スーパーの小ねぎとは、切ったときの感触が違う。包丁を入れると、葉の内側がとろりと糸を引く。
九条ねぎです。京都で千年以上作られてきた葉ねぎで、この「ぬめり」が持ち味になっています。
この記事では、京都市の資料をもとに、2つの系統の違いと、家庭菜園で何度も刈り取る育て方をまとめます。
千年以上の歴史
京都市の資料によれば、和銅4年(711年)に稲荷神社建立時、伏見区深草で栽培が始まったとされています。
平安朝前期承和年間(834~848)にすでに九条で栽培されていたという記録があります
1200年近く作られ続けてきた野菜です。現在も、市内産野菜の中で栽培面積の多い品目の一つとされています。
長く残ってきた理由は、味だけではありません。暑さにも寒さにもある程度耐え、刈り取っても再生する。家庭の畑で作りやすい性質が、そのまま千年続く条件になりました。

2つの系統
同じ九条ねぎでも、性質の違う2系統があります。
| 系統 | 特徴 |
|---|---|
| 細ねぎ(浅黄種) | 葉は細長く、葉色は淡緑色。根から葉の分岐点までが短い |
| 太ねぎ(黒種) | 1m前後にまで伸長。葉色は濃緑で茎が太く、根から葉の分岐点までが長くて耐寒性が強い |
細ねぎは薬味向き、太ねぎは鍋や煮物向きと考えると選びやすくなります。
種袋には「九条細」「九条太」と書き分けられていることが多く、買うときに見分けられます。どちらか迷ったら、使う量と料理の種類から決めてください。
葉ねぎの系統を選んでください。根深ねぎ用の品種とは育て方が変わります。
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家庭菜園で扱いやすいのは細ねぎ系です。背が低く、分けつして株が増えるため、刈り取りながら長く使えます。
太ねぎは2年がかり
京都市の資料は、太ねぎの栽培をこう説明しています。
秋に定植した苗を翌年の夏に一旦掘上げ、天日干しした後再度定植するため播種から収穫に至るまで2年にまたがっている
掘り上げて干し、また植える。 手間のかかる作り方です。家庭菜園で再現するのは難しいので、まずは細ねぎ系から始めてください。
夏に干す工程には意味があります。高温と乾燥で株を一度休ませることで、病気が断ち切られ、植え直したあとの生育がそろうとされています。産地が長年かけて磨いてきた技術です。
ぬめりと甘み
九条ねぎの特徴は、葉の内部にぬめりがあることです。そして、この性質には季節が関わります。
寒さが厳しくなり、霜が何度か降りると、ぬめりが増えて甘みが強くなります。
| 時期 | 味 |
|---|---|
| 春〜秋 | 香りが立つ。薬味向き |
| 冬(霜後) | ぬめりが増え、甘みが強くなる |
冬が旬です。 鍋物に九条ねぎが使われるのは、味がいちばん乗る時期だからです。
家庭菜園なら、わざと冬まで置いておくという選択ができます。
関東以西なら、特別な防寒をしなくても冬を越します。雪に埋もれても、春には下から新しい葉が出てきます。寒い時期に葉が倒れていても、枯れたと判断して抜かないでください。

育て方
種まきと植え付け
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 種まき | 春(3〜4月)または秋(9月) |
| 発芽まで | 10日前後 |
| 定植 | 草丈20〜30cmになったら |
| 株間 | 5〜10cm(数本ずつまとめて植える) |
| 深さ | 浅植え。白い部分を深く埋めない |
葉ねぎは、深く植えません。 白い部分を長くする根深ねぎとは逆の考え方です。
根深ねぎは生育に合わせて何度も土寄せし、白い部分を伸ばします。葉ねぎはその作業がないぶん、管理が簡単です。畝を高くする必要もありません。
刈り取って再生させる育て方なので、切れ味のよいハサミがあると株を傷めません。水洗いできるものが扱いやすくなります。
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プランターの場合
- 深さ20cm以上のプランター
- 数本ずつ束ねて植えると分けつしやすい
- 日なたに置く
ネギ類全般の育て方はネギをプランターで育てる方法にまとめています。
水と肥料
乾燥には比較的強い作物です。土の表面が乾いたら与える程度で足ります。
刈り取って再生させるなら、肥料は切らさないでください。 刈るたびに養分を使うため、収穫後に追肥すると次の伸びが違います。
追肥は、株元を避けて畝の肩に置きます。直接かけると根が傷みます。液体肥料を使うなら、刈り取った当日に与えるのがいちばん効きます。
刈り取って何度も穫る
九条ねぎの利点は、ここにあります。
- 草丈30〜40cmになったら収穫
- 株元3〜5cmを残して刈り取る
- すぐに追肥と水やり
- 2〜3週間で再び伸びる
- これを繰り返す
抜かずに刈る。 根と株元を残しておけば、同じ株から何度も穫れます。
年に3〜4回、条件がよければそれ以上収穫できます。薬味として少しずつ使う家庭菜園には、この性質が向いています。
刈る高さを間違えないでください。地際ぎりぎりで切ると、再生の起点になる部分まで落としてしまいます。3cmは残す、と決めておくほうが失敗しません。
分けつで株が増える
植えた1本が、育つうちに根元で分かれて数本になります。 これが分けつです。
株が混み合ってきたら、掘り上げて分けて植え直すと、また勢いが戻ります。秋がその作業の適期です。
このとき、傷んだ葉と古い根を落としてから植えると立ち上がりが早くなります。


気をつけること
| 注意 | 内容 |
|---|---|
| 連作 | ヒガンバナ科の連作を避ける |
| 過湿 | 水はけが悪いと根が傷む |
| とう立ち | 春にネギ坊主が出たら摘み取る |
| さび病 | 葉にオレンジ色の斑点。密植と多湿で出る |
ネギ坊主が立つと、葉が固くなります。 見つけたら早めに摘んでください。株を更新する時期の合図でもあります。
さび病は、株が混み合って風が通らないときに出やすくなります。刈り取りを兼ねて株を整理すると、発生そのものが減ります。症状が出た葉は畑の外へ持ち出してください。
連作の考え方は連作障害を避ける畝のローテーションを参照してください。
使い方
- 刻んで薬味に(香りが立つ)
- 鍋物に(冬のぬめりと甘みを生かす)
- ぬた、酢味噌和え
- 青い部分も捨てない(葉ねぎは全体が食用)
根深ねぎと違い、緑の葉まで食べられます。 刈り取ったら、根元から葉先まで使い切ってください。
使い切れない分は、刻んで冷凍しておけます。生のまま密閉袋に入れて凍らせ、使うときに必要な量だけ取り出せば、香りもぬめりもある程度残ります。
薬味として使える他の野菜は三つ葉のプランター栽培やみょうがのプランター栽培もあわせて参考になります。
よくある質問
Q. 細ねぎと太ねぎ、どちらを育てればいいですか?
家庭菜園なら細ねぎ(浅黄種)が扱いやすくなります。葉が細長く背が低く、分けつして株が増えるため刈り取りながら長く使えます。太ねぎ(黒種)は播種から収穫まで2年にまたがる作り方で、手間がかかります。
Q. ぬめりはいつ出ますか?
寒さが厳しくなり、霜が何度か降りる頃に増えます。同時に甘みも強くなるため、冬が旬です。家庭菜園なら、わざと冬まで置いておくという選択ができます。
Q. 何回収穫できますか?
株元3〜5cmを残して刈り取り、追肥すれば2〜3週間で再び伸びます。年に3〜4回、条件がよければそれ以上収穫できます。抜かずに刈るのが要点です。
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Q. 深く植えたほうがいいですか?
葉ねぎなので浅植えにします。白い部分を長くする根深ねぎとは逆で、土寄せして軟白する必要はありません。
まとめ
- 和銅4年(711年)にさかのぼる京都の伝統野菜
- 細ねぎ(浅黄種)と太ねぎ(黒種)の2系統。家庭菜園は細ねぎ系が扱いやすい
- 太ねぎは掘り上げて干し、植え直す2年がかりの作り方
- 葉の内部にぬめり。 霜が降りるとぬめりと甘みが増す
- 浅植え。 根深ねぎのように深く埋めない
- 株元3〜5cmを残して刈れば、2〜3週間で再生。年3〜4回
- 分けつして株が増える。 混んできたら秋に分けて植え直す
抜かずに刈る。 これを覚えるだけで、一度植えれば何年も使えます。
参考