来客に座布団を出すとき、「どちらが表で、どちらが前か」 で手が止まったことはないでしょうか。
見た目はほとんど同じでも、座布団には表裏と前後があります。 しかもこれは言い伝えではなく、礼法の書籍に明記されている内容です。
この記事では、国立国会図書館のレファレンス協同データベースに収録された回答(典拠つき)をもとに、見分け方・出し方・サイズの選び方を整理します。来客時の和室全体の整え方は客間としての和室の整え方にまとめています。
座布団の表裏と前後
| 見るところ | 判断 |
|---|---|
| 表 | 中央に「しめ糸の房」がある面 |
| 両面に房がある場合 | 縫い代がかぶさって見える方が表 |
| 前 | 縫い目のない辺(輪になっている側) |
| カバー付き | ファスナーのある方が後ろ |
『冠婚葬祭マナー事典』(小学館)には、「座布団を敷くときは、表側を上にする。表側は中央にしめ糸のふさがある」と記されています。両面に房がある場合は「縫い代がかぶさって見える方が表」、そして「縫い目のない方が前」、「カバーをした時にはファスナーのある方が後ろ」とされています。
『見てまなぶ日本人のふるまい:小笠原流礼法入門』(淡交社)も、「座布団の四辺のうち、縫い目のない辺(輪)が膝前にくるようにして置く」とし、「中央に中綿を留める糸(房)がある面を表と考え、こちらを上に向けて置く」と説明しています。
なぜ「輪」が前なのか
座布団は、一枚の布を二つ折りにして三方を縫い合わせて作られます。折り返した一辺だけが縫い目のない「輪」になります。
縫い目のない側を膝の前に向けると、座ったときに縫い目が体に当たりません。 見分け方としても、四辺を指でたどれば分かります。

サイズの種類と使い分け
座布団には規格サイズがあり、JIS規格では木綿判をS、銘仙判をM、八端判をLとしています。
| 名称 | 寸法 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 茶席判 | 45×45cm前後 | 板の間の茶室で使われていた |
| 木綿判(S) | 51×55cm | 茶の間で使うサイズ |
| 銘仙判(M) | 55×59cm | 家族が日常使う。現代で最も一般的 |
| 八端判(L) | 59×63cm | 大切なお客様を迎えるための座布団 |
| 緞子判 | 63×68cm | 祝寿座布団、法要で僧侶が使う |
| 大判 | 68×72cm | 法要で僧侶が使う |
家庭用に買うなら銘仙判、来客用をそろえるなら八端判というのが基本の考え方です。
同じ部屋で大きさが混ざると、並べたときに不揃いに見えます。 買い足すときは、手元にある座布団の寸法を測ってから選んでください。
座椅子を使う選択
正座やあぐらが負担になる場合は、座布団ではなく座椅子という選択もあります。高さのあるものを選ぶと立ち座りが楽になります。種類ごとの違いは和室で使う椅子の選び方にまとめています。
中身と厚みで座り心地が変わる
同じ寸法でも、中身と厚みで座り心地はかなり変わります。
| 中身 | 一般的な特徴 |
|---|---|
| 綿わた | しっかりした座り心地。へたっても打ち直して再生できる |
| ポリエステルわた | 軽い。洗えるものがある |
| ウレタン入り | 底つきしにくく、長時間座る用途に向く |
薄い座布団は、畳の上でも長く座ると疲れます。 来客が長居する場面や、法事のように座る時間が読めない場面では、厚みのあるものを選んでください。
中身が片寄ってきたら、両端を持って軽く振り、角を整えると形が戻ります。カバーをかけておけば、本体を洗う回数そのものを減らせます。
来客に出すときの手順
- 来客が来る前に、あらかじめ敷いておく
- 表を上にして、輪になった辺を客側(膝前)に向ける
- 座卓に対してまっすぐ、左右の間隔をそろえて置く
- 客には「どうぞお当てください」と声をかける
一般的なマナーとして、次の点も知られています。
- 座布団は勧められてから座る
- 座布団を踏まない(立ち上がるときも脇へ降りてから)
- 座ったまま座布団の位置を大きくずらさない
厳密に守らせるためのものではありません。 ただ、出す側が整えておくと、客は迷わず座れます。

法事で使うとき
法要で僧侶が使う座布団は、家庭用より大きなものが使われます。 緞子判(63×68cm)や大判(68×72cm)がこれにあたります。
向きの考え方は普段と同じで、表を上に、縫い目のない輪の辺を膝前に向けます。家にあるのが銘仙判だけの場合は、無理に代用せず、寺や葬祭業者に用意があるかを先に確認しておくと当日に慌てません。

畳を傷めない置き方としまい方
置きっぱなしにしない
同じ位置に置き続けると、畳に跡が残ります。 座布団自体は軽いので跡は浅く済みますが、上に座卓の脚が重なると話が別です。畳の跡の直し方は畳のへこみ・凹みを直す方法を参照してください。
日に当てすぎない
窓際に敷いたままにすると、座布団の生地も畳も日焼けします。 畳が変色する仕組みは畳の日焼け・変色にまとめています。
しまい方
- 湿気を抜いてからしまう。 使用後すぐに押入れへ入れない
- 重ねる枚数を減らし、下のものが潰れないようにする
- 押入れの下段より上段のほうが湿気は少ない
押入れの湿気対策は和室の湿気・カビ対策にまとめています。
和室に合う色と柄の選び方
| 選び方 | 考え方 |
|---|---|
| 畳と壁の中間の色 | 部屋になじみ、座布団だけが浮かない |
| 無地か細かい柄 | 大柄は枚数が増えるとうるさくなる |
| 来客用は落ち着いた色 | 八端判の紬や無地が合わせやすい |
| 枚数をそろえる | 同じ色・同じ寸法で4枚以上あると来客時に困らない |
迷ったら、畳の色より少し濃い色を選ぶと失敗しません。 薄すぎると汚れが目立ち、濃すぎると部屋が重くなります。
銘仙判は家庭用として最も流通しているサイズです。買い足すときは、手元の座布団の寸法を測ってから同じ規格を選んでください。
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カバーを使うという手
座布団カバーを使えば、本体を買い替えずに印象を変えられます。 来客用だけ改まった色にする、季節で掛け替える、といった使い方ができます。
洗えるのはカバーだけ、というのも利点です。本体を洗うと中わたが片寄って戻りにくくなるため、汚れる可能性がある場面ではカバーを付けておくほうが結果的に長持ちします。カバーを付けたときは、ファスナーが後ろになるよう向きを確認してください。
座布団カバーは、本体の寸法より少し大きめを選ぶと入れやすくなります。ファスナー付きなら、付け外しのたびに中わたを傷めません。
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よくある質問
Q. 座布団の表と裏はどう見分けますか?
中央にしめ糸の房がある面が表です。両面に房がある場合は、縫い代がかぶさって見える方が表になります。カバーをかけている場合は、ファスナーのある側が後ろです。
Q. 前後はどちらを客側に向けますか?
四辺のうち縫い目のない辺(輪になっている側)を、座る人の膝前に向けます。座布団は布を二つ折りにして三方を縫うため、折り返した一辺だけが縫い目のない輪になります。
Q. 来客用にはどのサイズを買えばいいですか?
八端判(59×63cm)が来客用として使われるサイズです。家族が日常使うなら銘仙判(55×59cm)が最も一般的で、JIS規格ではそれぞれLとMにあたります。
Q. 座布団は何枚そろえればいいですか?
来客の人数によりますが、同じ色・同じ寸法で4枚あると多くの場面に対応できます。買い足すときは、手元の座布団の寸法を測ってからにしてください。大きさが混ざると並べたときに不揃いに見えます。
まとめ
座布団の要点です。
向き
- 表=中央に糸の房がある面(両面にあれば縫い代がかぶさる方)
- 前=縫い目のない輪の辺を膝前に
- カバーはファスナーが後ろ
サイズ
- 日常使いは銘仙判(55×59cm)
- 来客用は八端判(59×63cm)
- JISでは木綿判=S、銘仙判=M、八端判=L
扱い方
- 来客前に敷いておき、輪を客側に
- 置きっぱなしにせず、湿気を抜いてからしまう
次に座布団を出すとき、四辺を指でたどってみてください。 縫い目のない辺が、客に向ける側です。
参考