和室に通されて、どこに座るか一瞬迷う。 勧められた席がいちばん奥だった、または入口のそばだった。そのどちらが「上」なのか。
判断の基準は、床の間の有無です。 床の間があればその前、なければ入口から遠いほう。原則はこの2つで足ります。
この記事では、日本マナー・プロトコール協会の解説をもとに、なぜそうなるのかと、迷いやすい場面での考え方をまとめます。
原則は2つだけ
同協会は、席次の原則をこう説明しています。
基本的には、その座の中心や、出入口から遠いところが上座、または上席となる
そのうえで、和室については床の間を基準に置きます。
床の間は、家の中で最も”格”の高い場所であり、その前が一番上座になる
| 条件 | 上座 |
|---|---|
| 床の間がある | 床の間の前 |
| 床の間がない | 出入口から遠いところ |
床の間があれば、入口からの距離より床の間が優先します。 これが和室の特徴です。
洋室のように入口との距離だけで決める部屋とは、ここが違います。
席次の意味
同協会は、席次に敬意とおもてなしの意味が込められているとしています。
出入口から遠い席が上になるのは、人の出入りに気を使わずに落ち着いて過ごせる場所だからです。逆に下座は、お茶を運んだり戸を開け閉めしたりする役回りの席ということになります。
上下関係を示すためというより、もてなしの配置だと考えると、迷ったときの判断がつきやすくなります。
自分が招く側に回ったときも、同じ基準で考えれば決まります。客に落ち着いて過ごしてほしい席はどこか、自分が立ったり座ったりしても邪魔にならない席はどこか。その答えが、そのまま上座と下座の割り振りになります。
逆に、招かれた側が自分から上座に向かうことはしません。勧められるまでは下座側で待つのが、迷ったときの安全な振る舞いです。
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床の間が基準になる理由
床の間は、掛軸や花を飾るために一段高くつくられた空間です。建物のなかで、装飾のために用意された唯一の場所といっていい部分でもあります。
最も格の高い場所の前に、最も敬うべき人が座る。 席次の考え方は、この一点に集約されます。
背にするか、向き合うか、という点も押さえておくと理解が早くなります。上座の人は床の間を背にして座ります。自分で床の間を眺めるのではなく、その前に座ることが敬意を受ける形になる、という考え方です。来客に掛軸を見てもらうために向かい合わせにする、という発想ではありません。
床の間そのものの成り立ちや各部の名前は和室の各部名称を図解で解説に、現代の使い方は床の間の活用アイデアにまとめています。
床脇はどう扱うか
床の間の隣には、違い棚などを備えた床脇があることがあります。
床の間の前が最上位、次が床脇の前という順で考えます。並び順は、床の間からの距離で決まると覚えてください。
床脇のない床の間だけの和室では、床の間の正面が上座、そこから左右に順に下がっていく形になります。四人で囲む卓なら、床の間に近い二席が上位の二人、入口に近い二席が下位の二人です。
和室は左上位、洋室は右上位
ここが混同されやすい点です。同協会の解説によれば、役職や年齢で序列が決まり、同条件では洋室では右側が上席、和室では左側が上座となります。
| 上位 | |
|---|---|
| 和室 | 左 |
| 洋室 | 右 |
床の間の前についても、中央が最上座で、左上位の原則に従って左側が次点とされています。
「向かって」ではなく、座っている人から見た左右です。間違えやすいので、床の間を背にして座ったときにどちら側かで考えてください。

迷いやすい場面
床の間も入口も同じ側にあるとき
床の間を優先します。 床の間が入口の近くにあっても、その前が上座です。
ただし、そこに座ると出入りのたびに気を使う配置になることもあります。実際の案内では、客の居心地を優先して別の席を勧めてもかまいません。 形式を押し通すより、落ち着いて過ごせるほうが本来の目的に適います。
眺めの良い席があるとき
同協会は例外にも触れています。
“眺めが良い席”を上席とする場合がある
庭に面した席、景色の見える席。 こうした条件があるときは、そちらを上座として案内することがあります。料亭や旅館で席を勧められたとき、床の間と違う側だったとしても不自然ではありません。
案内されたら従う
最終的には、案内に従うのがいちばん角が立ちません。 「こちらへどうぞ」と示された席が原則と違っていても、その場の主が決めたことです。
和室で客を迎える準備は客間としての和室の整え方にまとめました。
座布団と立ち居振る舞い
席次が決まったら、座り方にも作法があります。
| 場面 | 作法 |
|---|---|
| 入室時 | 座布団の手前に座り、挨拶をしてから上がる |
| 座布団 | 勧められてから使う |
| 立つとき | 座布団を踏まない。 下座側へ降りる |
| ふすま | 座って開け閉めする |
座布団を踏んで歩かないのは、覚えておくと差が出る所作です。座布団の向きや裏表の見分け方は座布団の選び方と向きにまとめています。
荷物の置き場所も見られています。かばんは自分の座った座布団の脇、下座側の畳に置くのが基本です。床の間に立てかけたり、床の間の畳に置いたりするのは避けてください。飾るための場所であって、物を置く場所ではありません。
茶托は木製と漆塗りで印象が変わります。手持ちの湯のみの底径に合うサイズかを確かめてから選んでください。
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畳の縁を踏まないという作法も同じ系統のものです。もとは縁を傷めないための実用から来たとされ、今も和室の歩き方として残っています。
縁は畳のなかでいちばん傷みやすい部分で、ほつれると張り替えになります。実用から出た所作だと分かっていれば、無理なく身につきます。


菓子が出される席では、懐紙があると所作が決まります。 もとは懐に入れて持ち歩いた和紙で、茶席では菓子を受ける皿の代わりに使います。折り山になった「わさ」を手前にして置き、使ったら折りたたんで持ち帰るのが作法です。
寸法の違いや日常での使い道は懐紙の使い方で解説しています。
洋室・その他の場合
同じ考え方は、ほかの部屋にも応用できます。
- 応接室|ドアから遠い奥の席が上席。長椅子は一人掛けより格上
- 会議室|ドアから遠い側が訪問客の上座
- カウンター席|出入口から遠いほうが上席
どの場面でも、「出入口から遠い」が共通の軸になっています。和室だけが、そこに床の間という基準を足している、という理解で足ります。
乗り物にも同じ考え方があり、タクシーなら運転席の後ろが上座とされます。これも出入口からの距離と、安全性の両方から決まったものです。覚える項目を増やすより、軸をひとつ持っておくほうが応用がききます。
よくある質問
Q. 床の間がない和室では、どこが上座ですか?
出入口から遠いところが上座になります。床の間がある場合はその前が最優先ですが、ない場合は洋室と同じく入口からの距離で判断してください。
Q. 和室と洋室で左右が逆になるのはなぜですか?
日本マナー・プロトコール協会の解説では、同条件のとき洋室は右側が上席、和室は左側が上座とされています。和室には左上位の原則があり、床の間の前も中央が最上座、次が左側となります。
Q. 案内された席が上座の原則と違いました。
案内に従ってください。庭が見えるなど眺めの良い席を上席とする場合もありますし、その場の主の判断が優先します。原則は目安であって、もてなしの意図のほうが上位にあります。
Q. 座布団はいつ使っていいですか?
勧められてからです。入室したら座布団の手前に座って挨拶し、その後に上がります。立つときも座布団を踏まないよう、下座側へ降りてください。
まとめ
- 原則は「床の間の前」か「出入口から遠いところ」の2つ
- 床の間は家の中で最も格の高い場所。その前が最上座
- 和室は左上位、洋室は右上位
- 床の間の前は中央が最上座、次が左
- 眺めの良い席を上席とする例外もある
- 座布団は勧められてから。踏まずに下座側から降りる
迷ったら、入口から遠いほうを勧める。 これで大きく外すことはありません。
参考