家庭菜園では、野菜の食べてはいけない部分に触れる機会が、店で買うより増えます。
小さい未熟なじゃがいもをそのまま料理する。摘果したトマトを捨てずに使う。収穫したての豆を軽く火を通して食べる。どれも、店で買っていれば起きにくい状況です。
実際、家庭菜園や学校菜園でのじゃがいも食中毒は毎年報告されています。この記事では、どこに何が含まれ、どうすれば防げるかを数値とともに整理します。
じゃがいも|芽と緑の皮
家庭菜園で最も注意が必要な野菜です。
何が含まれるか
じゃがいもにはソラニンとチャコニンという天然毒素(グリコアルカロイド)が含まれます。植物が害虫や病原菌から身を守るために作る成分です。
含有量の差が非常に大きいのが特徴です。
| 部位 | 含有量(100gあたり) |
|---|---|
| 通常の可食部 | 平均7.5mg |
| 緑色になった部分 | 100mg以上 |
| 芽とその根元 | 高い |
| 未熟な小さいいも | 高いことがある |
緑化した部分は、通常の10倍以上の濃度になります。
どのくらいで症状が出るか
農林水産省の資料では、体重50kgの人を例に次のように示されています。
| 摂取量 | 影響 |
|---|---|
| 50mg | 症状が出る可能性がある |
| 150〜300mg | 死亡の可能性がある |
健康への懸念がないとされる量は、体重1kgあたり0.1mg以下です。
症状は、吐き気・嘔吐・下痢・腹痛・頭痛・めまいなど。食後数十分〜数時間で現れます。
実際に起きた事例
2015年、奈良県の小学校で、校内で栽培したじゃがいもを食べた51名中31名が吐き気と腹痛を発症しました。
残っていたじゃがいもからは、100gあたり19〜39mgのソラニン類が検出されています。通常の可食部(平均7.5mg)の3〜5倍です。
加熱しても消えない
これが最も重要な点です。
茹でてもソラニンとチャコニンは分解しません。 170度以上で分解が始まるという報告はありますが、通常の調理では減ることを期待できません。
「火を通したから大丈夫」は誤りです。 物理的に取り除くしかありません。
家庭菜園での防ぎ方
栽培中
- 土寄せを欠かさない(いもが地表に出て日光に当たると緑化する)
- 茎と葉が全体的に枯れて黄色くなってから収穫する
- 未熟な小さいいもは食べない
土寄せの手順はプランターでじゃがいも栽培にまとめています。
収穫後
- 暗くて涼しく、風通しのよい場所に保管する
- 光に長時間当てない(室内の照明でも緑化します)
調理時
- 芽は、まわりの部分も含めてえぐり取る
- 緑色の部分は皮を厚めにむく(まわりもしっかり)
- 皮をむくだけで25〜75%の毒素を除けるという海外の報告があります
- 緑化が広範囲なら、食べずに処分する

トマト|葉と茎
トマトの葉・茎・花にはトマチンというアルカロイドが含まれます。
部位ごとの含有量
| 部位 | 含有量(1kgあたり) |
|---|---|
| 花 | 1,100mg |
| 葉 | 975mg |
| 茎 | 896mg |
| 未熟果実(緑色の若い実) | 465mg |
| 熟しかけの青い実 | 48mg |
| 完熟果実 | 0.4mg |
完熟した実は、葉の2,000分の1以下です。
実は心配ない
トマチンの致死量は、完熟トマトに換算すると数トン分とされます。実を食べて中毒になることは、まず起こりません。
青いトマト(摘果したもの)も、通常の料理に使う量なら問題ありません。 ピクルスやフライにする食べ方は各国にあります。ただし未熟果実は完熟の1,000倍以上の濃度なので、大量に生で食べるのは避けてください。
葉と茎は食べない
わき芽かきや摘芯で出た葉・茎を食用にしないでください。 香りがトマトらしいため使いたくなりますが、含有量が桁違いです。
摘み取った枝の扱いは摘芯・芽かきの基本にまとめています。
豆類|生食と加熱不足
いんげん豆などの豆類には、レクチン(フィトヘマグルチニン)という成分が含まれます。生や加熱不足の状態で食べると、嘔吐や下痢を起こします。
2006年の白いんげん豆事件
テレビ番組で紹介された方法(白いんげん豆を2〜3分炒って粉にし、ごはんにかける)を試した視聴者に被害が出ました。
厚生労働省の調査では、全国で158名が発症し、うち30名が入院しています。
福岡市保健環境研究所の分析では、2〜3分の加熱ではレクチン活性が加熱前とほぼ同程度残存し、1時間茹でた豆では活性が認められなかったと報告されています。
正しい調理
厚生労働省は、通常の調理法なら問題ないとしています。
- 水に十分浸す
- 沸騰状態で、柔らかくなるまで十分に煮る
「少し硬いけど食べられる」は危険です。 中途半端な加熱がもっとも問題になります。
枝豆・スナップエンドウ・さやいんげんのように、さやごと食べる未熟な状態のものは、通常の茹で時間で問題ありません。乾燥させた豆を戻して使う場合に注意が必要です。

スイセンとニラ|最も危険な誤食
家庭菜園で起きる事故のなかで、最も重篤になりやすいのがこれです。
事例の件数
厚生労働省の統計では、有毒植物の誤食による食中毒が次のように報告されています。
| 年 | 件数 | 患者数 | 死者 |
|---|---|---|---|
| 令和5年 | 18件 | 33名 | — |
| 令和6年 | 14件 | 24名 | 2名 |
イヌサフラン・バイケイソウ・スイセンなどによるものです。
見分け方
スイセンの葉はニラによく似ています。
| ニラ | スイセン | |
|---|---|---|
| におい | 強いニラ臭 | 無臭 |
| 葉の色 | 濃い緑 | やや薄い |
| 葉の厚み | 薄い | 厚い |
| 根元 | — | 球根がある |
決め手はにおいです。 ちぎって嗅ぐと、ニラは強く香ります。
ただし、両方が混ざって生えていると判別が難しくなります。 スイセンの葉にニラのにおいが移るためです。
症状
摂食後約30分という短い潜伏期間ののち、嘔吐・下痢・頭痛などが現れます。
家庭菜園での対策
ニラとスイセンを並べて植えないでください。
- 区画をはっきり分ける
- ネームプレートを付ける
- スイセンを植えた場所を記録しておく
- 少しでも疑わしければ収穫しない
スイセンは花が終わると葉だけが残り、球根で増えます。 数年経つと「どこに植えたか」が曖昧になり、そこで事故が起きます。
区画の記録は菜園ノートの書き方にまとめています。
そのほか注意する部位
| 野菜 | 部位 | 注意点 |
|---|---|---|
| モロヘイヤ | 種子・さや・収穫終期の茎 | 強い毒性。若い葉のみ食べる |
| ルバーブ | 葉 | シュウ酸が多い。茎のみ食べる |
| 銀杏 | 実 | 食べすぎで中毒。子どもは特に少量に |
| うめ | 未熟な実・種 | 生食しない。加工して食べる |
| アジサイ | 葉 | 飾りとして料理に添えない |
| じゃがいも | 葉・茎・花 | 食べない |
| なす・ピーマン | 葉・茎 | 食べない |
モロヘイヤは家庭菜園で育てる人が増えている野菜です。 若い葉と茎は問題ありませんが、種子には強い毒性があります。 花が咲いて実(さや)がついたら、その部分は食べないでください。育て方はモロヘイヤのプランター栽培にまとめています。


判断に迷ったときの原則
5つだけ覚えておけば、ほとんどの事故は防げます。
- 緑色になったじゃがいもは食べない(皮をむいても広範囲なら処分)
- 芽はまわりごとえぐり取る
- 豆は柔らかくなるまで十分に煮る
- 実以外の部位(葉・茎・花)は食べない
- 少しでも「これは何だったか」と迷ったら収穫しない
「もったいない」が事故の入口になります。 未熟な小さいいも、緑がかった皮、判別できない葉。捨てる判断のほうが安いと考えてください。
よくある質問
Q. じゃがいもは加熱すれば芽も食べられますか?
食べられません。ソラニンとチャコニンは茹でても分解せず、量は減りません。170度以上で分解が始まるという報告はありますが、通常の調理で減ることは期待できません。芽はまわりの部分も含めて物理的に取り除いてください。
Q. 緑色のじゃがいもは皮をむけば大丈夫ですか?
緑が薄く範囲が狭ければ、皮を厚めにむいて周囲もしっかり取り除けば食べられます。皮むきで25〜75%の毒素を除けるという海外の報告があります。ただし緑が広範囲、または中まで及んでいる場合は処分してください。
じゃがいもは光に当たると緑化します。通気性のある収納かごに入れ、暗く涼しい場所に置くだけで進行を抑えられます。
(PR)「野菜 収納 かご 通気」をAmazonで探す / 楽天で探す
Q. 摘果した青いトマトは食べられますか?
通常の料理に使う量なら問題ありません。ピクルスやフライにする食べ方があります。ただし未熟果実は完熟果実の1,000倍以上のトマチンを含むため、大量に生で食べるのは避けてください。
Q. 収穫したての豆を軽く茹でただけでは危険ですか?
乾燥豆を戻して使う場合は危険です。2〜3分の加熱ではレクチン活性がほとんど残ります。水に十分浸してから、沸騰状態で柔らかくなるまで煮てください。枝豆やさやいんげんなど、さやごと食べる未熟な豆は通常の茹で時間で問題ありません。
Q. ニラとスイセンはどう見分ければいいですか?
ちぎってにおいを嗅いでください。ニラは強く香り、スイセンは無臭です。スイセンの葉は色がやや薄く厚みがあり、根元に球根があります。ただし混植していると判別が難しいので、そもそも並べて植えないことが最大の対策です。
▼ 有機液体肥料で野菜をもっと元気に
土の力を引き出す、菌根菌のチカラ【生きてる肥料】![]()
まとめ
家庭菜園で注意する部位を整理します。
じゃがいも(最重要)
- 緑化した部分は通常の10倍以上(100gあたり100mg以上)
- 加熱しても分解しない
- 土寄せを欠かさず、茎葉が枯れてから収穫し、暗所で保管
- 芽はまわりごと、緑の部分は皮を厚めに
トマト
実は安全(完熟果実は葉の2,000分の1以下)。葉と茎は食べない。
豆類
乾燥豆は十分に浸してから、柔らかくなるまで煮る。 2〜3分の加熱では毒性が残ります。
スイセンとニラ
並べて植えない。 決め手はにおい(ニラは強く香り、スイセンは無臭)。
そのほか
モロヘイヤの種子、ルバーブの葉、うめの未熟な実。実以外の部位は基本的に食べないと決めておけば安全です。
家庭菜園の楽しさは「採れたてを食べられること」ですが、判断に迷ったら食べないという基準だけは持っておいてください。
参考