ペットと和室で暮らすときの悩みは、爪とぎによる傷・粗相によるにおい・抜け毛の絡まりの3つにほぼ集約されます。
畳はい草を織った天然素材なので、フローリングのように拭いて終わりにはなりません。ただし、材質の性質を理解して先に手を打っておけば、張り替えずに何年も付き合えます。
この記事では、犬や猫と和室で暮らすための具体的な対策を、被害が起きる前の予防と、起きてしまった後の対処に分けて解説します。畳全般の手入れは和室の掃除方法にまとめています。
畳がペットに弱い理由を知る
対策を選ぶ前に、なぜ畳が傷むのかを押さえておきます。
表面が織物である
畳表はい草を横糸として織った布のような構造です。爪が引っかかると糸が引き出され、ささくれになります。一度ほつれると、そこから広がっていきます。
フローリングなら爪の跡が浅い傷で済みますが、畳は繊維そのものが切れるため、部分補修が効きません。
水分を吸い込む
い草は内部が空洞で、水分をよく吸います。これが調湿性という長所である一方、粗相のときには短所になります。
尿は表面で止まらず、畳表を通り抜けて畳床まで染み込みます。表面を拭いただけではにおいが残るのはこのためです。
隙間に毛が入り込む
い草の織り目には細かな隙間があり、抜け毛が奥に入り込みます。掃除機を目に逆らってかけると、毛を奥へ押し込んでしまいます。

対策1|傷を防ぐ敷物の選び方
最も効果が高いのは、そもそも爪を畳に触れさせないことです。
畳の上に敷く保護シートは、爪が引っかかりにくい織り目のものを選ぶと傷が付きにくくなります。防水加工の有無も確認してください。
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全面を覆うか、部分的に覆うか
ペットが長く過ごす場所だけを覆う方法と、部屋全体を覆う方法があります。
部分敷きが向くのは、寝床や食事場所が決まっている場合です。畳の見た目と調湿性を残せます。
全面敷きが向くのは、部屋中を走り回る犬や、複数の猫がいる場合です。畳は完全に保護されますが、和室らしさは失われます。全面を覆う場合の注意点は和室にカーペットを敷く方法で詳しく解説しています。
選ぶべき敷物の条件
ペットがいる部屋の敷物には、通常のラグとは違う条件が必要です。
- 洗える:粗相と抜け毛のため、丸洗いできることが必須
- タイル式:汚れた部分だけ交換できる
- ループパイルを避ける:輪になった糸に爪が引っかかる。カットパイルを選ぶ
- 裏面が滑り止め加工:走ったときにずれない
- 撥水加工:粗相が下まで届かない
タイルカーペットはこれらの条件を満たしやすく、ペットのいる和室に最も向いています。1枚数百円から入手でき、汚れたら該当箇所だけ買い替えられます。
敷きっぱなしにしない
敷物で畳を覆うと通気が悪くなり、湿気がこもります。月に1回はめくって畳を乾かしてください。
特に粗相があった場所は、乾いたように見えても畳床に水分が残っていることがあります。ラグの選び方全般は畳の上に敷くラグの選び方も参考になります。
対策2|爪とぎを別の場所へ誘導する
猫の場合、爪とぎは本能なのでやめさせることはできません。別の場所へ誘導するのが唯一の解決策です。
爪とぎ器を畳の近くに置く
猫が畳で研いでいる場所のすぐ横に爪とぎ器を置いてください。離れた場所に置いても使いません。
猫は「そこで研ぎたい」という場所の感覚を持っています。場所を動かすのではなく、同じ場所により魅力的な選択肢を用意します。
素材を合わせる
畳で研ぐ猫は、麻縄タイプの爪とぎ器を好む傾向があります。い草と麻は繊維の感触が近いためです。
段ボール製で研がない猫でも、麻縄なら使うことがあります。数種類試して、好みを見つけてください。
立てる向きを合わせる
床で研ぐ猫には水平置きタイプ、壁で研ぐ猫には垂直タイプを選びます。畳で研いでいるなら水平置きです。
一時的に物理的に防ぐ
誘導が定着するまでの間、研いでいる場所にツルツルした素材(プラスチックの下敷きなど)を置くと、感触が変わって研がなくなります。
爪切りを定期的に行うことも有効です。2〜3週間に1回、先端の鋭い部分だけを切ってください。

対策3|粗相のにおいを残さない手順
畳の粗相は、対処の速さと手順で結果が大きく変わります。
手順1|すぐに水分を吸い取る
こすらないでください。こすると繊維の奥へ押し込みます。
乾いたタオルや新聞紙を当て、上から体重をかけて押さえます。タオルを替えながら、水分が出なくなるまで繰り返してください。
手順2|ぬるま湯で薄める
尿は濃度が高いほどにおいます。ぬるま湯を少量かけ、再びタオルで吸い取ります。これを2〜3回繰り返して濃度を下げます。
大量の水を使うと畳床まで濡らしてしまうので、少量ずつ行ってください。
手順3|クエン酸水で中和する
猫や犬の尿はアルカリ性です。クエン酸水(水200mlにクエン酸小さじ1)を吹きかけると中和され、においが軽減します。
吹きかけたら、また乾いたタオルで押さえて水分を取ります。
手順4|しっかり乾かす
ここが最も重要で、最も省略されやすい工程です。水分が残るとカビが生えます。
窓を開けて風を通し、扇風機やドライヤー(冷風)を当てて完全に乾かしてください。畳の下まで濡れた場合は、畳を持ち上げて裏側も乾かします。
使ってはいけないもの
- アンモニア系の洗剤:尿と同じにおい成分のため、同じ場所を繰り返し使うようになります
- 塩素系漂白剤:畳が変色します
- 大量の水:畳床まで濡れ、カビと畳の反りにつながります

対策4|抜け毛を効率よく取る
畳の織り目に入った毛は、掃除機だけでは取り切れません。
掃除機は必ず目に沿ってかける
畳の目に逆らうと、毛を奥へ押し込むうえ、い草を毛羽立たせます。目に沿ってゆっくり動かしてください。
ゴム手袋でこする
畳が乾いた状態で、ゴム手袋をはめた手で軽くこすります。静電気と摩擦で毛が集まってきます。掃除機より確実に取れます。
粘着ローラーは弱粘着を選ぶ
強粘着のものはい草の表面を毛羽立たせます。カーペット用ではなく、衣類用の弱粘着タイプを使ってください。
部屋の湿度を保つ
乾燥すると静電気で毛が繊維に貼り付きます。冬場は加湿器で湿度40〜60%を保つと、掃除が格段に楽になります。
対策5|においをためない部屋づくり
ペットのにおいは、畳だけでなく部屋全体の要素から出ます。
換気の習慣:1日2回、5分ずつ窓を開けて空気を入れ替えます。和室は襖を閉め切りがちなので意識してください。
ふすま・障子への付着:紙は においを吸います。年1回の張り替えでリセットできます。ふすまの扱いは和室のふすまの種類と選び方にまとめています。
空気清浄機の設置:脱臭フィルター付きのものを、ペットの寝床の近くに置きます。
畳の陰干し:年1〜2回、畳を上げて風を通すと、蓄積したにおいと湿気が抜けます。

よくある質問
Q. 猫が畳で爪とぎをやめてくれません。どうすればいいですか?
やめさせるのではなく、研いでいる場所のすぐ横に麻縄の爪とぎ器を置いて誘導してください。離れた場所に置いても使いません。定着するまでの間は、研いでいる場所にツルツルした素材を置いて感触を変えると効果があります。
Q. 粗相のにおいが取れません。畳を張り替えるしかないですか?
表面を拭いただけなら、畳床まで染みている可能性があります。クエン酸水での中和と完全乾燥を試してください。それでも残る場合、畳床の交換が必要ですが、その1枚だけの交換で済むことが多いです。まず畳店に相談してください。
Q. ペットがいる和室に置き畳を使うのはどうですか?
有効な方法です。汚れた1枚だけを交換できるため、部屋全体を張り替える必要がありません。素材は水に強い樹脂製を選んでください。い草は粗相に弱く、ペットのいる環境には向きません。
Q. 犬が畳を掘るのですが、直せますか?
掘る行動は不安やエネルギーの発散が原因のことが多く、環境の見直しが必要です。畳の保護としては、掘る場所にタイルカーペットを敷くのが即効性があります。すでにできた毛羽立ちは、ハサミで飛び出た繊維を根元から切ると目立たなくなります。
Q. 和室でペットを飼うのは、そもそも避けたほうがいいですか?
避ける必要はありません。畳は爪の負担が少なく、フローリングのように滑らないため、関節の弱い犬や高齢のペットにはむしろ適しています。保護と手入れの手順さえ決めておけば、快適に共存できます。
まとめ
ペットと和室で暮らすための対策を整理します。
先に手を打っておくこと
- ペットが過ごす場所に洗えるタイルカーペットを敷く
- 猫には爪とぎ器を、研いでいる場所の横に置く
- 爪を2〜3週間に1回切る
- 月1回は敷物をめくって畳を乾かす
粗相したときの4手順
- こすらず押さえて水分を吸う
- ぬるま湯を少量かけて薄める
- クエン酸水で中和する
- 風を通して完全に乾かす
日常の手入れ
- 掃除機は必ず畳の目に沿って
- 抜け毛はゴム手袋でこすって集める
- 1日2回の換気と、湿度40〜60%の維持
畳は爪が引っかかりやすい一方で、滑らず足腰にやさしいという、ペットにとっての利点もあります。まずは寝床まわりにタイルカーペットを1枚敷くところから始めてみてください。