、この病気は暑さではなく、低温と多湿で増えます。
宮城県の資料によれば、病原菌は卵菌類に属し、温度条件は次のとおりです。
| 項目 | 適温 |
|---|---|
| 菌の発育 | 15〜20℃ |
| 遊走子のうの形成 | 18〜21℃ |
| 遊走子の形成 | 12〜13℃ |
そして、こう説明されています。
気温が20℃以下のときは、間接発芽により遊走子のうから多数の遊走子が放出されて伝染するが、24℃前後の気温では遊走子のうから直接発芽管が伸長して感染を起こす
このため、低温多湿条件下では、多発しやすいとされています。
つまり、梅雨と秋雨がいちばん危ない。 真夏の高温期は、むしろ落ち着きます。梅雨の備えは梅雨入り前の家庭菜園準備にまとめました。
菌はどこから来るか
第一次伝染源について、資料はこう述べています。
罹病植物組織内に形成された菌糸や卵胞子が被害残渣とともに土壌中で越年し第一次伝染源となる
そのあとは、発病部位にできた遊走子のうから放出された遊走子が水によって移動し、宿主植物の表皮から侵入して二次伝染を繰り返します。
水が運びます。 雨、水やりの跳ね返り、葉に残った水滴。すべてが移動手段です。
逆に言えば、葉の表面が乾いていれば感染は進みません。晴れた日が続いているときに広がることはまずなく、雨のあとの数日で一気に動きます。
ジャガイモとの関係
見落としやすい点があります。
夏秋栽培では、周辺のジャガイモほ場が発生源となってトマトに伝染する場合がある
同じナス科なので、同じ菌に侵されます。 家庭菜園でトマトとジャガイモを近くで作っているなら、ジャガイモ側の発生も見ておく必要があります。
ジャガイモの茎葉が黒く枯れ込んでいたら、トマトの予防を早めてください。連作と配置の考え方は連作障害を避ける畝のローテーションを参照してください。

家庭菜園での予防
資料が挙げる栽培管理上の注意は次のとおりです。
窒素過多、採光不良、灌水過多などによって茎葉が軟弱となると発病を助長するので適切な栽培管理に留意する
家庭菜園に落とすと、こうなります。
| やること | 理由 |
|---|---|
| 雨よけをかける | 葉を濡らさない。水が菌を運ぶ |
| 株元にマルチ・敷きわら | 土からの跳ね返りを止める |
| わき芽かきは晴れた日に | 摘芽痕から入る。 切り口を乾かす |
| 株間を詰めすぎない | 採光不良と過湿を避ける |
| 肥料を効かせすぎない | 窒素過多で軟弱になる |
| 水は株元へ | 葉にかけない |
わき芽かきの日を選ぶのは、費用ゼロでいちばん効く工夫です。雨の日や雨の前日は避けてください。
雨よけは、家庭菜園でもっとも効果の大きい設備です。支柱を立てて上部だけに透明のフィルムを張る簡易なもので十分で、側面は開けたままにします。側面まで囲うと風が通らず、内部の湿度が上がって逆効果になります。目的は「葉を濡らさないこと」であって「囲うこと」ではありません。
組み立て式のものは、株の高さに合わせて高さを調整できるかを確認してください。側面が開く構造のほうが蒸れません。
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株間を詰めすぎないことも、同じ理由で効きます。葉が重なり合っていると、雨や朝露で濡れた葉がいつまでも乾きません。資料が挙げる採光不良も、ここから起こります。混み合ってきたら、下葉や内側に向かう枝を整理して、株のなかを風が抜ける状態を保ってください。
栽培の基本はミニトマトのプランター栽培にまとめています。
出てしまったら
- 発病した葉・茎・果実を早めに取り除く
- その場で袋に入れて畑の外へ。 土に落とさない
- 残さを畑に残さない(翌年の第一次伝染源になる)
- 道具と手を洗う
資料も、発生初期の防除徹底に留意し、初発を認めたら散布間隔を短縮し、集中的に薬剤散布を行うとしています。気づいた日の対応がすべてです。
そして、シーズンが終わったあとの片づけが翌年を決めます。資料にあるとおり、菌は被害残渣とともに土壌中で越年します。枯れた茎葉をそのまま畝に残したり、株元にすき込んだりすると、翌年の第一次伝染源をわざわざ用意することになります。抜いた株はまとめて畑の外へ出し、支柱や誘引ひもも洗ってから片づけてください。


よくある質問
Q. 疫病は暑い時期の病気ではないのですか?
違います。菌の発育適温は15〜20℃で、低温多湿の条件で多発します。梅雨期と秋雨期がもっとも注意が要る時期で、真夏の高温期はむしろ落ち着きます。
Q. 白いかびが見えないのですが疫病ですか?
白いかびは多湿時に病斑の表面に生じるものです。乾燥すると茶褐色になり破れやすくなると資料にあります。かびが見えなくても、水浸状から広がった暗褐色の大型病斑なら疑ってください。
Q. ジャガイモが近くにあると危ないのですか?
夏秋栽培では、周辺のジャガイモほ場が発生源となってトマトに伝染する場合があるとされています。同じナス科で同じ病原菌が侵します。ジャガイモ側の発生も確認してください。
Q. わき芽かきをやめたほうがいいですか?
やめる必要はありません。摘芽痕から発病することがあるため、晴れて乾いた日に行い、切り口が早く乾く条件を選んでください。雨の日や雨の前日は避けます。
切り口が潰れると乾きにくくなります。刃がよく合う小型のものを選び、株ごとに刃を拭けるようにしておくと安心です。
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まとめ
- 葉は灰緑色の水浸状→暗褐色の大型病斑。 多湿時に白いかび
- 茎は摘芽痕から。とりまかれると上部が萎凋枯死する
- 果実は未熟果が侵されやすい
- 菌の発育適温15〜20℃。低温多湿で多発。 梅雨と秋雨が要注意
- 被害残渣が土中で越年して翌年の伝染源になる
- 周辺のジャガイモが発生源になることがある
- 予防は雨よけ・マルチ・晴れた日のわき芽かき・窒素控えめ
葉を濡らさない。傷を乾いた日につくる。 この2つで、かなり防げます。
参考